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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.623

人生最期の日々は、自宅で穏やかに過ごしたい? 柄本佑主演の終末医療ドラマ『痛くない死に方』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

ピンク映画出身監督が描くエロス&タナトス

尊厳死を望む本多夫妻(宇崎竜童、大谷直子)に誘われ、花火大会を楽しむ。

 「カルテではなく、患者本人と向き合え」

 長野医師からの言葉だった。その言葉を実践するように、長野医師は患者や患者の家族と友達同士のようなコミュニケーションを交わし、信頼関係を結んでいた。長野医師に最期を看取ってもらえたことを、遺族たちも喜んでいた。河田は長野医師のもとで、イチから修業をやり直すことになる。

 2年の歳月が流れ、河田はさまざまな患者たちと向き合ってきた。新たに本多彰(宇崎竜童)の在宅医療を担当することに。本多は末期の肝臓がんだったが、口が達者で、人生を最期まで楽しもうという考えの持ち主だった。本多は川柳を趣味としており、本多の誘いに応じ、河田も即興で五七五を口にするようになる。その様子を、本多の妻・しぐれ(大谷直子)が笑って見守る。本多に充実した日々を過ごさせることで、河田も本多から生きることの機微を学ぶ。本多夫妻と一緒に、その夏の花火大会を観賞する河田。普段よりも、花火がより美しく映る。

 現在放映中のTVドラマ『天国と地獄 サイコな2人』(TBS系)では名バイプレイヤーぶりを見せている柄本佑は、近年は『きみの鳥はうたえる』『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18)、『火口のふたり』(19)と話題の映画に次々と主演してきた。ピンク映画好きなことを公言しており、ピンク映画出身のベテラン・高橋伴明監督の作品への出演は本望だったに違いない。

 ピンク映画では女優だけではなく、共演する男優も素っ裸になる覚悟がないと務まらない。医療ドラマである本作には“濡れ場”はないものの、伴明監督作品にはピンク映画時代から出演し続けてきた下元史朗、伴明監督の一般映画デビュー作『TATOO〈刺青〉あり』(82)で俳優として注目を集めた宇崎竜童が、病床で死期を迎える患者役をそれぞれ大熱演してみせている。ある意味、ピンク映画以上に男たちが“逝く”姿を赤裸々に描いた作品だ。生への執念と死を受け入れる諦観とがせめぎ合う。そんなエロスとタナトスに満ちたエキサイティングな撮影現場を、柄本佑も存分に楽しんだのではないだろうか。

 もう一本、柄本佑が熱演する医療ドラマが現在公開中だ。

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