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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.571

メディアに搾取され続けた女性たちの実録ドラマ『スキャンダル』『ジュディ 虹の彼方に』

日本で「Me Too運動」が広まらなかった理由

『ジュディ 虹の彼方に』より。当時13歳だったジュディ・ガーランド(ダーシー・ショー)はセクハラ&パワハラに遭っても、逃れる方法を知らなかった。

 FOXニュースの独裁者として君臨したロジャー・エイルズだけでなく、人気キャスターのグレッチェン・カールソンとメーガン・ケリーも実在の人物。中でもシャーリーズ・セロンは、アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイル賞を受賞したカズ・ヒロの入念な特殊メイクによって、メーガンそっくりに変身している。ロジャーの欲望の餌食となる若手キャスターのケイラ(マーゴット・ロビー)は架空のキャラクターだが、FOXニュース社で働いた女性たちを取材して創作されたキャラクターだそうだ。セクハラで訴えらえたロジャーは2017年にFOXニュースを追われ、翌年死亡。グレッチェンはFOX側から和解金2000万ドルを受け取り、以降はこの問題に関しては完全に口を閉ざしている。高額な和解金は口止め料でもあった。ロジャーを権力の座から引きずり落とすことはできたものの、セクハラ&パワハラを生み出しやすいメディア業界の歪みが改められたかどうかは定かではない。

 日本でも2018年にセクハラ問題が大きな話題を呼んだ。財務省の官僚をセクハラで訴えたテレビ朝日の女性記者に対し、麻生太郎財務大臣(当時)が「(官僚は)ハメられたという可能性は否定できない」と発言し(のちに撤回)、訴えられた官僚を擁護。セクハラを訴えた側が逆に叩かれるという悪例を作った。権力の中枢にいる人間は、自分がセクハラ&パワハラの当事者となっていることに無自覚であることが多い。また、周囲をイエスマンで固めているため、問題が外部に広まるまで発覚しにくい。「セクハラ罪という罪はない」と平然と口にする政治家が政権にいるこの国は、米国以上にセクハラ&パワハラが横行しているのではないだろうか。残念ながら、日本では「Me Too運動」は広まらなかった。

 レネー・ゼルウィガーがアカデミー賞主演女優を受賞した『ジュディ 虹の彼方に』も、セクハラ&パワハラが重要なテーマとして描かれている。レネーが演じたのは、ミュージカル女優としてハリウッド黄金時代に活躍したジュディ・ガーランド。懐かしのファンタジー映画『オズの魔法使』(39)で名曲「オーバー・ザ・レインボー」を歌ったドロシー役の少女といえば、分かりやすいだろう。当時13歳だったジュディは「虹を渡れば、どんな夢も叶えることができる」と歌ったが、ハリウッドで過ごした彼女の実人生は壮絶だった。

 ハリウッド最大のメジャースタジオだった「MGM」と契約したジュディは、成長期であるにもかかわらず厳しい食事制限が課せられていた。ハンバーガーをひとつ食べることも許されなかった。当時合法だったとはいえローティーンのジュディには興奮剤が与えられ、休むことなく働かせられた。次第に睡眠薬なしでは眠れなくなってしまう。プロデューサーから性的行為を強要されていたこと、撮影現場でさまざまなセクハラに遭っていたことも知られている。

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