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山下達郎インタビュー回が『関ジャム』史上最高。なぜ、彼は「売れよう」と思ったのか?

山下達郎は、なぜ「売れよう」と思ったのか?

 山下に対する最初の質問は、フジファブリック・山内からの「『アルバムを作ろう』と思うのは、どのタイミングなのでしょうか?」というクエスチョンであった。いい質問だ。

「『FOR YOU』は40年前のアルバムで、この頃は基本的に年1枚出さされていたんです、事業計画で(笑)。その頃、年1っていうのは常識なんですね。3年出さなかったら『何やってる』って言われる。下手すれば、年に2枚出す人もいますからね」(山下)

 80年代、アルバムは年1でリリースされるのが当たり前だったし、歌謡曲のフィールドでは年3枚リリースする歌手さえいた。山下の言う「年に2枚出す人もいますからね」とは、70年代末~80年代初頭の松任谷由実を指しているのだろうか? しかし、今は売れっ子漫画家が何年休載しても許される時代だ。

 4th『MOONGLOW』(79)で認知度が高まり、5th『RIDE ON TIME』が大ヒットした山下だが、それまでは“雌伏の時”だった。

「バンドと違って僕らみたいなソロの場合、アルバム制作ってのは、曲を作ってスタジオでレコーディングする時に初めてやるんですよ。だって、予算ないもん。リハなんてできないし。だから、スタジオミュージシャンを呼んで3時間で2曲レコーディングする。それが、70年代では普通のことだったんで」(山下)

 まごうことなき“達郎節”に、ニヤついてしまう。年々増していく偏屈さ(年々、丸さがとれていく小田和正と真逆!)と、ぼやきながら軽快にトークするスタイルは、間違いなく山下達郎の芸風だ。練馬育ちの江戸っ子しゃべり、愛好する落語から影響を受けた噺家口調は、まさしく“サンデー・ソングブック状態”である。

 当時のレコーディング事情も見逃せない。カツカツで録音していたのだ。つまり、昔のミュージシャンは本当にうまくなければ絶対に仕事は来なかった。

「そうすると、例えばコーダ(曲の最後を締めくくる部分)が『もう一小節欲しい』とか、あるわけじゃないですか。でも、『もう1回やりたい』と言っても、予算の関係でできないと。『どうすりゃいいんだ?』『どうすりゃいいって、レコード売りなさい。レコード売ればやりますよ』って言われたんですよ。レコードを売りたいと思った動機は、それなんです。『もうワンテイク録りたい』と」(山下)

 現代のほうが圧倒的低予算で制作は行えるし、彼の回顧は実感しにくいエピソードかもしれない。音楽制作が好きだから、山下は“売れる”ことを目指した。もしメジャーデビューしていなかったら、彼はスタジオミュージシャン、作曲家、レコーディングディレクターになっていたのだろう。

「『RIDE ON TIME』がヒットして1番嬉しかったのは、レコーディングにお金がかけられること。『For You』はその次のアルバムなので、これは17曲録って8曲入ってる。だから、倍の曲数が録れたんです」
「『POCKET MUSIC』(1986年リリースの10曲入り8th)なんて、迷いに迷って27曲くらい録ってるから」(山下)

『POCKET MUSIC』が難産なのは知っていたが、27曲も録っていたとは……。さらに、『FOR YOU』以降はスタジオミュージシャンではなく、山下達郎のパーマネントメンバーを確定することもできた。

「特に、ドラム(故・青山純)とベース(伊藤広規)と3人でスタジオ入って、リズムパターンを研究して。あの頃、リズムボックスとかコンピュータもそんなに発展してないので、人力でいくしかないわけですよ(笑)。それをあらかじめやって、『SPARKLE』のパターンとかをみんなで決めて。『RIDE ON TIME』から、それがトライアンドエラーできるようになったんです」

「僕の場合はリズムパターンだけってのがあって。『FOR YOU』は全部、リズムパターンだけで作って、メロディーは後から考えたんです。(中略)“メロディーを作る日”ってのがあるんです。ある程度、形ができたマルチトラックをスタジオで流しながら『ラ~ララ~ラ』とかやって、そこに歌詞つける」

「その時はもう完全に割り切って、メロディーは後。リズムセクションのグルーヴ最優先で。ダンサブルなビートの上にメロディーがキチッとハマっている。そういうものを作りたかった」(山下)

 メロディーよりも先にリズムを決める。まず、国内ではほとんど聞かない、ブラックミュージック寄りの制作方法である。また、中学~高校の頃に在籍した吹奏楽部で打楽器を担当した経験も、きっと生かされている。リズムベースの音楽性だからこそ、今、山下の楽曲は海外で大ウケなのだろう。(余談だが、エルトン・ジョンの楽曲を聴くと、メロディーよりもまずはリズムが面白い)

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