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 >  >   > ロッチ シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第86回

ロッチ シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」

rotti.jpg『ロッチラリズム』(ジェネオン・
ユニバーサル)

 笑いを取るための方法には、大きく分けて2つの種類がある。それは、言葉で笑わせる方法と、動きで笑わせる方法だ。漫談や漫才では、前者の手法が主に使われる。また、はんにゃの「ズクダンズンブングンゲーム」や志村けんの「だっふんだ」は、後者の手法の典型である。ちなみに、芸人が実際にネタを演じるときには、それらを組み合わせて用いることが多いので、その区別は必ずしも明確ではない。

 さて、そのような視点から考えてみると、ロッチの2人が演じるコントは、かなり特殊なものであるということが分かる。彼らのコントの多くは、言葉や動きで直接笑わせようとするつくりにはなっていない。だが、だからこそ、他の芸人のネタにはない何とも言えない味わいがあり、それが彼らの魅力になっている。彼らのネタは、どのように構築されているのだろうか。

 ロッチのコントは、設定がとてもシンプルだ。2人の間にひとつの関係性があって、それを最初から最後まで延々となぞり続ける、というパターンが多い。その多くは、中岡創一が内気で情けないキャラクターを演じて、何らかの格好悪い部分を見せてしまい、それをコカドケンタロウが指摘して、しつこく延々といじり倒す、という形である。ひとつの関係性を保ったままでそれを最後まで引っ張っるというのは、かなり珍しいスタイルである。だが、それで笑いを取れるのは、彼らが笑いにつながるポイントを正確につかんでいて、そこだけを集中的に攻めているからだ。

 ロッチのコントのテーマは「情けなさ」である。ほんの少しの下心や気取りが原因で恥ずかしい思いをするというのは、誰でも一度は経験があるだろう。格好悪くて情けない自分の姿は、できればずっと他人の目に触れないようにしたいものだ。だが、それがふと、何らかのアクシデントで他人に気付かれてしまうときがある。こういうときに人間は「情けない」という感覚を味わう。

 ロッチのコントでは、中岡がその役回りを引き受けて、情けない姿をさらけ出す。そして、コカドはそれを見逃さずに素早くえぐり出し、その一点だけをどこまでも深く掘り下げて、中岡の格好悪い部分を徹底的にあぶり出していく。

 ここで注目すべきは、コカドの怒濤の攻撃を堂々と真正面から受けきる中岡の芯の強さである。彼は、コカドに絡まれて、自分の中の気恥ずかしさを際限なく増幅され、厳しい立場に追い込まれる。それでも、中岡はコカドの攻撃を全部受け止めて、きっちりそれを自分の中に留めるのだ。無闇に反論したり、すねたりしない。とぼけた表情ですべてを受け入れるのである。これがなかったら、彼らのコントは目も当てられないものになりかねない。コカドが中岡を一方的にいじめているように見えてしまうだけだ。そうならないのは、中岡があの風貌とたたずまいで、コカドの波状攻撃をきちんと受けきってしまうからだ。

 ロッチのコントには、特定のフレーズや動きに限定されるような笑いどころが少ない。彼らがひとつの関係性を演じることで、気まずい状況そのものを楽しむことができる。ただ、ロッチにはキャラクターやフレーズの飛び道具もある。コカドが演じるリアクション芸人「こんにちは根岸」や、中岡が演じる売れない俳優「十文字アキラ」は、『爆笑レッドシアター』でも人気キャラとして定着しているし、「笑ってまうくらい怒られてるやん!」に代表されるような、独特の言語感覚も魅力である。

 ロッチは、言葉にも動きにも頼らず、人間同士の関係性だけを切り取ってコントを作る。それは、短絡的に目先の笑いを欲しがらないという点で、若手芸人の中でも類を見ない芸風だ。たったひとつの関係性を貫く独創的なネタを量産しているロッチは、一点突破主義のコント職人だ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

●お笑いトークラリーpresents
「笑う犬の告白 ~人生で大切なことは全部お笑いで学んだ~」
【日時】8月4日(水) OPEN 18:30 / START 19:30
【出演】ラリー遠田、岩崎夏海
【Guest】吉田正樹
【会場】新宿ロフトプラスワン
前売¥2000/当日¥2500(共に飲食代別)
※前売券は7/3(土)よりローソンチケットにて発売。(Lコード:38927)

ロッチ 単独ライブ 「ロッチラリズム」

新世代、着々と。

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