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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.560

夢のスーパーカーを開発した男のトンデモ人生! 仕事のためなら手も汚す『ジョン・デロリアン』

キラキラと輝くものへの憧れと嫉妬

ドラッグビジネスに関わった疑いで、大スキャンダルを招くジョン。良くも悪くも、話題の中心にいる人物だった。

 キラキラと輝いているものに憧れ、それと同時に嫉妬し、その輝きを穢してやりたい、自分の手で破壊してみたい。人間にはそんな暗い欲望が、心の奥に潜んでいる。2008年6月に起きた「秋葉原無差別殺傷事件」、2019年7月に起きた「京都アニメーション放火事件」も、キラキラと輝く世界に憧れた男の心の中に芽生えた狂気が生み出した惨劇だった。日本で起きた大量殺人事件とは状況は異なるが、常に誰かの命令に従って生きてきたジムの心の中にも、ジョンの築いた夢の世界を壊してみたいという気持ちが膨れ、抑え切れなくなってしまう。

 このように紹介すると後味の悪い犯罪ドラマだと思われるだろうが、コメディ映画『なんちゃって家族』(13)に主演したジェイソン・サダイキスは小心者のジムを人間味たっぷりに好演。自分のことを信頼しているジョンをFBIに売るかどうか、最後の最後まで悩むことになる。また、ジムは根っからの悪人ではないことを理解しているジムの妻・エレン(ジュディ・グリア)の存在も大きい。明るい性格のエレンが、夫・ジムをしっかりと支えている。秋葉原や「京都アニメーション」で凶行に走った犯人たちにも、心の支えになってくれる人がひとりでもいれば、あの惨劇は防げたのではないだろうか。

 ジョン・デロリアンは、夢の車を生み出し、自動車史に名前を残した。一方のジム・ホフマンは名声にも財産にも縁はなかったが、妻と子どもには恵まれた。名声や財産よりも、ずっと大切なものをジムは手に入れていたのだと思う。

(文=長野辰次)

『ジョン・デロリアン』
監督/ニック・ハム 脚本/コリン・ベイトマン 共同脚本/アレハンドロ・カーピオ
出演/リー・ペイス、ジェイソン・サダイキス、ジュディ・グリア、イザベル・アレイザ、マイケル・カドリッツ、エリン・モリアーティ、コリー・ストール
配給/ツイン 12月7日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
(c) Driven Film Productions 2018
http://delorean-movie.jp

 

最終更新:2019/12/06 18:00
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