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映画『コンビニエンス・ストーリー』公開記念インタビュー

三木聡監督の新作は“違和感を楽しむファンタジー” あの『大怪獣』についても語る

意味が崩壊してしまうおかしみと恐怖

――『コンビニエンス・ストーリー』で、売れない脚本家の加藤(成田凌)と同棲中の女優・ジグザグ(片山友希)が怪しいオーディションを受ける様子は、コロナ禍中に配信されたオムニバス動画『緊急事態宣言』(20年)の一編『ボトルメール』を思わせました。また、主人公が異界へと足を踏み入れる展開は、『図鑑に載ってない虫』(07年)やオダギリジョー主演ドラマ『熱海の捜査官』(テレビ朝日系、10年)を連想させます。すべて繋がった作品と思っていい?

三木 ひとりの作り手から生まれた作品なので、異世界で感じる違和感を扱ったコメディとして、同じように感じるのは当然だと思います。また、同じように見える、法則性のある世界を逸脱することからナンセンスなものが生まれるという部分もあるでしょうね。「シティボーイズ・ライブ」でやったネタですが、スロットマシンみたいな機械が舞台に置いてあって、「シーフード」「ビーフ」「ポーク」などのワードが出てくる。「これはなんだ?」「カレーライスの具材じゃないか」という話に落ち着きそうになると、次に「インディアンサマー」と、まったくそれまでとは違うワードが出てくるという。意味があると思っていたものが、不意にその意味が崩壊してしまう。その瞬間がギャグになるわけですが、この法則性はホラーも同じだと思います。異界とかないはずの場所に異界があるから怖い。『図鑑に載ってない虫』も『熱海の捜査官』もそうですし、清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』もギャグっぽい世界でもある。コーエン兄弟やデヴィッド・リンチの世界もそう。それまでの意味が崩壊していく面白さや怖さは、作品にしやすいんでしょうね。

――コメディとホラーは構造的には似ているけど、微妙な違いもある。

三木 笑いとして表出するのか、恐怖として表出するのかの違いだと思うんです。80年代はサム・ライミ監督、コーエン兄弟脚本の『XYZマーダーズ』(85年)みたいなホラーコメディがよくありました。メル・ブルックス監督の『ヤング・フランケンシュタイン』(74年)もそうですよね。ひとつの物語の中に2つの価値観があって、物語構造の中で2つの価値観はどうなっていくのか。普通の物語だと、2つの価値観がぶつかり合い、最初の価値観が崩壊し、新しいテーゼが生まれる……という法則性がある。いずれにしろ、2つの価値観があるというのが、物語の基本だと思います。「2」ということが『熱海の捜査官』ではキーワードになっていましたし、2つの世界は「死の世界」「生の世界」と解釈することも、もっと別の解釈をすることもできると思います。『ボトムメール』に関しては、『コンビニエンス・ストーリー』を撮ることが決まっていたので、その前にちょっと実験的なものをやってみようかという気持ちがありました。

――本作のプロローグ的な意味合いがあったんですね。

三木 『大怪獣のあとしまつ』で東映の撮影所に通っていたので、そこで短編を撮ってみようかと。石井岳龍監督の『五条霊戦記  GOJOE』(00年)と『ELECTRIC DRAGON 80000V』(01年)みたいな関係ですね。『五条霊戦記』で共演した浅野忠信くんと永瀬正敏くんで、実験的な作品として撮ったのが『ELECTRIC DRAGON』だった。

――実験作のほうが、本編より人気を集めてしまったという。

三木 ありがちかもしれませんね。(4/8 P5はこちら

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