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グローバル市場でヒットする非ボリウッド映画、ココイチの本場進出……世界を「環流」するインド文化の現在

湾岸諸国で生きるインド系2世の自己認識

――松川先生が目下取り組まれていることは?

松川 私は湾岸諸国のインド系移民について研究していますが、例えばクウェートではすでに20年以上在住していて、クウェートで生まれたインド系2世が大人になっています。こういう人たちはインド国籍を持つNRIなんですけれども、自分のことをインド人とは思えないわけです。しかし、湾岸諸国では移民に対して国籍を与えません。では、将来どうしていくのか。自分をどう自己規定して、どう生きているのか。そういうことを研究しています。話を聞くと、ボリウッド映画は観るけれども「インド生まれのインド人とは違うんだ」という意識を持っています。最終的には、そういう人たちはさらにオーストラリアやカナダに行ったりするんですね。

――ああ、移民が多くて、国籍を与えてくれるところに。

松川 日本で「サードカルチャーキッズ」(両親の国の文化を第1文化、生活している国の文化を第2文化とした場合、そのどちらでもない狭間の第3文化の中で人格形成に影響を及ぼす時期や思春期を過ごしている/過ごした子どもたちのこと)と言われている人たちと共通性があるなという印象があります。第1世代はインドに戻ることが前提だけれども、第2世代はインドに行ってみても馴染めません。例えばインフラが素晴らしい湾岸諸国の生活に慣れていると、トイレをモディ政権が作っていると言っても衛生面で到底受け入れられない。ただ、コロナで状況が変わってしまって、やむなくインドに帰った人たちもたくさんいます。そういう人たちがこれからどうするのかを含めて、見ていきたいところです。

●プロフィール
松川恭子(まつかわ・きょうこ)
1972年、大阪府生まれ。甲南大学文学部教授。専攻は文化人類学、南アジア地域研究。著書に『「私たちのことば」の行方』(風響社)、共著に『湾岸アラブ諸国の移民労働者』(明石書店)などがある。

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

いいだいちし

最終更新:2021/02/15 10:35
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