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石橋静河が演じる“里保”はただの報われない女ではなかった【この恋あたためますか】

この恋あたためますか』公式サイトより

 凛とした女性像のなんと似合うことだろう。

 12月15日放送の『この恋あたためますか』(TBS系)の第9話は、石橋静河演じる北川里保の内面の美しさがいっそう際立つ放送回だった。

 第8話のラストで自ら浅羽(中村倫也)に別れを切り出し、本人も気づいていない樹木(森七菜)への恋心を後押しした北川。気丈に振る舞っていたが、友人である新谷(仲野太賀)の前でついに泣き崩れてしまった姿に胸を打たれた視聴者は多かった。北川といえば、スイーツ開発でライバルになるのかと思いきや、誰よりも優しい仕事仲間となった樹木の先輩だ。恋人である浅羽にも気遣いを絶やさない裏でその関係に切なさを抱える役柄は、主人公より共感されることが多かっただけに、その後の“扱い”がどうなるのかハラハラしながら迎えた第9話だった。しかし、そんな心配は杞憂だった。

 <情けないこと言ってないで、最後までかっこいいとこ見せつけな>

 いよいよ本気になった浅羽に樹木を奪われるのではと気弱になる新谷に、北川がかけた一言だ。SNS上には「最後までかっこいいとこ見せつけた人がこちら!」「私の中で完全にりほさんが優勝してる」「新谷を励ます横顔の美しさが爆発してる」「みんなの背中押す北川さん、いい女すぎん?」と称賛の声があふれた。

 傷つきながらも、自分自身の失恋を誰にも当たることなく昇華して、何事もなかったかのように振る舞うばかりか、周りを励ましさえする北川は、どこまでもできた女性だ。過ぎたことに捉われず、先に進んでいく姿に視聴者にまで勇気を与えてくれたように思う。以前、「石橋静河は報われない女性役を演じるのがうまい」という趣旨の記事を書いたが、北川里保という女性は、報われずとも、ただ悲しむだけの女性ではなかったということだ。

 石橋静河は、こうした芯のある女性役にもよく抜擢されている。例えば、29年ぶりのドラマ化で話題になった『東京ラブストーリー』(フジテレビ)の赤名リカ役や、映画『いちごの唄』の天野千日役などがそうだ。特に、赤名リカといえば、1991年版ドラマのイメージから自由奔放な女性の代名詞のように思われていることが多いが、石橋が演じるリカは少し印象違う。ただ明るいだけの女性ではなく、人並みに暗さも持ち合わせた中に、人としての“軸”を感じられる女性なのだ。もちろん物語自体が令和版にアップデートされ、より自立した女性として描かれている影響もあるが、それを体現するのがうまいのだ。

 その演技力には、思春期にアメリカやカナダでのダンス留学を経験し、さまざまな価値観を受け入れてきた石橋自身の経験も生かされているように思う。また、石橋は女優になる以前に、コンテンポラリーダンサーとしても活躍していた。役柄もセリフもなく、その身一つで舞台に立っていたときの存在感の放ち方は、役者としてのにじみ出るような表現に役立っているのかもしれない。それを思うと北川という自立した女性は、石橋にとってもこれ以上ない適役だった。

 北川についての恋愛模様は一通り出し尽くした感のある『恋あた』だが、最終回で北川はどのように立ち回るのだろうか。少し早いが、素敵な女性を演じきってくれた石橋に拍手を送りたい。

■番組情報
火曜ドラマ『この恋あたためますか』
TBS系/毎週火曜日22時~
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史 ほか
脚本:神森万里江、青塚美穂
演出:岡本伸吾、坪井敏雄、大内舞子
プロデュース:中井芳彦、黎 景怡
音楽:木村秀彬
主題歌:SEKAI NO OWARI 「silent」
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koiata_tbs/

早乙女りこ(ライター)

東京生まれ神奈川育ちのフリーライター。映画・ドラマはジャンル問わず幅広く鑑賞しており、物語の展開を予想したり、役者の演技を複数作品で見比べたりすることが趣味。

さおとめりこ

最終更新:2020/12/21 14:00
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