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産業医と映画Pの配信作品批評「ネフリんはほりん」#4(後編)

『クイーンズ・ギャンビット』はネトフリが仕掛けてきたBtoC映像ビジネスの成功例

『クイーンズ・ギャンビット』はネトフリが仕掛けてきたBtoC映像ビジネスの成功例の画像1
主人公を演じたアニャ・テイラー=ジョイ。(写真/GettyImages)

 サブカル好き産業医の大室正志とB級映画プロデューサーである伊丹タンが、毎回ひと
つのVOD作品を選んで、それぞれの立場から根掘り葉掘り作品を掘り尽くす本連載。

 今回のテーマはたった28日間で世界6200万人世帯が視聴した記録的ヒット作品『クイーンズ・ギャンビット』。前編では本作のヒットの理由や演出の妙についての話だったが、今回は一体どんな話題になるのか!?

▷前編はこちらから!

なぜ作中で恋を成就させなかったのか?

――『クイーンズ・ギャンビット』にも一応恋愛要素があって、いい仲になりそうな3人の男性が登場するも、どの人とも結ばれることはなく……という展開でした。

大室 主人公のハーモンは天才であると同時に、軽度の自閉症スペクトラムともいえるキャラクター造形。年頃の女のコがほしがりそうなぬいぐるみをプレゼントされてもすぐに捨てるし、同級生とも話が合わない。そんな人間が恋愛ドラマみたいなロマンチックな恋を成就できるのかって話。

伊丹 リアリズムを踏襲すれば、確かに真っ当な恋はできるわけがないよね。

大室 そういうこと。そのへんの女性が強がって「恋愛なんてしなくていい」というフェミ的な話じゃなくて、「恋愛したら世界の色が変わる!」なんていう昔のフランスミュージカルみたいな気持ちになれない人だってきっといるわけで。

伊丹 それと、この題材とこの主人公で現代の女性像をグローバルに表現するなら、恋愛をせずとも人間の尊厳や人生の喜びは見つけ出せるというメッセージを伝えようという選択を監督・脚本のスコット・フランクがしたということ。ある定型の恋愛をするような脚本を書いたとしても、ハーモンというキャラになじまなかったはず。

――前編でもお話が出てきましたが、スコット・フランクとはどんな人なんでしょうか?

伊丹 この人はハリウッドでも尊敬されている本当にスゴいクリエイターだと思います。脚本家としての代表作のひとつに『LOGAN/ローガン』があって、X-MENシリーズでありながらアカデミー賞脚色賞にノミネートされるほどの深い人間ドラマを描ける人。この人だからこそ『クイーンズ・ギャンビット』がこれだけスゴいクオリティになった。

大室 年齢は60歳。もうかなりベテランの域だね。

伊丹 そうそう。Netflixのヒット作って新進気鋭のクリエイターが集結しているイメージがありそうだけど、実はスコット・フランクの例のように意外とクリエイター陣はベテランの巨匠が生み出している例が多い。

クリエイターから見た配信ドラマのメリットは、興行収入を気にしなくていい点で、Netflixがお金を出してくれれば、好きにクリエイティビティを追求できる。だから今、錚々たるクリエイターたちが絶対面白いと信じているけど、映画興行や既存のテレビドラマ的には実現できなかった題材で挑戦できる場になってるんだよ。

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