日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 五輪延期でボランティア問題再燃?

東京五輪、2021年延期が濃厚か? 「ブラックボランティア問題」の背後にある五輪ビジネスの実態とは――

組織委が「完全無償」にこだわるワケ

ブラックボランティア』(角川書店)

――ボランティアの待遇が悪いと、具体的にどんな弊害が起こり得るのでしょうか?

本間 まったくの無償ですから、「いつやめてもかまわない」と考える人は出ますよね。しかも、酷暑が予想されます。やはり怖いのは熱中症と、それに伴う意欲の減退です。「お金は出ないし、無理しなくていいや」とやめる人は当然出てくるでしょう。そういう人が多かったら、大会運営はどうなるのでしょうか? たとえば、10人で回している現場で2人が脱落して、補充できないまま8人で回すことになり、しんどさからまた2人脱落して……となっていったら、ものすごい負荷がかかるわけです。最悪の場合は、命を落とす危険もある。もちろん、報酬を支払えばどんなひどいことをしてもいいということではないですが、金銭的なリターンがあるなら、思ったよりしんどくても「もう少し頑張ろう」と考えることができるでしょう。無償のほうが、モチベーションが下がって効率が低下する可能性が高いのは当然です。

――さらに今回、11万人以外に、中学生・高校生枠を設置し、会場外の誘導や競技会場の清掃を行う、としています。熱中症の危険が、子どもにも及ぶ可能性があるわけですね。

本間 その通りです。テニスやバスケットボールなど、対象となる競技を行っている子どもたちがボールボーイをするのは、ハイレベルの競技を見る良い機会かもしれませんが、その担当になるとは限らない。また、平日に行われるとなれば、授業の一環として参加することになるわけです。そうなると、参加したくない子どもの事情は無視されてしまう。スポーツに興味がない子や勉強をしたい子、夏休みとなれば家族で旅行に行く子など、さまざまいるはずです。そんなときに子どもたちは「参加しません」と言えるでしょうか? これは大学生も同じで、文部科学省が各大学に「五輪の日程に配慮して授業スケジュールを組むように」と通知を出しています。スポーツ科学部のような五輪と無関係でない学部や、外国語学部のような通訳・語学で食べていきたい学生は必然性があるからまだいいですが、文学部や法学部と五輪はなんら関係がない。それを一律「参加したら単位をあげます」ということにしたら、これはもう学問でもなんでもありません。

――聞けば聞くほど、理不尽な内容に思えます。なぜこれほどまでに、組織委は「完全無償」にこだわるのでしょうか?

本間 84年のロサンゼルス五輪から、プロ選手の出場を解禁し、スポンサーを解禁して五輪は商業化しました。ただのスポーツイベントになったわけです。実入りの部分を劇的に変えて、ものすごく儲かる仕組みを作ったにもかかわらず、現場で動く人たちはあえてタダで残した。そのほうが儲かるし、美辞麗句を並べれば、働いてくれる人たちはどこの国でもいる。でも前述した通り、「さすがにいくらなんでも全部タダじゃ人は集まらない」ということで、各開催国が、いろいろ工夫をするようになった。なのに、これまでの五輪でもっとも酷暑となり、最悪の環境が予想される東京五輪では、そのいやらしい部分が全開になっている。ここまでグロテスクな状態になるのは、五輪史上初めてでしょうね。しかも、読売、朝日、毎日、日経、産経と大手紙5紙が大会スポンサーになっているせいで、そうした問題点を取り上げようとしませんから、国民に伝わらない。極めて日本的な構造の問題が露呈しています。

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