深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.663

ネット時代の“仁義なき戦い”を描いた野心作! 名簿ビジネスをめぐる和製ノワール『JOINT』

アウトサイダー目線で描かれた現代の日本

ネット時代の“仁義なき戦い”を描いた野心作! 名簿ビジネスをめぐる和製ノワール『JOINT』の画像2
石神(山本一賢)は暴力団相手に「名簿ビジネス」を広げ、資金を稼ぐ

 深作欣二監督の実録ヤクザ映画『仁義なき戦い』(73)には、焼け野原状態だった戦後の日本社会で図太く生きるヤクザたちの姿が描かれた。法律や古いモラルに囚われない男たちの息遣いが生々しい群像劇だった。今の日本も、バブル崩壊後はずっと瓦礫の荒野のような状況が続いている。格差社会で虐げられてきた若者たちは、グレーゾーンの汚れ仕事に手を出さなくては食べていけない。石神はネット社会の隙間を突いて、活路を切り拓こうとする。本作のことを、ネット時代の『仁義なき戦い』と呼びたい。

 名簿ビジネスで稼いだお金を元手に、石神はコンサルタントを名乗り、小さなベンチャー企業を買収する。ベンチャー企業の社員エンジニアたちは優秀だったが、資金調達能力に欠けていた。身なりを整えた石神は、大手IT系ベンチャーキャピタルへ出資を申し込むプレゼン会議に同席する。

 ソフト関係には疎い石神だが、裏社会で修羅場をくぐってきた経験を活かし、ベンチャーキャピタルの重役にぐいぐいと迫る。弱小ベンチャー企業を見下していたベンチャーキャピタル側も、石神の熱の入ったプレゼンには耳を傾けることに。半グレ男・石神が大手企業を相手に勝負をかけるこのシーンは、中盤の大きな見どころとなっている。

 本作を撮った小島監督は1994年生まれ。3歳から13歳までNYで過ごし、帰国後は東京大学の建築学科を卒業したというユニークな経歴の持ち主だ。従来のヤクザ映画にありがちなウェットさを排した演出が印象に残る。

小島監督「米国で幼少期を過ごしたこともあり、日本社会や東京という街に対して、自分にはどこかアウトサイダー的な目線があるように思います。そんな自分なりの目線を活かし、今までの日本映画にはないような犯罪映画を作りたかった。マーティン・スコセッシ監督やマイケル・マン監督の犯罪映画が好きでよく観ていましたが、ヤクザ、半グレ、移民を扱ったドキュメンタリーもかなり観ています。裏社会に関することは、リサーチできる限りのことは調べ上げたつもりです」

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