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日本の金融機関、マネロン対策がザルすぎ!? 国際機関から厳しい指摘

銀行や信託、NPO法人にもメスが

 マネロンが行われる可能性の高い金融機関については、メガバンクを除いては自らのマネロン・テロ資金供与リスクの理解が限定的だとし、AML/CFT(マネーローンダリングおよびテロ資金供与対策)に係る義務について十分な理解を有しておらず、これらの新しい義務を履行するための明確な期限を設定していない。DNFBPsもマネロン・テロ資金供与リスクやAML/CFTに係る義務について低いレベルの理解しか有していない、と非常に厳しい評価をしている。

 その上で、全体的にみて、疑わしい取引の届出は、基本的な類型や疑わしい取引の参考事例を参照して提出されている傾向がある。また、特定のマネロン・テロ資金供与リスクに直面している一部のDNFBPsを含め、全てのDNFBPsが、疑わしい取引の届出義務の対象になっているわけではない、と分析している。

 注目されるのは、信託とNPO法人(非営利団体)に言及している点だ。

 信託については、国内外の信託、特に信託会社によって設立されていない、あるいは管理されていない信託の透明性に関しては課題がある。法執行機関は、より複雑な法的構造を有する実質的支配者情報を備えるために必要な手段を有していないようであり、法人や法的取極めに関連するリスクは十分に理解されていない、と指摘している。

 NPO法人については、リスクのあるNPO等についての理解が十分ではなく、そのため、NPO等の テロ資金供与対策のための予防的措置を強化するために、当局がターゲットを絞った働きかけができない。このため、日本のNPO等は、知らず知らずのうちに、テロ資金供与の活動に巻き込まれる危険性がある、と警鐘を鳴らしている。

 その上で、テロ資金供与に悪用されるリスクがあるNPO等、特にリスクの高い地域で活動しているNPO等についての完全な理解を確保するとともに、リスクに見合った働きかけやガイダンス提供、モニタリングまたは監督を行う必要がある、と指摘している。

 実は、このFATFによる日本のマネロン対策の審査では、08年の審査で最低評価を受けた。つまり、日本はマネロン対策後進国とされたのだ。その点では、今回の評価は一歩前進したことになる。ちなみに、米国も日本と同水準の評価だ。

 だからと言って、マネロン・テロ資金対策の強化をやめるわけにはいかない。FATFの審査報告を受け、政府は警察庁・財務省を共同議長とする「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置、3年間の行動計画を策定し、一段の強化に乗り出している。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/10/06 12:00
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