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『激レアさん』が深掘りする昭和芸能史。中尾ミエと“天敵”、研音時代の研ナオコ、平野レミと放送禁止用語

研音時代の研ナオコが課せられた無茶なプロモーション

 続いて登場したのは、研ナオコだ。

 志村けん逝去で放送された追悼番組ではフリートークの弱いドリフのメンバーをフォローしたり、YouTubeやInstagramが若者の間で話題になるなど、今もバラエティのイメージが強い彼女。そんな研のことを、番組は“本当の本当にNG無しの人”と称している。

 1971年、17歳の頃に「大都会のやさぐれ女」で歌手デビューを果たした研。これが、恐るべき歌唱力なのだ。とても10代とは思えない歌声。デビュー5年後には、中島みゆき作曲「LA-LA-LA」で『NHK紅白歌合戦』初出場も果たした。実は、中島からの提供曲が研には多く、名曲「時代」は本家である中島より研のバージョンのほうが良かったりする。こんなケースが彼女には多く、桑田佳祐から提供された「夏をあきらめて」はサザンオールスターズ版より研のバージョンのほうがブルース臭があり、より一層心に沁みる仕上がりだ。

 そんな研も、下積み時代は壮絶だった。例えば、雪国のスナックに飛び込みで入り、「歌わせてもらえませんか」と直訴させられる営業。これを、事務所は10代の少女にやらせていたのだ。というか、もうこれは営業ではなく流しである。さらに、2ndシングル「屋根の上の子守唄」のキャンペーンでは、なぜかボートレースまでさせられた研。

 イカれたプロモーションだ。操縦を間違えたら、死亡事故さえ起こりかねない競技なのだから。『さんまの名探偵』じゃないんだから。そもそも、歌手がボートに乗る必要とは? 番組では船を操縦する研の写真が紹介されたが、船上の彼女はゴリゴリの前傾姿勢。研は研で、勝つ気まんまんだった。ここまでくると、“女・横山やすし”だ。

 「私を最初に拾ってくれた会社の社長さんに連れて行かれ、『ここで今日は取材をするから』って言われて。でも、(ボートに)乗ったことないんですよ」

若林「いや、そりゃそうですよ! めっちゃ危ないって聞きますよ、風で煽られたりしたら」

 「う~ん、でもやってみないとね」

 歌とまったく関係ない宣伝活動を課せられた研。ちなみに当時、彼女が所属していた事務所は研音である(現在は田辺エージェンシーに所属)。天海祐希や唐沢寿明の先輩として、横山やすしばりにボートに乗せられていた事実。あまりにも、今の研音とはイメージが違う。まさに、昭和の芸能界だ。

 そんな彼女に、ついにターニングポイントが訪れた。1973年、愛川欽也と共演した「ミノルタカメラ」CMだ。こんな内容だった。

愛川「最近、僕はミノルタ一眼レフに凝っている。しかも、美人しか撮らん」

 「ハッハッハッハッハッハッハ」

愛川「(研にカメラを向けて)だから、シャッターは押さない!」

 今やったらクレーム殺到、大炎上必至な内容だ。しかし、研は「『美人しか撮らない』『だから、シャッターは押さない』って言われたのが、物凄いおかしくて(笑)」と、ケラケラ笑ってみせるのだ。

 現代は、女芸人でさえ容姿いじりを嫌がる風潮。なのに、歌手でこの扱いに抵抗を感じていないのは隔世の感である。ただ、若い頃の研をよく見ると、ツィッギーっぽいお洒落なルックスであることにも気付く。今で言うサブカル系の、フォトジェニックな“映える”ビジュアルをしていたのだ。加えて、愛嬌も十分。赤塚不二夫が研ナオコのファンクラブを作ると、瞬く間に会員数が100人を超えたのは知られざるエピソードだ。

 そして、研ナオコといえば「追っかけファンを寛大に受け入れすぎてマネージャーにしちゃった」が、最出色の逸話である。

「だって、関西からわざわざ銀行辞めて来ちゃったからねえ(笑)」(研)

 「追っかけ」と柔らかく表現しているが、ストーカーである。自分につきまとうストーカーを自宅へ招き入れ、有能なマネージャーに仕立て上げた。これこそ、研ナオコ伝説で最もヤバいエピソードだ。振り返ると、昭和の時代はタレントの住所をみんな意外と把握していた。だからこそ、生まれた伝説か。しみじみと、神田うののようにスタッフに裏切られなくてよかった。自分につきまとう執着心があるからこそ、そのマネージャー(ストーカー)は一蓮托生で行動してくれたのかもしれない。

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