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宮下かな子と観るキネマのスタアたち28話

『誰も知らない』ドキュメンタリと物語の境界で視聴者に問いかける是枝監督の技術

『誰も知らない』ドキュメンタリと物語の境界で視聴者に問いかける是枝監督の技術の画像1
是枝裕和監督『誰も知らない』(イラスト/宮下かな子)

 皆さんこんばんは、宮下かな子です。

 2021年も残りわずか、いかがお過ごしですか。現在ようやくコロナ感染者数は落ち着いてきましたが、今年は緊急事態宣言が長引いたり、そんな状況下で東京オリンピックが開催されたり、新たな変異株が現れたりと、去年に引き続き非常に不安定な年だったかと思います。感染者の数字が大きくなっていくことにも徐々に見慣れていき、夏は都内感染者5000人越えなんて日もありましたね。時々、その数字を平然と見ていた自分にハッとして、人間の適応能力と言いますか、〝慣れ〟って恐ろしいなぁなんて思ったりしました。

 しかし活動範囲が狭められていた中でも、2021年はそれぞれが動き出した1年だったのではないかと思います。エンターテイメント業界も感染症対策をしながらようやく動き出し、そういった新たな環境の中でのお仕事に私もようやく慣れてきて、去年以上にお仕事の充実した年となりました。今年は初めて連ドラレギュラー出演の夢も叶い、舞台にも立つことができ、グラビアも再開できたり、初めましての出会いも沢山あったりと、色々な経験をさせて頂きました。

 ただやっぱり、マスクで相手の顔が見えないというのはどうにも慣れないですよね。撮影でもスタッフさんはずっとマスクをされている状態なので、食事の時にようやくお顔を拝見できる。或いは1度も素顔を見れぬまま撮影を終えることもあるので寂しいです。来年はもう少し、マスクなしでも生活が出来る世の中に近づいたらいいなぁ。

 さて、2021年最後にご紹介するのは、是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004年シネカノン)。先程、人間の適応能力、なんてワードを出しましたが、この作品は、過酷な家庭環境で懸命に生きる子供達が主人公。重量のある作品ですが、他人との距離感が変化している今の時代に、観て頂きたい1本です。

〈あらすじ〉
 母親と、各々父親の異なる4人の子供達で暮らす母子家庭の福島家。ある日母親は、子供達を置いて、新しい恋人のもとへと行ってしまって子供達だけの生活が始まる……。
 
 冒頭、アパートに引っ越してきた母息子の様子が描かれ、2人は引っ越し荷物のキャリーバッグにちらちら目配せをしています。一体何が入っているのかと疑問に思っていると、そのキャリーバッグから声が聞こえ、なんと2つのキャリーバッグから2人の子供が、頬を赤らませ笑顔で出てくるのです。事前情報なしに観たので、その異様さに驚かされました。何故子供達がキャリーバッグに入っていたのか。それはこの子達は、その存在が知られていない子供だからでした……。

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