産業医と映画Pの配信作品批評「ネフリんはほりん」#4(後編)

『クイーンズ・ギャンビット』はネトフリが仕掛けてきたBtoC映像ビジネスの成功例

文=伊丹タン(いたみ・たん)

Netflixが育てたユーザのリテラシー

大室 その割にはNetflixヒット作は、ストーリー的にはベタなものが多いよね。『クイーンズ・ギャンビット』も展開としては王道な部分もあった。作品自体も83年に発表された小説が原作。同じくNetflixで大ヒットした『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(13~18年)もリメイクだ。

伊丹 普遍的なテーマや構造に対して、“どのクリエイターを掛け算するとみんなが見たい作品になるか”を、マーケティング情報をもとに既存の文脈を無視して作ったのがNetflixの始まりかなと思う。『ハウス・オブ・カード』だって、デヴィット・フィンチャーとケヴィン・スペイシーという、この組み合わせがデータ的に間違いないという製作陣を破格の条件で掛け合わせたことで、Netflixを象徴する作品になったわけだし。

大室 ベタな構造やテーマでも、洗練されたクリエイターが時代に合わせて設定をアップデートして今見てもらえる作品にするってことね。山崎豊子と松本清張が手を変え品を変えてたくさんの現代劇を作ったのと同じだ。

伊丹 そうだね。今『クイーンズ・ギャンビット』がこれだけ見られているのは、古いフォーマットに現代の技術や意匠を掛けて、“ルネサンス”した作品を提示し続けてきた成果。配信ドラマは3話までが勝負と言われるなかで、そこまでクリフハングのない『クイーンズ・ギャンビット』がなぜ受け入れられたかというと、視聴者のリテラシーがNetflixによって育てられているという側面もあるかもしれないね。巨匠たちの試みに受け手が期待してついてこれるようになったと。だから同じような企画はNetflixに限らず、世界的に見れば今後さらに増えていくはずだよ。

大室 こういう作品が配信でたくさん見られるようになれば、いよいよ映画館に行く意味がなくなってきてしまうね。いや、日本では『鬼滅の刃』がえらいことになってるけどさ。

大室正志(おおむろ・まさし)

1978年生まれ。現在、産業医として日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社を担当。

Twitter:@masashiomuro

伊丹タン(いたみ・たん)

1979年生まれ。インディペンデント映画の制作に携わり、現在はフリーランスでテレビドラマ、映画、舞台などのプロデュースをしている。

最終更新:2021/01/07 22:47
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