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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.485

平成の世に起きた第二の「阿部定事件」なのか!? 佐藤寿保監督が女の多面性を描く『可愛い悪魔』

司法試験を目指していた美穂の夫・小塚(鐘ヶ江佳太)。妻を愛しすぎるあまり、枝切りバサミを手に凶行に走ってしまう。

 佐藤監督によれば、そんな女の嘘に翻弄され、振り回される男たちも、ある意味では不器用であり、純真な存在であるらしい。中村淳彦原作のノンフィクションシリーズを原作にした『名前のない女たち』(10)の社会の欲望に消費されるだけの女たちと同じように、本作の男たちも人間関係が希薄になった現代社会でうつろい、目の前にある刹那的な関係性にしがみつこうとする。寄る辺なき現代人たちの浅はかさと哀しみが感じられる。

佐藤「ピンク映画の頃から、僕は犯罪ものをいろいろと撮ってきました。犯罪を犯す人間って、純真すぎるほど純真なことが多いんです。純真がゆえに思い込みも激しく、狂気へと走ってしまう。決して、僕らの日常から遠いものではないと思います。僕が28歳のとき、パリで事件を起こした佐川一政さんと知り合い、パリの事件を題材にした映画の脚本をお願いしたことがあります。あくまでもフィクションとして書いてもらったのですが、やはり映画化は難しく、完成には至りませんでした。でも、その後も佐川さんとはお付き合いが続き、僕が撮った『夢の中で犯して殺して』(92)や『眼球の夢』などに出演してもらっています。佐川さんも純真で、それゆえに思い込みが強く、またマスコミに書き立てられたことで勘違いもされやすい人。でも、そんな部分も含めて魅力的な人物です。それに狂気は、生きている人間なら誰しもが持っている一面だと思いますね」

 本作のヒロイン・美穂は、それぞれの男たちに対して理想の女性像を演じようと努める。それゆえに男たちは妄想を掻き立てられ、無意識下の欲望まで顕在化させ、やがて破滅を迎えることになる。自分の魅力に無自覚な女、可愛い悪魔に出会ってしまった男は、どうにも抗うことができない。もがけばもがくほど、その悪魔的な魅力の虜になってしまう。
(文=長野辰次)

『可愛い悪魔』
監督/佐藤寿保 脚本/いまおかしんじ 撮影/鈴木一博
出演/七海なな、杉山裕右、鐘ヶ江佳太、後藤ちひろ、志賀龍美、志村彩佳、
南久松真奈、ニシイアキラ、萩野崇
配給/アイエス・フィールド 6月23日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
(c)2016「可愛い悪魔」製作委員会
http://is-field.com/kawa-aku

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最終更新:2018/06/23 18:00
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