日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 連載終了  > タカアンドトシ 非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第75回

タカアンドトシ 非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由

takaandtoshi.jpg『本音か!!』ワニブックス

 漫才とは、言葉の快楽を追求する芸能である。あるフレーズの響きが気持ちいいかどうか、ということがとても重要で、その理想を求めて漫才師は自分たちの言葉をつむいでいく。

 関西と非関西で比較したとき、ツッコミの語彙に文化的な由来があるのは関西の方である。関西では、「なんでやねん」はただのお笑い用語ではなく、一般人が日常的に用いるフレーズである。だが、それ以外の地域では、そもそも「なんでやねん」にあたる自然な語彙が存在しない。すなわち、会話の中で人間関係の距離を詰めて「ツッコミをいれる」という慣習自体が根付いていないのだ。

 だから、非関西地域の漫才師にとっては、ツッコミをどういう形式にするか、ということが大きなテーマになる。

 漫才ブーム以降の非関西漫才では、ツッコミの形態にはいくつかの大きな流れがある。1つは、ツービート、爆笑問題に代表されるような、ボケが主導権を握り、ツッコミはそれに追従するだけという「薄味ツッコミ」。もう1つは、おぎやはぎやPOISON GIRL BANDに代表されるような、柔らかな口調で決してボケを強く否定しない「同調ツッコミ」。そしてもう1つは、くりぃむしちゅーに代表されるような、ツッコミの中に気の利いた例え話を差し挟んで、笑いどころを増やす「例えツッコミ」である。

 「なんでやねん」にあたる自然なフレーズがもともと存在しない以上、非関西のツッコミは、「言葉の快楽」にかけては関西のツッコミに真っ向から勝負はできない。それが従来の常識だった。

 だが、近年に入り、新たなツッコミの形を開拓する意欲的な漫才師が現れた。それが、北海道出身のタカアンドトシである。彼らは、オーソドックスでわかりやすいネタ作りを基本にしながらも、ツッコミ担当のトシの器用さと声質を生かして、その可能性を追求し続けてきた。

 その過程で生まれたのが、トシがつっこむべき場面でなぜかボケた張本人のタカがトシにつっこんでしまう、という「ツッコミ返し」の技法だった。トシがタカの頭を叩くのに合わせてタカが同時につっこみ返す、いわばツッコミのクロスカウンター。2004年の「M-1グランプリ」の決勝で彼らがそれを披露した瞬間、審査員席の西川きよしは普段以上に目玉を見開いて体をのけぞらせていた。彼らがM-1に持ち込んだこの大技は、百戦錬磨の西川を驚かせるほどの代物だったのだ。

 だが、この年のM-1では、アンタッチャブル、南海キャンディーズ、麒麟という強豪にはばまれて、彼らは4位という結果に終わった。結成10年目を迎えていた彼らは、この年のM-1がラストチャンスとなった。

 だが、M-1が終わっても、彼らの漫才道は終わらなかった。ツッコミ返しという技を編み出した2人は、「ここにはまだ何かがある」と感じていた。そこで、タカが同じパターンのボケを何度も繰り返し、トシが同じフレーズでつっこみ続ける、という技を開発した。これは、トシのツッコミの切れ味が強調されるという意味で、彼らにぴったりの技法だった。

 そして、そんな漫才の進化の果てに、ようやくあの「欧米か!」が生まれた。欧米風の文化に執拗にこだわるというタカの妙なボケに対して、トシはひたすらどっしり構えて「欧米か!」の一言でつっこみまくる。タカトシの漫才が、「うまい漫才」から「すごい漫才」へと進化したのはこの瞬間だった。一定のリズムで「欧米か!」が繰り返されるタカトシの漫才は、言葉の快楽を極めた漫才のお手本のようだった。

 そこからの彼らの快進撃については改めて記すまでもないだろう。「欧米か!」は世間でも流行語になり、彼らは一躍人気者になった。タカトシの2人は順調にレギュラー番組を増やし、この3月には深夜の人気番組『お試しかっ!』もゴールデン進出を果たした。

 漫才の可能性を追い求めた果てに生まれたキラーフレーズ「欧米か!」の破壊力は絶大だった。タカアンドトシは、安定感抜群のツッコミの力によって、「M-1の向こう側」を見た唯一の漫才師である。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

お笑いトークラリー特別編
「ラリー遠田×岩崎夏海 ~もしM-1に挑む若手芸人がドラッカーの『マネジメント』を読んだら~」
お笑い評論家・ラリー遠田が、話題沸騰のベストセラー小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(ダイヤモンド社)の著者である岩崎夏海さんをゲストに招いて、「お笑い」をテーマに熱いトークを繰り広げます!

【日時】5月4日(祝)
【出演】ラリー遠田
【Guest】岩崎夏海
【会場】ネイキッドロフト
OPEN18:30 / START19:30

●ラリー遠田「おわライター疾走」 <http://owa-writer.com/>
●岩崎夏海「ハックルベリーに会いに行く」 <http://d.hatena.ne.jp/aureliano/>

前売りチケットは3月26日からローソンチケットで販売。(Lコード:36287)
問:tel.03-3205-1556(Naked Loft)

konogeininwomiyo.jpg
amazon_associate_logo.jpg

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が書籍化されました。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オードリー、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算や「M-1グランプリ」の進化を徹底分析など、盛りだくさんの内容です。手元に置いておくだけで、お笑いを見るのがもっと楽しくなる。そして、お笑い芸人を通して現代が見えてくる。そんな新時代の”お笑い批評”をお楽しみください。
ラリー遠田×担当編集S「お笑いを楽しむための”ツールとしての批評”でありたい」

タカアンドトシ 本音か!!

かつてはイケメンコンビでした。

amazon_associate_logo.jpg

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」
【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは
【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」
【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い
【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする
【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは
【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」
【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論
【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道
【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」
【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」
【第63回】青木さやか 仕事も家庭も……不器用に体現する「現代女性の映し鏡」
【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」
【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する
【第60回】ハライチ “ツッコミ”を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは?
【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由
【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」
【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」
【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」
【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」
【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」
【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」
【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」
【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由
【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」
【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」
【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化
【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」
【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感
【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる
【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ
【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」
【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心
【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは
【第37回】島田紳助 “永遠の二番手”を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」
【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」
【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」
【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由
【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」
【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」
【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」
【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か
【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは
【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が”竜兵会”で体現する「新たなリーダー像」
【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」
【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

最終更新:2013/02/07 11:11

タカアンドトシ 非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

志村けん急逝――悲しみ広がる

お笑い界のレジェンドが残した偉大な功績の数々を振り返る!
写真
人気連載

『ポップスター』無垢な少女の変貌

 炎上タレントと呼ばれる人たちがいる。一般モ...…
写真
インタビュー

『カニバ』佐川一政が再会を願う女優

 パリ人肉事件を起こした佐川一政の近況を追ったドキュメンタリー映画『カニバ/パリ人肉...
写真