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源頼朝、渋沢栄一、土方歳三の年収は? 『偉人の年収』著者・堀江宏樹さんに聞く

渋沢栄一や新選組の驚きの年収は?

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渋沢栄一

堀江 ドラマの中でも渋沢栄一は「自分だけが儲ければいいという考えではだめだ!」というようなことを叫んでいましたが、やはりそれでも自身もちゃんと稼いでますね。

 晩年にあたる昭和2年(1927年)、渋沢87歳の時の所得として公開された数字は35万6000円。現在の日本円でいえば約2.2億円です。これは昭和初期の1円=現代の636円としたときの数字です。当時の1円=2000円という説もあり、そちらを採用すれば、年収7億円以上という計算に……。

―――さすがは日本実業界の父といわれる渋沢ですね。

堀江 しかし若い頃、ちょうど平岡円四郎にスカウトされ、一橋家の家臣になる……つまり農民から武士にジョブチェンジしたときのヤング渋沢の年収は、今で言えば70万円程度でした。具体的にはその頃の収入は「4石2人扶持」(約7石)。1石=1両=10万円とする幕末の低~中所得者用の「労賃レート」で計算すると、年収70万円になるんです。

――「労賃レート」とは?

堀江 苦し紛れの工夫です(笑)。「幕末の1両=現代の1万円」というルールが歴史の世界にはあるのですが、たとえば新選組の平隊士の平均月給は3両ほどで、羽振りがよかった時期でも10両。しかしこれを普通に計算すると「月収3~10万円で高収入!?」という矛盾が生じてしまいます。一方、新選組の給与は当時の水準では高く、平隊士にも高給を弾むことで知られていたという事実もあるんです。ということで、現代日本の貨幣価値とはまったくそぐわない数字が出てしまう場合、『偉人の年収』では特例として、10倍(など)に換算する「労賃レート」を用意しました。

 歴史の世界では、100年や200年ほど前の時代はむしろ「最近」の感覚なんですが、実際には、たかだか100年、200年違っただけで、労働への対価やモノの値段が恐ろしいほど現在とは異なることが『偉人の年収』の執筆中にわかり、改めて驚かされました。これが1000年ほど前になると、同じ日本なのにまったくの別世界のように感じられましたね。

――20世紀前半くらいまでは「ヒト(=労賃)が安く、モノ(=物価)が高い」のが世界中で共通するルールだったと本書の中で何度も出てきましたが、労働対価や物価が現代とは大きく異なるため、今の感覚でもわかりやすい、納得感のある数字にするための「労賃レート」ということですね。

堀江 はい。20世紀前半くらいまでは、“中の下”といえる所得か、それ以下の経済水準の家庭では、食費が収入の半分以上を占めることも普通だったのです。それほど労賃にくらべて物価が高かった。だから、「まえがき」などでも書きましたが、「労賃レート」のような工夫をいろいろとしなければ、納得できる数字に絶対にならないのです。普通のまじめな歴史家は嫌がるでしょうけどね(笑)。

 渋沢の話に戻すと、一橋家の家臣になった頃の年収は70万円。しかし、これでは物価の高い京都で暮らしていけないので、滞在手当として、毎月「4両1分」(=約40万円)をもらっていたそうです。給料より滞在手当のほうがよほど高額なのは奇妙に思われるかもしれませんが、一橋家に仕える者の中で最低ランクの「奥口番(おくぐちばん)」の給料は、江戸時代初期の物価で定められたままで、幕末でもそれを踏襲していたからこのような額になったようですね。

――『青天を衝け』では登場シーンは少なかったものの土方歳三が印象深い存在でしたが、新選組が意外に高収入だったという内容にも驚きました。

堀江 新選組は当初、幕府の公認組織ではありませんでした。「池田屋事件」などで名をあげたとき、朝廷や幕府がボーナスとして報奨金を気前よく振る舞ったのです。新選組の「組頭(くみがしら)」(=中間管理職)だった永倉新八の証言によると、この時は平隊士が10両、つまり役職ナシの隊士でも現代の貨幣価値で月給100万円が保証されていたらしいです。

 先ほどの「労賃レート」で計算した場合、この当時の局長・近藤勇は毎月50両ですから月給500万円、副長の土方も40両なので月給400万円に相当する、かなりの高給取りだったということになります。ただ、その後は紆余曲折あり、彼らの月収は最盛期の3分の1程度に落ちたりもしましたけど。現代のベンチャー企業でもなかなかない話ですよね。

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