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荒れる学校… 学校の暴力行為が前年度比15.5%、いじめ認知件数も19.0%増

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写真/Getty Imagesより

 学校が荒れている。文部科学省が10月27日に公表した「令和3年度(2021年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は前年度比15.5%、いじめの認知件数は同19.0%も増加した。
 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

 21年度の小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は7万6441件と前年度比で1万240件(15.5%)も増加した。児童生徒1000人当たりの発生件数は6.0件と前年度の5.1件を上回った。

 小学校では4万8138件が発生し、前年度比7082件(17.2%)も増加している。1000
人当たりの発生件数も前年度の6.5人から7.7人に跳ね上がった。中学校では2万4450件が発生、同3157件(14.8%)増加し、1000人当たりでは6.6件から7.5件となった。一方、高等学校では3853件と同1件(0.0%)の増加にとどまっており、1000人当たりでも1.2件と横ばいだった。(表1)

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 暴力行為としては、対教師が9426件と前年度比806件(9.4%)増、 生徒間が5万6024 件と同8608件(18.2%)増、対人が943件と同167件(15.0%)減、器物損壊が1万0048 件と同993件(11.0%)増だった。特徴的なのは、小・中学校で生徒間暴力が増加したことで、小学校では3万6365件と同5817件(19.0%)も増加、中学校でも1万7195件と同2736件(18.9%)増加している。

 懸念されるのは、全体の発生件数に占める小学校の割合が急上昇していることだ。12年度には14.9%だった小学校での発生割合は、10年間で大きく上昇し、21年度には63.0%となった。暴力行為の全体の6割以上が小学校で発生している。(表2)

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 児童生徒1000人当たりの発生件数を都道府県別で見ると、新潟県がもっとも多く13.5人、次いで鳥取県の13.2人となっており、両県は平均件数の6.0件の倍以上も発生していることになる。(表3)

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 小・中学校での暴力行為の増加について文科省では、「新型コロナウイルスの感染症の影響から、ストレスを抱える児童生徒が増えたことなどが発生件数の増加の一因となった」と分析している。

 暴力行為の増価を上回って悪化しているのが、小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめだ。21年の認知件数は61万5351件と9万8188件(19.0%)も増加した。児童生徒1000人当たりの認知件数は47.7件と前年度の39.7件を大幅に上回った。

 小学校では50万562件と前年度を7万9665件(18.9%)も増加している。1000人当たりの認知件数も79.9件と前年度の66.5件を大きく上回った。中学校では9万7937件が認知され、同1万7060件(21.1%)増加した。1000人当たりでも24.9件から30.0件に増加した。高等学校では1万4157件と同1031件(7.9%)増加した。1000人当たりでは4.0件から4.4件への増加だった。(表4)

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 いじめも暴力行為と同様に、全体の発生件数に占める小学校の割合が急上昇している。10年前の12年度には32.1%だった中学校の割合は21年度には15.9%に低下、同様に高等学校も8.2%から2.3%に低下したのに対して、59.3%だった小学校での発生割合は、81.3%まで上昇した。暴力行為の全体の8割以上が小学校で発生している。

 13年度からの10年間で小学校では58件から314件と10倍以上に増加、中学校でも95件から276件に約3倍に増加、高等学校は24件から112件と約5倍に増加している。(表5)

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 児童生徒1000人当たりの認知件数を都道府県別で見ると、山形県がもっとも多く126.4件、次いで暴力行為で1位だった新潟県の98.4件となっており、山形県は平均件数の3倍近い発生に、新潟県は平均件数の倍以上となっている。(表6)

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 いじめ防止対策推進法において重大事態とされる第28条第1項1号の「いじめにより児童等の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるケース」と2号の「いじめにより児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるケース」は、705件と前年度比191件(37.2%)と大幅に増加した。

 小学校では314件で同118件(60.2%)も増加している。中学では276件で同46件(20.0
%)、高等学校では112件で同28件(33.3%)の増加となった。このうち、1号は小学校で158件、中学校で122件、高等学校で68件、2号は小学校で191件、中学校で175件、高等学校で61件だった。(表7)

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 いじめ認知件数の増加について文科省では、「新型コロナウイルス感染症の影響が続き、感染を予防しながらの生活となったが、部活動や学校行事などの様々な活動が徐々に再開されたことにより接触機会が増加するとともに、いじめの定義やいじめの積極的な認知に対する理解が広がったことなどで、いじめの認知件数が増加した」と説明している。

 つまり、20年度の認知件数の低下は、新型コロナにより休校など学校活動が減少していたが、21年度は学校生活が再開されたことで、いじめに対する認知が進んだことにより増加したとしており、いじめが増加するのは自然の流れであり、当然のことのように説明している。

 だが、暴力行為もいじめも、小学校で増加しており低学年化していることは明らかだ。こうした事態に対して、教育を所管する文科省が、「増加は自然の流れ、増えて当然」のような姿勢を示していることに非常な危機感を覚えるのは筆者だけではないだろう。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2022/11/13 06:00
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