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R-1ファイナリストがいまいちブレイクできない理由とは?元芸人が全ネタレビュー

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田津原理音Twitter(@pen_my)より

 3月4日、カンテレ・フジテレビ系にてピン芸日本一を決める大会「R-1グランプリ2023」決勝戦が開催され、芸歴10年目、大阪吉本の田津原理音(たづはら りおん)が初の決勝進出にして見事チャンピオンの栄冠を手にし、大会参加者3537人の頂点に立ち大会の幕は閉じた。

 今回はそんな「R-1グランプリ2023」決勝戦に進出したファイナリスト達のネタを元芸人目線で分析しレビューしていく。世間では「ネタ批評などせずに楽しく見るだけで良いじゃないか」という声も上がっているのだが、敢えて全組をレビューすることにより、違った角度や、元芸人ならではの見方などを知ってもらうことにより、よりお笑いを好きになってもらえたらなという意図を持って書いていこうと思う。

 まずR-1グランプリの簡単な説明から入ろう。2002年から始まった一人芸で誰が一番面白いかを決める大会。とにかく「面白い一人芸」を披露することがルールとなっており、古典落語以外なら基本的になんでもあり。

 落語家、モノマネ芸人、漫談家、一人コント師だけではなく、普段はコンビ、グループで活動している芸人でも個人で参加できる他、アマチュアも参加可能。2020年までは芸歴の長い芸人にも門戸を開いていたが、2021年からは出場資格を変更し、プロは芸歴10年以内、アマチュアは大会への参加が10回目以内とされ、純然たる新人を対象とした大会となった。

 それでは今大会の対戦ルールも説明しておこう。ファーストステージは審査員5名がそれぞれ100点満点で審査。上位2名がファイナルステージへ進出。得点が並んだ場合は審査員5名による決選投票。ファイナルステージはファーストステージのネタ順が早かった方から順にネタ披露。最終審査は審査員5名が面白かったと思う方に投票し、獲得票数が多かったものがチャンピオンになるというもの。

 ちなみに今回の審査員は陣内智則さん、バカリズムさん、小藪一豊さん、野田クリスタルさん、ハリウッドザコシショウさんの5名。各々が披露しているネタの系統が違う5名なので、それぞれネタに対してどこに焦点をあて、どのような視点で審査をするのかとても楽しみである。

 今大会は「M-1グランプリ2022」王者、ウエストランドさんが披露したネタ中のセリフ「R-1グランプリには夢が無い」という批判的なフレーズが逆に宣伝効果となり、例年より注目される大会となった。オープニングでは歴代の王者のコメント、さらに昨年王者の「お見送り芸人しんいち」さんやファイナリスト達の「R-1グランプリには夢がある」という趣旨のコメントを放送し、ウエストランドさんの「夢が無い」発言を逆手に取る手法を見せ、演者や制作サイドの思いが伝わるVTRとなった。

 それではここからファイナリスト達のネタレビューを始めよう。

 トップバッターは「Yes!アキト」さん。昨年、敗者復活から初の決勝進出を果たしたのだが、決勝戦8位という残念な結果に終わってしまった。10年目のラストイヤーである「Yes!アキト」さんは昨年の決勝で今まで9年間やってきたスタイルは通じないと考え、今年一年あらゆるネタの形を模索し、自分だけのピン芸を探し求め、そして辿り着いた新ネタで決勝進出。果たしてどのようなネタを見せてくれるのだろう。

 ギャグの応酬をしていた昨年とは違い、今大会はスーツを着て彼女にプロポーズをするというコントを披露した。一人コントで進むのかと思いきや、そこはギャガー。「俺と結婚してください」というフレーズが中々言い出せず、「俺とけっ、けっ、けっ」の“けっ”を使い『け』で始まる一発ギャグを披露していく。それが発展し『け』以外の一発ギャグを羅列していくというもの。

 正直コントでスタートしたときは彼の良さを無くしてしまうのではないかと心配したが、さすがギャガー。自分を育てたギャグを捨てることはしなかった。新ネタを模索していたというより、ギャグの見せ方を模索していたといったところだろうが、この形はそこまで斬新ではなく、1年しかネタを揉めなかった感が否めない。9年練ったスタイルを、たった1年で越えることは出来るはずがない。

 さらに一人コントをするには演技力が無さすぎた。このコントはギャグを見せる為の芝居の部分をいかに上手く見せるかが肝となる。プロポーズをするという芝居がリアルで、そこから「ギャグ」という非日常に切り替わるから笑いになるのだ。もしかしたらこのスタイルを見つけた時点で「Yes!アキト」さんの中ではゴールになってしまい、肝心の芝居の部分がおろそかになってしまったのかもしれない。ギャグの上手さとコントの下手さが悪いギャップとなってしまった。完成形のネタが見てみたかった。

 2人目は「寺田寛明」さん。3年連続決勝進出。回を追うごとに点数を上げているのだが、本人的には納得がいかない様子。昨年の点数が思ったよりも低かったことが逆にやる気に繋がり、今年こそは「めちゃくちゃウケたい」という思いを持って挑むとのこと。芸人として活動しながら塾講師として教壇に立つ「寺田寛明」さんが見せる日本語の面白さ。期待大だ。

 ネタは例年と同じように「気づかない日本語の面白さ」を発表していくというスタイルなのだが、今年はフリップではなく、パソコンを使いモニターで発表する形に変わっており、見やすさは数段上がったように思う。ネタ自体も笑いやすいものに変化していたのだが、それよりも寺田さん自身の雰囲気が変化していることに驚いた。どこか芸人らしくなく、なんとなく斜に構えた感じに見えていた寺田さんだったのだが、今年はとても芸人然としており、薄っすら感じるとげとげしさが無くなり、余計な事を考えさせずにとても素直にネタが見られる空気になっていた。

 もちろん寺田さん本人の資質は変えられないので、ネタ終わりのフリートークではやはりいつもどおりの雰囲気になってしまい、これがR-1グランプリのファイナリストがイマイチブレイクしない理由なのではないかと感じてしまった。

 ただネタは本当に面白く、お客さんの思考を良い意味で裏切り、そしてボケの内容も飽きさせないようにうまく展開するし、さらにポップなフレーズも入っているので、ネタが終わっても脳みそにフレーズが残る。かなり高水準のネタであり、僕個人の感想としてはファイナルステージへ進出してもおかしくないクオリティだったと思っている。

 ネタの披露が2人目ではなく、会場がもっと温まっている状態なら点数ももっと高かったかもしれない。ちなみに見た目の印象が好感を持たれにくいので、フリートーク中のキャラクターで好感度を上げるような努力が必要に思えた。ネタが良いだけに勿体ない。

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