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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.579

ソダーバーグ監督の旧作がネトフリで人気再燃! 主人公は人間でなく感染経路『コンテイジョン』

ウイルスを上回る、うわさや暴力の感染力

 ソダーバーグ監督とは医療サスペンス『サイド・エフェクト』(13)でもタッグを組んだ脚本家スコット・Z・バーンズは、疫病予防管理センターを丁寧に取材し、リアリティーたっぷりな内容にまとめ上げている。「人間は自分の顔を1日に2000~3000回は触っている」という、ウイルスの専門家を演じたケイト・ウィンスレットの台詞に驚いた人も多かったのではないだろうか。ドアノブを回し、エレベーターのボタンを押し、バスの手すりを握った手で、自分の顔に触れることで、口や鼻や目からウイルスが侵入することになる。まめに手を洗うこと(ラストで明かされるが、最重要ポイント)、顔を触ってしまう癖はやめること。実生活で役立つ情報が盛り込まれている。

 バーンズが脚本を手掛けた『ボーン・アルティメイタム』(07)では無敵のヒーローを演じたマット・デイモンだが、姿の見えない敵であるウイルスにはお手上げだった。デイモン演じるミッチ自身はウイルスに対する免疫を持っていたが、感染症で苦しむ人たちを救うことはできない。逆に感染症で亡くなった妻と継子の遺体をきちんと弔うことができず、やり場のない怒りに悶える。長女のジョリーだけはウイルス感染から守ろうと奮闘するミッチだが、ボーイフレンドに会うことも許さない父親に、年頃のジョリーは不満を感じてしまう。ミッチとジョリーとが一軒家の中でストレスを溜め込みながら過ごす様子は、今回のコロナウイルス騒ぎで自宅待機を命じられた人たちとまったく同じではないか。

 一方、社会が不穏な状況になると、逆にテンションが上がる人間も現れる。フリージャーナリストを自称するアラン(ジュード・ロウ)も、その1人だ。アランはこの混乱した情勢を好機だと考え、自分を売り出すことに懸命になる。疫病予防管理センターの責任者であるエリス医師(ローレンス・フィッシュバーン)の対応がずさんであると攻撃。新型ウイルスにはレンギョウが効くという情報をネット上に流す。アランの言動によって、株価は大きく変動。科学的根拠のないレンギョウを求めて人々は薬局に殺到し、手に入らなかった人たちが暴動を起こす。騒ぎに便乗した火事場泥棒まで横行するようになる。

 ウイルスの感染スピードよりも、うわさや暴力の感染のほうがはるかに速い。ウイルスではなく、未知なるものに対する恐怖心が人間を変えてしまう。

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