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ドラッグ疲れでメディテーション──大麻・瞑想・オーバードーズ! 米ドラッグビジネス最新事情

文=小林雅明

稼ぐためのツールが多忙を紛らわす安定剤に

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「マリファナ博士」を自称するラッパーのバーナー。アーティストとして07年にデビューを飾るも、今や自身のマリファナ・ブランド「クッキーズ」に経営に大忙し!(写真/Getty Images)

 この10年を振り返ると、ドラッグとの関係における当事者性という点で、ラッパーは「元売人」というより「ユーザー」として強く認識されることになってしまう。その背景には、ヒップホップから派生したラップ・ミュージックが以前にも増して“売れる”音楽ジャンルになったことがある。

 ただ、ここからがややこしい。“売れる”と言っても、音楽ビジネスの形態は、90年代と比べて激変している。現在のラップ人気は、音楽業界の主流であったソフトを売る業態から、配信(ストリーミング)で支持を固め、それをライブの動員につなげて稼ぐものへと推移した上に成り立っている。

 よって、ネット上で個人レベルで発表されている無尽蔵な楽曲の中から、ちょっとしたきっかけでブレイクし始めたり、人気に火が付いてきたものを素早く察知して、その楽曲の(ド素人であるかもしれない)作家とレーベルなりマネジメント会社が契約を結ぶ。次に、この作家を新人アーティストとして売るために、さまざまな規模や形式のツアーを組み、ひたすら敢行してゆくのだ。

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17年にオーバードーズで亡くなったものの、今なお日本のティーンラッパーから愛されるリル・ピープ。昨年公開されたドキュメンタリー映画『Everybody’s Everything』の日本配信が待たれるところ。(写真/Getty Images)

 リル・ピープというラッパーの短い生涯をまとめたドキュメンタリー映画『Everybody’s Everything』(19年)を見てもそれはよくわかる。この映画でも、どこからともなくマネジメント会社が出てきて、人気に火がつき始めたピープと契約したことが、まるで当たり前だというようにサラッと描かれている。

 

 彼は、以前からクルーの一員として仲間たちと自分たちのペースでライブ活動を行っていたが、契約から間もないツアーの道中の一場面として、カザフスタンの空港でファンと触れ合うほのぼのとしたやりとりも出てくる。つまり、10年代に人気アーティストになるということは、尋常ではない勢いで活動範囲が広がるということだし、アーティストとしての自覚や音楽ビジネスについての知見を得る時間などないことがわかる。繰り返しになるが、活動の核はライブである。そして、ツアーのすべてを取り仕切るマネジメント会社にとって、彼は金のなる木だった。

 ところが、12歳で経験した両親の離婚が心に大きな影を落とし続けていたこともあり、過密なライブスケジュールが精神的に追い打ちをかける。そして、人気者ゆえ差し入れも多かったドラッグの力を借りて、どうにか耐え抜いてきた最中にドラッグのオーバードーズ(OD)で17年11月15日に急死──と、このドキュメンタリーは、そう結論できるような体裁を取っている。

 言い方を変えれば、ファンならずとも大きな疑念を抱かざるを得ない場面も多い。劇中ではピープが白い粉を吸引する場面も映し出すが、それよりも衝撃的なのは、移動中のツアーバスの車内や楽屋内で、同世代の仲間連中がわちゃわちゃ騒いでいる中、彼はたったひとりソファに腰掛け、うなだれぐったりしたまま昏睡状態でもあるかのように、微動だにしない場面が何度も映り込んでいることだ。

 また、開演5分前の時点で、さすがのマネジメント側も不調を訴えるピープを見て、公演を急遽キャンセル──しようとした瞬間、錠剤を口に放り込んで彼がステージに立った逸話が、その際のパフォーマンス映像を交えて、美談のように語られもするのだ。その時の彼は、どう見てもヘロヘロだ。

 死の直前、ライブ前の時間帯に眠り込んでいた彼の様子を確認したものの、4時間ほど経過した3度目の確認時には、すでに息をしていなかったというのだ。マネジメント側が精神的にも不安定だった上に、ツアーでの疲弊も蓄積していた彼を、なぜ休養させる判断をしなかったのか。アーティストとして長期にわたり、育成し管理していくビジョンは最初からなかったのか、そう思わざるを得ない。

 ちなみに公式な検視結果によれば、ピープの死因はフェンタニルとアルプラゾラムによるODで、血液からは大麻、コカイン、トラマドール、尿からはヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォンなど複数のオピオイド系鎮痛剤の反応が出ている。

 凄まじい勢いでスターダムを駆け上がる新進ラッパーに対するマネジメント側の問題といえば、それは18年7月に全米シングル・チャート第2位を記録するヒット「Lucid Dreams」を放ったジュース・ワールドの急死があまりに象徴的だ。19年12月8日、21歳になったばかりの彼は、シカゴのミッドウェイ国際空港に着陸した自家用ジェットの中で、禁制品を積んでいるとの情報をもとに警察に踏み込まれたが、すでに心配停止の状態だったという。死因はオキシコドンとコデインによるオーバードーズ(OD)と公式に発表された(機内からは銃とドラッグが発見されている)。

