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萱野稔人と巡る超・人間学【第6回】

萱野稔人と巡る【超・人間学】「宇宙生物学と脳の機能から見る人間」(後編)

文=構成/橋富政彦

――人間はどこから来たのか 人間は何者か 人間はどこに行くのか――。最先端の知見を有する学識者と“人間”について語り合う。(前編はこちら)

(写真/永峰拓也)

今月のゲスト
吉田たかよし[医学博士]

多彩な経歴を持つ吉田たかよし氏をゲストに迎えた対談後編。生命の起源とエントロピー、人間特有の高度に発達した脳と癌の意外な関係、全世界的な脳のネットワーク拡大における危惧とは――。

萱野 前回の最後に、吉田先生は生命を生み出したのは“環境の多様性”だとおっしゃいました。それは具体的にはどういうことでしょうか?

吉田 この宇宙ではあらゆるところで常に“エントロピー”が増大しています。水に角砂糖を入れたら砂糖水になりますが、その砂糖水は角砂糖と水に戻ることは絶対にありません。これは「秩序があるものは、やがて秩序が崩壊して、乱雑な方向にしか進まない」というエントロピー増大則で、宇宙を支配している物理法則です。それを考えると生命は不思議な存在です。生きている限り生物は秩序を維持していますし、生命の進化も乱雑とは正反対の方向に進んでいます。これはエントロピー増大則に真っ向から反していることです。では、私たちがどのように生命活動を維持しているかというと、食べ物というエントロピーが低いものを摂取して、エントロピーの大きい便を排泄するという、エントロピーの差を利用しているわけです。人体のエントロピーが増大しなくても、その周囲の環境を含めた全体としてはエントロピーが増大している。宇宙全体を見ても、そんな存在は生命だけなんです。つまり、生命の本質はエントロピーの偏りといっていいし、環境がすべて一様な状態からは絶対に生命は誕生しません。

萱野 その場合、生命とは、エントロピーの低さと高さを利用して、環境の中にそれまで存在しなかった秩序をみずから創造・維持する働きとして定義できるかもしれませんね。

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