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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.584

死刑囚たちの告白『アイ・アム・ア・キラー』 Netflix充実の犯罪ドキュメンタリーシリーズ

知的障害者に責任能力はあるのか?

 第1シリーズの第6話「責任能力あり」も、気になるエピソードだ。テキサス州で生まれたルイスは16歳で家出少年となり、盗みを目的に一軒家に侵入する。留守宅だと思っていたら、運悪く74歳の老女ルビーが帰ってきた。驚いたルイスは手にしていた銃を発砲し、ルビーは死亡。社会に脅威をもたらす存在として、前科のあるルイスの死刑が確定する。だが、注目すべき点は彼が軽度の知的障害者だということ。彼は「死刑」という言葉の意味すら、理解していなかった。

 米国人の平均知能指数は98。検察側の調べではルイスの知能指数は70あるが、知的障害の専門家の検査では70を下回っている。日本でも話題となっている「境界知能」をめぐる問題だ。ルイスの不幸は、彼を受け入れてくれる場所が刑務所以外にはどこにもなかったということだろう。

 第1シリーズは死刑囚を中心にしたエピソードだったが、第2シリーズは殺人を犯した女刑囚たちにスポットライトを当てている。第2シリーズ第1話「彼女の手」は、破滅的な恋に生きたシングルマザーの物語だ。オレゴン州で育ったリンジーは若くして出産した子を実家に預け、国家警備隊へと入隊した。そこで出会った男と婚約するが、この婚約者は素手でリンジーの腕を折るわ、首を絞めるわのヤバすぎるDV男だった。

 DV男が刑務所送りになり、自由の身となったリンジーは新しい男性と出会う。さすらいの旅を続ける美男子のロビーだった。ロビーとの出会いを語るリンジーは、目をキラキラと輝かせ、そこが刑務所であることを忘れさせる。ロビーと一緒に旅に出たリンジーだが、1カ月後に別れが訪れる。「僕は死にたい」「殺してくれ」とロビーに頼まれ、リンジーはロビーの首を締め上げた。かつてDV男にやられたように。ウォルマートの駐車場での出来事だった。

 リンジーをめぐる死と暴力とロマンの物語は、二転三転する。番組後半からは、亡くなったロビーの母親と継父が登場。愛する息子が殺されたことにショックを受けたと語る老夫婦だが、リンジーのことは「赦す」という。実際に老夫婦が女子刑務所を訪ね、リンジーをハグする映像も流れる。だが、この物語は美しくは終わらない。リンジー逮捕時の担当警察官のもとを取材クルーは訪ね、取り調べに応じるリンジーが映ったVTRを見せてもらう。そのVTRの中でリンジーは、なんと「素手で殺す感覚を知りたかった」と語っていた。

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