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『家、ついて行ってイイですか?』命を使い切り、最期もキメて逝ったイノマー「余命は俺が決める」

文=寺西ジャジューカ(てらにし・じゃじゅーか)

『家、ついて行ってイイですか?』命を使い切り、最期もキメて逝ったイノマー「余命は俺が決める」の画像1
『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)

 バンド「オナニーマシーン」ヴォーカル兼ベース担当であるイノマーの命日は先月の12月19日である。享年53歳。

 1月6日に『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)が放送された。2019年12月23日、下北沢で番組スタッフが声をかけたのはイノマーのパートナーのヒロさん。同年にがんで亡くなったイノマーの葬儀の帰りだった。

 スタッフが「家、ついて行ってイイですか?」と尋ねると、躊躇しながらもヒロさんは了承してくれた。マンションに到着すると、そこは6畳のワンルームだった。53歳の男が生活するにしては狭く散らかった部屋だが、イノマーが綺麗な部屋に住んでいたら逆に嫌かもしれない。ここでイノマーとヒロさんは2人暮らしをしていたのだ。

「11月の後半に危篤状態になって意識を失って、そこから目覚めて。あんまり愛情表現をするようなタイプの人ではなくて。照れ屋でシャイな部分が凄くある人で、なかなかそういう言葉をかけられたことはなかったですけど、最後の3週間……私の名前をたくさん呼んでくれて。彼の最期の愛情表現だったのかなと思って、最大限の……。最後に声が出なくなる前日、亡くなる前日なんですけど、最後に……言った言葉が私の名前でした」(ヒロさん)

 実は、この時の取材映像はすでに昨年3月18日に放送されている。だから、今回は後日談が付け足されるだけかと思っていた。でも、そうじゃなかった。

わざと遠慮のない接し方を貫いた峯田和伸

 自宅での取材から約1年後、番組はイノマーの1周忌の法要を取材した。イノマーの戒名は「性春昌幸信士」。これをつけた住職はオナニーマシーンのファンとして有名な人だ(ライブ会場での目撃情報も多い)。同じく住職の父からは怒られてしまったが「イノマーさんにとってはベストなんだから!」と彼は泣いて訴え、愛をもってつけた戒名である。イノマーの母親は打ち明けてくれた。

「(イノマーのバンド活動について)知らなかったんですよ、去年まで。最初、変な戒名だなと思って。こういうことだったんだって」(お母さん)

『家つい』と同じくテレ東で放送中の番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート』ディレクターの上出遼平はイノマーと親交があり、かつて上出が所属したバンド「タンポンズ」を命名したのはイノマーである。上出は息を引き取る瞬間までイノマーに密着していた。その映像が今回は公開された。

 2019年2月、手術5カ月後のイノマーは都内のカフェにいた。オナニーマシーンが10月22日に開催するバンド史上最大規模のライブの打ち合わせだ。そこに上出が姿を現した。

上出   「ドキュメント撮らせてもらいたくて。いいですか……?」
イノマー 「へ? 趣味? (上出を指差して)タンポンズだろ?」

 ガン摘出のため舌の3分の2を摘出していたイノマー。カメラを構える上出の姿を見て「AV監督みたいだな」と軽口を叩くが、その言葉は聞き取りにくい。舌がないため唾液を飲み込めないイノマーは、ティッシュでわざわざ唾液を拭き取っていた。

 その5カ月後の7月、ライブでファンの前に登場したイノマーは1枚の紙を掲げた。そこに書かれていたのは「再発」の2文字。ガンは転移していた。イノマーは抗がん剤治療・放射線治療を開始した。

 9月30日、銀杏BOYZ・峯田和伸が中心となってイノマーの治療費を募るためのイベントが開催された。会場を訪れたイノマーを峯田が出迎える。

峯田   「(抗がん剤の副作用で)パンパンになっちゃって、顔(笑)」
イノマー 「お猿さんみたいになっちゃった、顔」
峯田   「前より可愛いよ」

 会場に入るイノマーを見送る峯田。イノマーが背を向けた時、彼の顔はほとんど泣いていた。しかし、病気を笑い飛ばそうとするイノマーの見せ方に峯田は付き合った。ライブが始まるとわざと遠慮のない接し方を貫くのだ。

峯田   「今から言っとくとさ、10月にあるじゃんイベント。あん時にアンタいねえよ、もう」(峯田)
イノマー 「あと1カ月なのに(笑)?」

 切なく悲しい顔になるのはイノマーと距離をとった時だけ。病人に対するいかにもな態度を峯田は決してとろうとしなかった。

峯田   「アルバムね、レコーディングしてるんすよ。聴かせたいから早くやんないとね。聴かせたいんだよなあ」
イノマー 「いつくらいに出せそうなの?」
峯田   「来年の2月か3月かな」

 2020年10月に銀杏BOYZがリリースした『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』は、峯田がイノマーを思って作った曲。そこには「ぼくが生きるまで きみは死なないで」という歌詞がある。

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