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小説『インフォーマ』がドラマ化、世界配信! 作者・沖田臥竜が語る「成し遂げるということ」

沖田氏も監修として参加したドラマ「インフォーマ」の撮影現場

 12月5日に発売される小説『インフォーマ』(サイゾー文芸)がドラマ化されることが発表された。小社刊行の小説としては初の映像化。関西テレビ製作で、同局のみならず、Netflixで世界配信されるという異例の展開だ。主演は連ドラ初出演という桐谷健太。社会を裏で動かす「インフォーマ」と呼ばれる情報屋と、殺人も厭わない凶悪集団との対峙を描くクライム・サスペンスは、話題になることは必死だ。そんなプロジェクトの裏には、作者のどんな想いがあったのか? 『インフォーマ』を生み出し、ドラマでは監修も務めた作家・沖田臥竜氏が振り返る――。

「小説を生む」という苦労が報われる瞬間

 熱い夏だった。2022年夏、日本で一番熱い夏だった。

 すでにマスメディアにて情報解禁されたが、私の新作小説『インフォーマ』がドラマ化され、来年1月よりNetflixでの世界配信と、地上波ではカンテレの木曜深夜連ドラ「EDGE」枠で放送されることが決定した。

 書き手として感無量の想いがもちろんあるのだが、もう私はそこにいない。それは私だけでなく、映像化に携わってくれたスタッフ、キャストの人たちみんながそうだが、すでに次のステージへと進んでいるのだ。

 私ごとでいえば、ネットを舞台にした新たな試みに関する準備の真っ只中で、その他にも、現在、別の映像作品の監修を務めている。だが、『インフォーマ』に費やした、2022年の夏の時間を忘れることがないだろう。

 去年の1月、私が原作を務めたドラマ『ムショぼけ』の打ち合わせを都内で行なっていたときには、すでに小説「インフォーマ」を書き始める準備に入ることになっていた。初稿ベースでいえば、この3月にはいったん、作品はまとまっていたのではなかったと記憶している。

 書くということは、本当に地味で孤独で、常に「最後まで書けるのか……これは本当におもしろいのか」という葛藤の積み重ねであり、数学などと違い、答えがない世界だ。そのため、文句をつけようと思えば、どの作品にも誰だって文句を言うことができるのである。だから、小説を書くときには、とにかく自分を信じて書かなくてはならない。もちろん、他の仕事をしながらだ。

 芥川賞を獲ってしまったある小説家に、担当の編集者が「調子にのってバイトを辞めるような無謀なことはしないでくださいよ!」と言ったそうだが、それは笑い話ではない。そんなことを本気で言うような世界だ。今の世の中、小説だけで食べていくことは、それだけ困難なのである。

 そのため、小説を本気で書きたければ、生活していくための仕事をしながら、その合間で睡眠を削りながらでも書かなければならない。そうまでして、なぜ物語を書くことにこだわり続けるのか。それは小説家だからだ。銭金だけではない。物語を作ることを仕事にしているからだ。

 そんな小説家にとって、何よりも報われる瞬間がある。それは、自分が生み出した作品が映像化されることだ。

 ずっと孤独の中で書き続けた作中の人物たちが、俳優部のキャストの人たちによって演じられるのである。自分の生み出した作品に、数多くの人たちが携わってくれ、世に送り出されていくのだ。これほどまでに、書き手にとって報われることがあるだろうか。

 歳を取るに連れ、「わくわく」するような感情は、そうそうなくなってくるのだが、今でも私は映像化が決まったその一瞬は、そうした感情で満たされるのだ。もちろん、そこがゴールではない。

 映像化が決定しても、スタッフ陣やキャスト陣が力を貸してくれなければ、映像は完成しない。気がつけば、映像の仕事にかかわるのも7作品目となるので、監修者として現場に入ると、「もう帰りたい」ばかりしか考えていないが、今回のように原作も務めているときはやはり違う。一生懸命、走り回るスタッフも、お芝居をしてくれる俳優もすべてが愛おしくなるのだ。その後の反響だって、凄まじいではないか。

「昨日、テレビで観たけど、むっちゃ面白かったで!」

 ドラマ『ムショぼけ』では、私の地元、尼崎で撮影したことから、かなりの反響をいただいた。だが、自分の作品を抜くのは、自分自身でなくてはならない。『ムショぼけ』という壁を、同作にも携わってくれた愛すべき人たちと『インフォーマ』で抜くことができたらよいなと思っている。

 7年前か。小説家を志す中で、ようやく編集者と知り合い、わずかな道を開くことができた。そのときの原稿料は一本3000円で、その翌月、10数本分の原稿料として初めて50000円ほどが振り込まれた。その振り込みもとは「サイゾー」だった。嬉しくて母親に伝えると、「記念やねんから、そのお金は使わんとおいとくねんで!」と言われた私が、ここまで来たのだ。私だけでも、私のことを認めてやりたいと思う。

(文=沖田臥竜/作家)

『インフォーマ』

沖田臥竜/サイゾー文芸
12月5日発売/amazonで予約受付中


週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2022/11/29 16:57
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