 ここからは推測となるが、ジュース・ワールドは着陸後に警察の手入れがあることを知り、極度の不安に襲われドラッグを服用したのだろうか。裏事情的なものを加えると、彼のように特大ヒット曲があるようなアーティストには、ドラッグの手配係をキープしていたり、公演先などでも足がつかない調達ルートが確保されていることが通例だ。

 もしそれをアーティスト個人で管理していたとしたら、マネジメント側の自由放任による怠慢であるか、アーティスト自身の薬物依存が相当進んでいたと考えるのが筋だろう。息子のドラッグ依存を知っていたジュース・ワールドの母親は、生前の彼に「不安を抱えているのなら、自分で処理しようとはせずに、きちんと医学的な治療を受けて」と直接働きかけ、「ODがずっと最大の恐怖だった」と20年10月になってから『NME』に打ち明けている。

 ここまでいくつも固有名を挙げてきたドラッグは、一読して違法だとわかるもの以外はすべて合法薬物だが、事態をややこしくしているのは、医師の処方箋さえあれば誰でも手に入れられ、服用に違法性がないということだ。奇しくもピープが亡くなった17年11月、トランプ政権は鎮痛薬オピオイド危機に対する「非常事態宣言」を発令している。

 また、大統領選に出馬したカニエ・ウェストもオピオイドに依存していたことを打ち明けている。さらに、エミネムは不安を和らげるために手を伸ばしたオピオイド系の薬剤、バイコディンの使用量が増え続け、 あと2時間病院への搬送が遅れていたら、帰らぬ人になっていた。そんな危機に見舞われたのは07年だったが、昨年には「11年間」薬物を絶ち続けたことを公表している。

 そういった“生還者”の例を知るにつけ、マック・ミラーの死はむなしく感じられてならない。彼のデビューアルバム『Blue Slide Park』(11年)は、チャート上では全米ナンバーワンに輝くも、批評家たちからは酷評され、作品そのものよりも彼の人格さえ批判するものさえ見られた。精神的に大きなショックを受けた彼は引きこもるようになり、手持ちぶさたでお金も持っていたことから、それまで愛用していたマリファナ以外にリーン(コデインやプロメタジンを炭酸飲料で割ったもの)やコカインで気分を紛らわすようになったという。

 こうしたハードドラッグを使用する上での葛藤や希死念慮については、アルバム『Faces』(14年)でも触れ、リリックのみならずインタビューでも、ドラッグの使用や精神の不安定さについて率直に打ち明けるようになった。翌年にはドラッグの摂取をコントロールできるようになり、「だいぶ健康になった」と公言し、作品もコンスタントに発表。この発言の内容が完全なる事実でなかったとしたら、彼はあまりにも悲運な最期を遂げることになる。

 彼の死から約1年が経過した19年9月、彼にオキシコドンの紛い物を供与した男が逮捕・訴追された。その後の警察の捜査でミラーが使用したのは、フェンタニル、コカイン、ザナックスを混ぜ合わせたオキシコドンの偽物で、18年9月7日、そのODにより死に至ったと結論づけたのだった(ミラーが死亡する2日前に、この男から受け取っていたこともわかっている)。しかし、ミラーは精神的な安寧をドラッグだけに求めていたわけではなかった。

「ミラーをはじめ、現在でも活躍するビッグ・ショーンなどは、生活に瞑想(メディテーション)を取り入れたことで知られています。ヒップホップは突然に富と名声を手に入れられるアメリカンドリームの側面を持ち合わせたキャリアなので、嫉妬やたかりも多く、人気が下落することへの恐怖心などがメンタルヘルスに直結します。そこにドラッグが加味されると、より不安に陥って瞑想に傾倒するラッパーが増加しているのだと思います。ケンドリック・ラマーも『Untitled 03|05.28.2013.』(16年)のリリックで『頭が思考でいっぱいなとき、自分のキャリアで悩んでいるとき、メンタルが心配なときは瞑想をしてみるといいよ』とラップしているくらいです」

 こう語るのは、米ヒップホップの現場での仕事を経て、現在はマインドフルネス・メディテーション・アプリのプロデューサーとしても活躍する松田敦子氏だ。

「ほかにもNLEチョッパやエース・フッドなど、ドラッグ依存症で知られるラッパーが瞑想に打ち込み、彼らに至ってはヨガも取り入れています。こうなることを予期してか、早くから瞑想をビジネスにしていたのがラッセル・シモンズです」

 シモンズといえば、84年にヒップホップの歴史を語る上での代表的なレーベル〈デフ・
ジャム・レコーディングス〉を立ち上げたひとりだ。

「彼は94年からヨガを始め、00年には瞑想に傾倒します。ヨガを始める前まではヘロインやコカイン、エクスタシー、LSDなど、重度のドラッグ依存症でしたが、瞑想に没頭し始めた原因は『女とドラッグ』と自ら述べているほどです」

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