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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.603

疎開先の村人たちが繰り返した暴力と性的虐待! 差別と偏見まみれの“世界名作劇場”『異端の鳥』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

 

ベネチア映画祭で波紋を呼んだ『異端の鳥』。少年は髪の毛と肌の色が違うという理由から、村々で迫害される。

 子どもの頃、『母をたずねて三千里』(フジテレビ系)や『家なき子』(日本テレビ系)などのTVアニメをよく見ていた。幼い少年がさまざまな不幸に遭遇するも、たくましくサバイバルしていくロードムービースタイルの物語だった。2019年のベネチア映画祭でユニセフ大賞を受賞した映画『異端の鳥』(英題『The Painted Bird』)も、“世界名作劇場”を思わせる内容だ。戦火を逃れて田舎に疎開させられた少年が、愛する両親が待っている実家を目指して長い長い旅を続ける。だが、児童向けのTVアニメとは違い、戦時下における暴力と性描写がモノクロームの映像の中で克明に描かれている。

 東欧のどこか。ユダヤ系の少年(ペトル・コトラール)は、ホロコーストを心配する両親によって田舎へと疎開させられる。髪の毛や肌の色が違う少年は、田舎の子どもたちから徹底的にいじめられる。少年がペットとして可愛がっていた小動物も、田舎の子どもたちによって惨殺されてしまう。預かり先の老婆が唯一の頼りだったが、老婆はやり過ごすしかないと取り合わない。ある晩、その老婆はあっさりと死んでしまう。保護者を失った少年は父と母がいる故郷を目指し、旅に出ることになる。

 歩いて実家へと向かう少年は、ありとあらゆる差別と暴力に出くわす。少年が立ち寄る東欧の村々は直接的には戦場になっていないものの、戦争の影が色濃く漂っていた。鉄道を走る貨物車にはユダヤ人がぎゅうぎゅう詰めとなり、収容所へと運ばれている。貨物車から逃げ出したユダヤ人は、ナチス兵によって容赦なく射殺される。死んだユダヤ人の衣服や所持品は、村人たちによって瞬く間に持ち去られていく。そんな村々を、少年はたったひとりで渡り歩く。

 子どもだけでは食べていけないので、大人を頼るしかない。ある村では鳥飼いの男・レッフ(レフ・ディブリク)の世話になる。当時の村には娯楽らしいものはまるでない。暇を潰すものがあるとすれば、それは暴力とセックスくらいだった。退屈しのぎにレッフは捕まえた小鳥の羽にペンキを塗り、空へと放す。自由を得た小鳥は仲間の群れに戻ろうとするが、ペンキを塗られているため他の小鳥たちからは異物と見なされて、迫害される。地面に堕ちた小鳥はすでに息絶えていた。レッフはその様子を眺めて、楽しんでいる。原作小説のタイトルは「ペインティッド・バード」。少年の置かれている立場を象徴するエピソードとなっている。

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