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『インフォーマ』制作発表試写会でサプライズを仕掛けた作者の想い

1月14日、東京都内でドラマ『インフォーマ』の制作発表試写会が行われた。登壇したのは、主要キャストである桐谷健太さん、佐野玲於さん、森田剛さんに加え、藤井道人監督。そして、本作で原作・監修を務めた沖田臥竜氏だった。
会場にはマスコミやキャストのファンが押し寄せ、無数のレンズが壇上の人々に向けられた。まさに、作品作りに携わった人たちにとっての晴れ舞台ともいえる光景だったが、ここに行き着くまでの時間を、自身について「尼崎の片隅で育った、どうしようもない不良少年」と表する沖田氏はどのように振り返るのか――。
小説『インフォーマ』は絶賛発売中。ドラマ『インフォーマ』はいよいよ1月19日スタート。物語が始まる。

落選した方々にも喜んでもらえる術はないか

 西へ東へ、いろいろなところを行ったり来たりしている。10代の頃、まだ「ニート」という言葉すら生まれていない時代だ。

 学校にも進学せず、遊びほうけて生きている若者を「プー太郎」「プー子」と呼んでいたのだが、尼崎の片隅で、漠然と未来を思い浮かべていたオレは「このまま一生こうやって遊んで暮らしていけたらな~」と考えていた。もちろん、その頃の自分はプー太郎だった。勤務先というか所属先を言わなければならないとするならば、暴走族であった。

 未来のことを漠然としか見えず、もしかすると「今」という時間がなんとなく続いていくのではないかと呑気に考えていた。それがどうだ。今、過労死しそうなくらい働いてるぞ。プー太郎だった頃の10代の私に今の姿を見せれば、「何があったの!?」と心配されるのではないだろうか。

 さて、ドラマ『インフォーマ』の制作発表試写会である。サプライズ企画は喜んでいただけただろうか。いつも私は突然である。

 SNSで『インフォーマ』の反応をリサーチしていると、主演の桐谷健太さんのファンの人たち、桐谷さん演じる木原慶次郎のバディとなる佐野玲於さんのファン=サノラーの人々、木原・三島コンビと真っ向から対峙する冴木亮平を演じる森田剛さんのファンクラブの方々が、抽選で参加できるかもしれなかった制作発表試写会に落選し、がっかりしているというコメントが、たくさん目に止まったのだった。私は胸がギュッと締め付けられた。

 それは制作発表試写会を目前に控えた、2日前の夜だった。どうにか落選した方々にも喜んでもらえる術はないかと思案した結果、カンテレのプロデューサーである豊福さんの電話を鳴らした。残された時間はほぼない状態で、何か制作発表試写会に落選した人たちやさまざま諸事情で来たかったけど来れなかった人たちに、喜んでもらえることはできないかと考えた。結果、カンテレ公式のYouTubeで制作発表試写会の模様を配信できないか、と相談を持ちかけたのだ。

 それを翌日、一日でまとめ上げてくれたのは豊福さんだった。そして私のほうは、お越しいただいた30名の方々全員に、小説『インフォーマ』にサインしてプレゼントできないかとさらに考え、急遽出版元のサイゾーとカンテレに書籍を用意してもらい、制作発表試写会の当日にメイクもそこそこにサインを書きまくったのだ。

 もちろん書きながら思ったよ。激戦となった制作発表試写会に来られる30名の人々は、桐谷健太さん、佐野玲於さん、森田剛さんのファンである。

「オレのサイン本で本当に嬉しいのか…」

 ただ、できることをやろうと考えていたので、野暮なことを考えても仕方あるまい。

「絶対に『配り忘れましたー、でへ』みたいなんだけはやめてや」

 と、カンテレのスタッフに言いながら書きまくった。

 本当はだ。制作発表試写会でもっともっとしゃべってやるつもりだったが、登壇者の藤井道人監督と桐谷さんと佐野さんと森田さんと私で行った全体ミーティングの際、プロデューサーの豊福さんの私を見る監視の目がギラリと光っていたので、「ほどぼどにせなあかんな……」と考えを改めさせられたのだ。

 ただ、登壇した際、『インフォーマ』の立ち上げから今日までの2年間の日々が走馬灯のように蘇っていた。

小説もドラマも、そしてマンガも…愛される作品に

 スタートは藤井監督と2人だった。企画会議のようなカチッとしたものを行ったわけではない。それは『ムショぼけ』のときも同様だった。『ムショぼけ』は藤井監督と五反田の居酒屋で、『インフォーマ』は品川プリンスのラウンジで軽く珈琲を飲みながら始まった話がスタートだった。そこから私が原作を書き出し、1話1話、藤井監督が編集者の役割を担ってくれ、2人でそこに情熱を注ぎこんできたのだ。

 たった2人で始めたことに、こんなにも多くの人たちが携わってくれ、今、制作発表試写会の舞台に立っているのだなと思うと、それまでの日々が蘇り、それはそれは感慨深いものとなっていた。

 制作発表試写会が終わってからも、大変な目まぐるしさであった。撮影現場同様にプロデューサーの角田道明さんことジョニーは、私をエスコートしてくれ、一方で豊福プロデューサーは、制作発表試写会の模様をサプライズでカンテレ公式YouTubeにアップするための作業を急ピッチで進めてくれ、私は『インフォーマ』のTwitter公式アカウントでどのような文言で告知すればいいかを考えていた。

 会場には、藤井監督が作ってくれた企画書を私が最初に持っていった相手である、カンテレの報道部の高橋さんの姿もあった。

 さらに、制作発表試写会後に行われた個々のインタビュー取材などをやり終えて、カンテレを後にしようとしたときだった。

「沖田さん!」と呼ばれたので、声のほうに目線を向けると『インフォーマ』でヘアメイクを担当してくれた西田美香さんと橋本杏樹さんが手を振っていた。制作発表試写会が行われると聞いた彼女たちは、わざわざ会場まで見に来てくれていたのだ。

 映像を世に出すためには、俳優部の人たちの存在はもちろん欠かせない。同時に裏方のスタッフの人たちが同じ熱量で撮影現場を駆け回ってくれるから、完成まで辿りつくのだ。彼らが1人でも欠ければ、作品のクオリティはときとして、違ったものになる。

 俳優部も裏で作品を支えてくれるスタッフのみんなも、藤井組の名の下に集結し、『インフォーマ』いう作品を作り上げてくれたのだ。

 それは小説においてもそうだ。サイゾーの揖斐社長を始め、いつも私の小説の編集の担当をしてくださるかたも、みんなが同じ熱量で携わってくれるのだ。私にとっては、そうしたひとりひとりが愛すべき人たちである。

 尼崎の片隅で育ったどうしようもなかった私が、いつしかペンを握るようになった。ずっと自分の小説が出版され、映像化されることだけを夢見てきた。

 売れたら良いなと思う。小説もドラマも、そしてマンガもすべて、作品として愛されてくれたら良いなと思う。

 これからも私はペンを握り続けるだろう。どんな物語を生み出すか、今はまだわからないけど、また生まれたら良いなと思っている。

 1月19日。今度は、テレでドラマ「インフォーマ」の幕が上がろうとしている。

(文=沖田臥竜/作家)


小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
2023年1月19日(木)スタート 毎週木曜深夜0時25分~0時55分(関西ローカル)
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
Netflix全世界配信(先行配信中)
公式サイト https://www.ktv.jp/informa/


ドラマ『インフォーマ』予告映像

桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/01/16 19:49
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