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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.553

助成金問題で騒がれた西成ロケ作品が封印解除! 観る者の脳内麻薬を分泌させる過激作『解放区』

文=長野辰次

大阪・西成地区でロケ撮影された太田信吾監督&主演作『解放区』。西成という街の特殊性が、スクリーンから生々しく伝わってくる。

 走り続けていると次第に息が苦しくなるが、しばらく我慢するとある時点から得もいえぬ快感が生じてくる。脳内麻薬が分泌されている、ランナーズハイと呼ばれる状態だ。太田信吾監督の劇映画デビュー作『解放区』には、ランナーズハイならぬ”フィルムズハイ”が感じられる。舞台となる大阪のドヤ街・西成でロケ撮影していることに、主演も兼ねた太田監督をはじめとするスタッフ&キャスト全員の気持ちがハイになり、その心情の高ぶりとシンクロしながら物語が進んでいく。引きこもり、ドラッグ、セックス、ホームレス……、ヤバい要素が山盛りの内容に、観ているこちらのテンションまでハイになる。取り扱い要注意なドラッグムービーが、5年間のお蔵入り状態からようやく封印を解かれた。

 本作の撮影が行われたのは2014年。現在は閉鎖された「あいりん労働福祉センター」が健在で、1階は日雇い労働者たちの寄せ場となっていた。地元住民たちの協力を得た撮影クルーは、無料の炊き出しに並び、コンビニの賞味期限切れのおにぎりや3つで100円の菓子パンを頬張りながら、西成でカメラを回し続けた。大阪アジアン映画祭で上映される作品として大阪市から助成金60万円を受けていたが、西成の三角公園などにたむろするオッチャンたちの顔がそのまま映っていることから、一連のシーンをカットするよう求められた。太田監督はスタッフ&キャストと協議した結果、助成金を返上し、独自に上映できる場を探す道を選ぶ。ハングリーさと映画に対する熱量だけで完成させた高純度のインディーズ映画、それが『解放区』だ。

 スタッフ&キャストだけでなく、観客の心のタガまで外してしまう『解放区』はこんな物語だ。主人公はドキュメンタリー作家を目指す28歳の男性・須山(太田信吾)。「若者のリアリティー」を求めて、新しいドキュメンタリー作品を撮ることを夢想しつつも、小さな映像制作会社でADとして働いている。須山たちの撮影クルーは引きこもりの男性・本山(本山大)とその家族を取材しようとするが、取材現場で須山は会社の上司であるディレクター(岸健太朗)と衝突してしまう。取材対象に自分の価値観を押し付けて撮影しようとするディレクターの上から目線なやり方に、須山は従うことができなかった。

 東京はダメだ。大阪に行けば、もっと自由にドキュメンタリーを撮ることができるはず。そう考えた須山はテレビ局からOKが出ていない自分の企画を進めるため、カメラを手に大阪へと向かう。3年前に取材した「将来の夢なんかねぇ」と煙草をふかしながら語った不良少年のその後を追うためだった。だが、音信不通状態となった不良少年をひとりで探し出すのは不可能に近い。そこで須山は先日の取材で知り合ったばかりの本山に電話し、大阪へと誘い出す。引きこもりの素人にADをやらせるという無茶ぶりだったが、本山はこの誘いに応じ、大阪行の夜行バスに乗り込む。彼もまた息苦しい実家から飛び出す機会を求めていた。

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