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ダウンタウン・松本人志が文藝春秋を提訴したことについて思うこと

今、松本に手を差し伸べずにどうする

 ところで吉本は一体、何をやっているのだ。吉本の広報担当が日頃からメディアとうまい付き合いをできていないから、今日のような泥沼状態を生むのではないか。

 吉本の広報担当の日頃の高圧的な態度をよく思っていないのは、文春や一部のマスコミだけではない。マスメディア関係者の大勢がそう感じているぞ。

 広報担当が日頃、メディアとうまく付き合いができていれば、今回だって記事化に動いた文春ともうまく折り合いをつけれたのではないか。文春ですら、「文藝春秋」に書いてもらってる書き手のことは「先生」と呼んで、滅多やたらと刺すことはないのだ。当たり前の話だ。文藝春秋という会社がいうところの「本誌」は文春ではなく「文藝春秋」なのだ。それなりの損得勘定や政治的配慮もする組織なのである。

 それを考えれば、会長だった大﨑洋氏が吉本を昨年退社したから、吉本のパワーが衰えたなどという難しい憶測をしなくても、日頃の広報担当の姿勢次第で文春と話し合う余地はあったはずだ。なぜならば、互いに感情を持つ人間だから、付き合いが深い相手を誰だって陥れたくはない。

 今回の裁判を考えた場合も、松ちゃんと距離を置くのではなく、本当に彼を信じているのであれば、「ウチの松本人志を犯罪者扱いしやがって許せん!」と吉本が本人よりも先にアクションを取るべきだったのではないのか。

 松ちゃん本人にはそのまま芸能活動を続けてもらい、吉本が裁判を粛々と進めていかないと、あまりにも松ちゃんがかわいそう過ぎないか。ダウンタウンは、これまでそれだけのことを吉本に対してやってきたのではないのか。

 それを、裁判はあくまで個人の問題で、あくまでタレントとしての松ちゃんはサポートをするが、プライベートなことは関知しないというのが吉本のスタンスだ。だが、タレント生命が左右される今回のようなことには直接のタッチはしないというのでは、事務所に所属している意味が本当にあるとは思えない。

 絶頂期にはダウンタウンに対して発言することもできず、世論の批判が強まり、テレビ局やスポンサーにも疑念を持たれだした途端に距離を置くとは、「なんだそれ」とツッコミたくなるのは当然ではないか。もう一度言う。なんだそれ!であるまいか。

 視聴者やダウンタウンのファンにとっては、銭金の問題ではない。もしも文藝春秋が完全敗訴して、仮に請求額の5億5000万円の支払い命令が出ても、誰も救われない。松本人志本人だって、以前のような活躍は難しくなっているだろう。

 個人の意思を尊重し、放任するのが事務所なのか。違うはずだ。個人の意思に関係なく、外敵から所属タレントを守ってやるのも、直接叱れなくともうまくコントロールしてやることも事務所の務めで、これまでの事務所に対する貢献を考えれば、何としてでも、松本人志を守り、戦わなければなからなかったのではないのか。

 その上で、法的なことは事務所に一任してもらい、松ちゃんにはテレビに出演し続けてもらうのが第一に取るべきスタンスだったのではないのか。私はさまざまな内部情報を耳にした上で言っているのである。タレントが個人で週刊誌を訴えて、その裁判に集中したいからという理由で芸能活動を休業するのはおかしいと。

 過去に同じように文春にスキャンダルを報じられて、芸能界から去ったある俳優に相談され、このように助言したことがあった。文春という媒体の体制・体質、その俳優の評価などをさまざまな角度から考えて、文春ではなく、同誌を後追いし、さらなる虚偽報道を行った別媒体を提訴するのはどうかと。その俳優は、すでに芸能活動休止を余儀なくされ、もうどうにもならない局面を迎えていたが、文春を訴えるのは得策ではなかった。裁判をすると、さらに次から次に矢が放たれるのがわかっていたからだ。だが、他のメディアからのそれ以上の追随を防ぐには、適当なこと記事にすれば訴えるぞ、という厳しい姿勢を見せつけることも大切であった。

 その点で考えても、一社を訴えるのは悪くはない。だが、それはあくまで事務所が行なう仕事である。

 私は松ちゃんに、文春の記事が事実無根というのであれば、この騒動をテレビで堂々と自虐ネタを入れつつ、笑いに変えてみせてほしかった。それを見て私は記事を笑い飛ばしたかった。文春の記者たちだって仕事だからやっているのだ。そんな記者たちすらも苦笑いさせてみてほしかった。

 松本人志は、テレビにこだわり続けた芸人である。尼崎出身で一番番有名なのはダウンタウンである。

 それだけみても、ダウンタウンは尼崎が生んだスーパースターだ。

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2024/01/25 15:14
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