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映画『コンビニエンス・ストーリー』公開記念インタビュー

三木聡監督の新作は“違和感を楽しむファンタジー” あの『大怪獣』についても語る

表現なのか素なのか分からない、前田敦子という存在

――今回のメインキャスト3人は、いずれも三木作品に初参加。売れない脚本家・加藤を演じた成田凌は、マジメそうな雰囲気といい加減そうな感じのバランスがいい。

三木 加藤は物語の主人公ですが、被害者でもある。『図鑑に載ってない虫』の伊勢谷友介くんもそうでしたが、被害者をどう演じてもらうか、被害者としてのリアリティーをどう持ち込んでくれるかは重要なポイントでした。二階堂ふみが『時効警察』に出演した際に「(成田凌と)『図鑑に載ってない虫』の話をずっとしてたんですよ」と話していたことがあったので、成田凌は以前から僕の作品は観てくれていたみたいですね。見える世界と地続きの異界に足を踏み入れた人物が被害者になっていくことを、面白がって表現してくれた。Aという台詞があって、Bという動作をする際、AとBを繋ぐのが役者の表現。抑制された表現になるわけだけど、そのことを彼は楽しんでやってくれた。コメディとシリアスの狭間を行き来する感じが、すごくよかった。追い詰められて困った顔とかも、とてもいいですよ。

――前田敦子演じる人妻・惠子の口調は独特で、違和感を最初は感じさせますが、やがて違和感の正体が明かされていくことになる。

三木 初号試写を見た人の中に「前田くん、本当に死んでるみたいだね」なんて感想もあったんですが、それこそ鈴木清順映画のようでしたね。生きているのか、死んでいるのか、よく分からない感じ。芝居としての表現なのか、それとも素なのか、それすらも分からない(笑)。

――黒沢清監督の『旅のおわり世界のはじまり』(19年)などでも感じましたが、前田敦子はぶっきらぼうな子どもみたいな顔をしたり、唐突にドキッとするような表情も見せる。

三木 前田敦子には不思議な雰囲気がある。ある種のリアリティーのなさというか。そんな彼女の持つ雰囲気が、今回の惠子役にうまく合っていたみたいですね。

――惠子の夫であり、異界のコンビニのオーナーである南雲役は、六角精児。小劇場出身なこともあり、三木作品に自然に溶け込んでいます。

三木 80年代のミニシアター系の映画やサブカルシーンなど、六角さんと僕は見てきた風景が似ていますし、同じ神奈川出身だし、年齢は六角さんが僕よりひとつ下なだけ。似ているところがあると思います。成田凌の変なリアリティー、前田敦子の生きているのかどうか分からない感じがするのに対し、六角さんは異界の住人役なのに、いちばん安心できるというおかしさがありましたね。

――クラシック音楽を愛する温厚な性格の南雲だが、似合わないタトゥーを入れている。

三木 実際にいますよね、「そのタトゥー、あなたに要ります?」と尋ねたくなる人。南雲にも作品全体と通底する不条理さがある。英国の作家ロアルド・ダールの小説にも、そんな雰囲気がある。レイモンド・カーヴァー原作の『ショート・カッツ』(93年)もそう。山へ釣りに出かけたところ、女性の死体が流れてくるけど、せっかくの休日だからと釣りを続けてしまう。ブラックなギャグでもあり、シュールな怖さもある。日本的な笑いとは違うものを、今回は意識的に盛り込んだように思います。

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