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「オナニーは体に悪い」子どもの性欲をめぐる近代日本のトンデモ教育論と現代への余波

 

GettyImagesより

 近年、性教育本がブームとなっている。中には思春期以前の子どもに向けて生殖や性暴力に対する啓蒙を促す内容のものもあるが、「小さい子に性の話なんて……」という声は根強く存在する。では歴史的に、日本では思春期に入る前の子どもに向けた性教育はどうなされてきたのか? 近世以来の子どもの性に関する医者、教育者、知識人の語りの変遷を描いた一冊が、『子どもの性欲の近代 幼児期の性の芽生えと管理は、いかに語られてきたか』(松籟社)だ。同書の著者で、ジェンダー/セクシュアリティと教育研究を専門とする小泉友則氏に、過去の歴史から学ぶべき子どもと性をめぐる“大人の語り”の問題について訊いた。

小泉友則著『子どもの性欲の近代 幼児期の性の芽生えと管理は、いかに語られてきたか』(松籟社)

 

今につながる近代のとんちんかんな性教育論

――『子どもの性欲の近代』を読むと、「オナニーは心身に害悪」「性的早熟は熱帯で起こる」「子どもが発する『なぜ/どうやって生まれてきたの?』という誕生に関する質問は『性欲』と関連する問題行動」など、明治期以降に日本で欧米の受け売りでされてきた性教育は、ろくでもないものが多いなと感じました。こんなものなら受け入れないほうがよかったのでは、とすら思いましたが……。

小泉 明治期以降の研究者は、欧米の学術雑誌を読みあさって非常によく勉強しています。その過程で「子どもの性に着目せねば」と気づき、自分もやっているはずなのに手淫は健康に悪いと、時には死ぬかもしれないとか言ってしまう(笑)。「これを採り入れないと世界から取り残される」という危機感から、研究者は明治後期にはでっち上げであるだろう情報も含めて「日本にも欧米水準の知識がある」と見せつけようとしていました。研究者の思考の過程を見ても、適当極まりない。手淫が本当に害毒なのかを自分たちで調査したところ、欧米の理論で言われていることとはまったく違った結果が得られた。にもかかわらず、「欧米が正しい」に戻ってしまう。仮説・検証という科学的な手続きをあまり重視していないようなのです。

 ただ、このときから言われていることが、今も残っています。今でも性教育や育児の雑誌ではマスターベーションの話、子どもが勃起したらどうするか、といったことに関するレクチャーが必ずあります。「月経が早い子は性的に早熟なんじゃないか」という俗説も残っているし、「どうして生まれたの?」と子どもに訊かれて多くの親が恥じらうのだって、『クレヨンしんちゃん』的な「5~6歳になれば性に関心を持つ」という観念があるからですよね。

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