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就職希望の学生は破門も……迫る「音大崩壊」の内情と解決法

「音大卒」は企業で採用されづらいのか

――音大では就職を希望する学生はヒエラルキーの最下層扱いになり、破門されるケースもあることが、就職を希望できない学生を生む構造的な要因のひとつになっている、ともありました。

大内 そうですね。レッスン中に無視される、急に厳しくなるといったことで学生から相談を受けたこともあります。就職しないで学生はどうするか。音大は大学院の進学率が高いんですね。しかし、これは教える側の都合ゆえです。学士4年分に加えて修士での2年分の授業料を確保できますから、「大学でやめて院に進まないなんて何事だ」と。

 本来4大であれば、3年生時点で進路選択を真剣に考えます。音大生も音楽で生きていくのか、違う職業に就くのかを決めなければいけません。ところがキャリアセンターに相談しようと思っても、学内で行われる演奏会を取り仕切り、メンバーを決める権限を持っている「演奏部」の近くにあったりすると、行きずらい。「キャリアセンターに行ったことを誰かに見られると、演奏部から『あいつは就職するから出さなくていい』と思われるのではないか」との不安に駆られるからです。

――「音大卒」は新卒市場ではどういう扱いなのでしょうか。

大内 小さい企業では採用人数が限られるため、音大生に限らず前例がない人材に対しては総じて消極的です。むしろ大企業のほうが多様な人材を採りたいという意欲があり、採用してみると「音大卒は非常にいい、継続的に採用したい」となることが多いです。例えば保険業界、金融業界などで評価が高く、入社後に優秀な成績を挙げる方が少なくありません。小さい頃から大量に暗譜をし、コツコツと毎日練習をし、言われた課題に取り組んできたわけですし、礼儀作法も叩き込まれています。社会人として成果を出す上で必要な能力を、音楽を学ぶ過程で身につけているんですね。大量の情報を正確に覚える、努力する、指示を着実にこなす、整理整頓する力などがある。音大生は一般大学の学生以上に日々、真剣に練習していますから、大学入学時点から卒業するまでの間に圧倒的に成長しています。ですから実は音楽教育は、社会で通用する力を育てているんです。それを学生も企業の側もわかっていない。特に学生には「就職って怖い」「音楽を捨てたことになる」「もう音楽ができなくなる」という誤解が多い。音大の先生も「音楽の世界でがんばりなさい」「お金がないのは若いうちは仕方ない」と言うから、30歳前後になって音楽で食っていけないことをいよいよ悟って、ようやく身の振り方を考え始めることが多い。同期には新卒で会社員になって活き活きとしている人も本当はいるのに、です。

 僕は銀行時代に部下の管理で苦労しました。「Aさん、これやってよ」と言うと、「なぜ私なんですか。Bさんじゃダメですか」というようなことが多かったんです。でも、音大卒は言われたことをきちんと引き受けるし、理解の筋もよく、アウトプットの質も期待できる。そのことは、詳しくは『「音大卒」は武器になる』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)という本に書きました。ですから、それに加えて先ほど言ったような、実用的なビジネススキルを学生のうちに学んでおけば、なおさら社会に出た後で必要な人材になれるのです。

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