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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.569

”伝説の男”チョウ・ユンファが香港で大復活ッ!!  偽物だけ愛する『プロジェクトグーテンベルク』

香港と中国で大ヒットした『プロジェクトグーテンベルク 贋札王』。贋札づくりの工程がディテールたっぷりに描かれ、『ルパン三世』ばりの大どんでん返しが待っている。    

 伝説の男が帰ってきた。中国返還前の香港で『男たちの挽歌』(86)などの大ヒット映画に主演してきたチョウ・ユンファのことだ。ハリウッド渡航後は『アンナと王様』(98)や『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(07)などの大作に出演したが、香港に帰還しての主演作『プロジェクトグーテンベルク 贋札王』では久々にアクションシーン満載の当たり役に挑んでいる。二丁拳銃まで披露し、まさにチョウ・ユンファが“映画スター”チョウ・ユンファ自身を演じてみせている。

 ファンが待ち望んでいたチョウ・ユンファらしいチョウ・ユンファを蘇らせたのは、フェリックス・チョン監督。伏線の数々を張り巡らせたサスペンス映画『インファナル・アフェア』(02)の脚本家として知られている。ハリウッドリメイク版がアカデミー賞作品賞を受賞した『インファナル・アフェア』で見せた巧みなストーリーテリングは、本作でも健在。売れない絵描き役のアーロン・クォックと裏社会に生きる謎の男「画家」役のチョウ・ユンファとの男同士の奇妙な友情の物語として、観客をスクリーンに釘付けにする。

 物語は売れない絵描きのレイ(アーロン・クォック)の回想として始まる。1980年代、レイは恋人のユン(チャン・ジンチュー)と共に芸術家として成功することを夢見て、創作活動に打ち込んでいた。だが、画商に認められて売れたのはユンだけ。レイの絵は「有名画家たちの絵を模倣しただけでオリジナル性がない」と酷評されてしまう。落ち込むレイの前に現れたのが「画家」と名乗る正体不明の男(チョウ・ユンファ)だった。

 画家の正体は、贋札づくりの犯罪組織のリーダーだった。レイの天才的な複写技術を高く評価し、贋札づくりに加わるように勧誘する。「偽物にも心を込めれば、本物に勝る」という画家の言葉に、心を動かされるレイ。原盤技師や警備担当などその道のプロフェッショナルたちが集まった画家チームの一員として、レイは贋札づくりに情熱を注ぐことになる。

 映画の前半は贋札づくりのノウハウがじっくり描かれる。画家に頼まれ、レイが複写することになるのは米国の100ドル紙幣。肖像画のフランクリン・ベンジャミンの襟元には細かいマイクロデザインが隠されていること。紙幣には無酸紙が使われており、これは電話帳と紙質が同じであること。紙幣を刷るには凹版印刷機が必要であり、画家たちは東欧の閉鎖された国営印刷所まで出向いて凹版印刷機を入手する。紙幣の紙の厚さ、透かし技術、インクの原材料など、一般人が知らなくていい情報を事細かく積み重ねていく。前半の贋札づくりがリアルであればあるほど、後半のドラマ展開が大きく跳ね上がることになる。

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