日刊サイゾー トップ  > 旅一座の浮草稼業を描いた小津安二郎「浮草物語」
宮下かな子と観るキネマのスタアたち第13話

宮下かな子、旅一座の浮草稼業を描いた小津安二郎「浮草物語」で、俳優として迫られたある選択に思いを馳せる

旅一座の浮草稼業に自身を投影する宮下さん

 浮草稼業の夢のため、家族を諦めた喜八と、恋を諦めようとするおとき。これが冒頭の話で言う〝何かを犠牲にすること〟なのだろうか、とも考えたのですが、やっぱり私はしっくりきません。

〝犠牲〟って、結構強い言葉ですよね。辞書で引いてみると、「ある目的のために損失となることをいとわず、大切なものをささげること」とのこと。確かに家族や恋は、人生においてとても大切なものです。それでも夢の道へ進むのは、其々その〝選択〟をしたから。私たちは日々の中で、沢山の〝選択〟を積み重ねて生きています。その〝選択〟を実行する中で、結果的に何かを諦めることや失うこと、それは犠牲ではないと思うのです。

 私はある同業の友達に、この冒頭の話をしてみたのですが、彼女はとても驚いて「例えばプライベートとか、売れた時に出てくる犠牲ってあると思うけど、それって犠牲にしたから売れたんじゃなくて、売れたから犠牲になったんだよね。逆だったら仕事辞めるかな」と言っていて、私は胸がスッとしました。売れている人の生活って、私の想像の何倍も大変なものだと思うのですが、きっと〝何かを犠牲にしてる〟とは思っていないと思うんです。仕事を頑張りたいから、もっと上を目指したいからプライベートの時間がなくなる、とか。良く映るために、これを食べるの我慢しよう、とか。自分の人生のために何を選択するか、ただそれだけのことなのだと思います。それは、売れていても売れていなくても、役者業でもそうじゃなくとも、生きていく上でみんながやってきたことと、何ら変わりない延長線だと、私は思います。

 喜八とおときは、人生の大きな選択を迫られているわけですが、私も今後、俳優人生を大きく左右する、選択をしなければならない日が来るかもしれません!その時に、後悔のしない選択ができるよう、常に自分と向き合っていたいなと、喜八達の姿から考えました。
 喜八の秘密から渦巻いたこの波乱は、更に大きな渦を巻き、喜八の一座は解散の危機にまで陥ります。さて、其々がどんな道を歩むのか。それは映画を観てのお楽しみに。

「浮草稼業」の私の人生、それも私が選ぶ道。今ある自分の時間も、身体も、家族も、自分を成り立たせてくれている全てのものが、お芝居に繋がっていると私は信じています。人生、毎日の小さな〝選択〟の積み重ね。時に失敗することもありますが、明るい未来に繋がっていますように。自分を好きでいられる選択をしていけますように。そう信じて頑張るしかありませんね。

 今回は、私の話を赤裸々に書いてしまう回になって、何だかお恥ずかしい気持ちですが、楽しんで読んで頂けていたら、とても嬉しいです。喜八さん、私も頑張るよ~!

宮下かな子(俳優)

1995年7月14日、福島県生まれ。舞台『転校生』オーディションで抜擢され、その後も映画『ブレイブ -群青戦記-』(東宝)やドラマ『最愛』(TBS)、日本民放連盟賞ドラマ『チャンネルはそのまま!』(HTB)などに出演。現在「SOMPOケア」、「ソニー銀行」、「雪印メグミルク プルーンFe」、「コーエーテクモゲームス 三國志 覇道 」のCMに出演中。趣味は読書、イラストを描くこと。Twitter〈@miyashitakanako〉Instagram〈miya_kanako〉

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【アミューズWEBサイト公式プロフィール】

みやしたかなこ

最終更新:2023/02/22 11:38
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