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中国人エリート留学生の動向に変化 中国“海亀”たちの新ヒエラルキー

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写真/GettyImagesより

 中国社会で使われる「海亀」という言葉は、今や日本の事情通やビジネスマンの中でも広く知られるようになった。海外大学・企業で知識や経験を蓄え、本国に帰国し活躍するエリート学生や“留学派”を指す言葉だ。

 ただ、本来なら「海帰」と書くべきだが、多くの留学派たちの帰国後の現実は厳しく、そこから同じ発音の「海亀」という自嘲的な新造語が誕生したという経緯はあまり知られていない。また海亀は「海帯」と呼ばれることもある。ここで言う海帯とは昆布のことで、「ありふれていて珍しくない」ということを揶揄する意味がある。

 近年、海外から中国に帰国する海亀の数は、増加の一途を辿っている。参考になる統計としては、留学帰国者数のそれがある。中国に帰国した留学生の数は2018年に51.94万人とされ前年比8.01%の増加をみせている。2019年の帰還者数はさらに増え、およそ60万人に達したと試算されている。

 なお中華系メディアによれば、2020年はコロナ禍の影響もあり、海亀の数は歴代最高の80万人に達するとも報じられている。本来、海外の大学・大学院で学んだ留学生たちは、中国よりも現地で就職することを望むケースが多い。しかし、コロナ禍による経済萎縮や米国を中心とした反中感情の高まりは、留学生たちが帰国せざるを得ない状況を加速させている。

 また、2020年に中国国内大学を卒業した新卒社会人は約874万人と、こちらも歴代最大規模だ。中国では近年、高学歴化が進み就職競争が激しくなってきたが、20年から今年にかけてさらに就職難の時代に突入するとも予測されている。中国で働く海亀のひとりの趙氏(28歳)は言う。中国東北部遼寧省出身の彼は、19年7月にオーストラリアから帰国し、20年8月から江蘇省・蘇州市のある大手紡織企業の国際営業部で働いている。

「最近、中国国内メディアで、海外の優秀な人材が『祖国の呼びかけ』に応じて大挙して帰国するブームが巻き起こると宣伝していますが、帰ってきた人々のほとんどが就職に苦しんでいます。国家レベルで発展させようとしている最先端科学技術分野では、天文学的な報酬を払って優秀な留学派を取ろうとしていますが、そんな人材ってあくまで少数派です」

 一方、「文系の留学生たちの就職は厳しい」と趙氏は自身の経験から説明を続ける。

「オーストラリアで修士課程(金融学)を終えてすぐに帰国した私の場合も、当初就職がうまくいきませんでした。主な理由はほとんどの会社が“経歴者”を募集していたからです。幸い自分は父親の友人が地元で運営している小さい貿易会社で一年間インターンシップするかたわら、人材エージェントの就職コンサルティングサービスを受けてやっと今の会社に就職できました。約1万元(16万2000円)くらい人材エージェントに払いましたが、親からの全幅の支援がありました。親戚内や地元における親のメンツも考えなきゃならなかったので就職活動に必死でしたよ」

 海亀たちの給料事情も非常にシビアだ。海亀のうち、40%の海亀たちは、国内大学卒業者とほとんど初任給に差がないとされている。国内大学卒業者の平均年俸の3倍水準となる30万元をもらうエリート海亀は5%未満である。前出の趙氏の給料は入社一年目で約7000元(約11万4000円)。就職できたことをよしとし、給料にはおおむね満足しているという。一方、親戚のはとこはびっくりするくらいの高給取りだそうだ。

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