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週刊誌スクープ大賞

新聞社にジャーナリズムの矜持があるのなら、黒川検事長と賭け麻雀した自社の記者を解雇すべき

 今週のポストの巻頭記事は、厚労省が、コロナ騒ぎに便乗して、年金受給年齢を75歳に引き上げてしまえと、悪だくみをしていると報じている。

 ここで一番驚くのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株で運用している資金が、今年の1~3月だけで約18兆円の損失を出していたということである。

 このままハイリスクの株に投資を続ければ、国民の老後資金を根こそぎ失うことになる。

 安倍首相は、この一事だけをとっても、万死に値するはずである。

 そんなバカの一人、厚労省が3月に年金改正法案を国会に提出し、5月12日に衆院を通過し、今国会で成立することが確実になったそうだ。

 法案の中身は、パートなどの短時間労働者の年金適用の拡大、在職老齢年金の支給停止基準の緩和などがあるが、問題は、年金繰り下げの年齢の上限を75歳に引き上げというところである。

 この制度導入の陰で厚労省は、年金支給開始年齢を70歳に引き上げようとしている。

 そして、今回、年齢を繰り下げできる年齢を75歳まで引き上げたのは、いずれは完全な年金75歳支給にするための布石だというのである。

 年金の株での運用の失敗を隠し、目減りする年金積立金ではこの先、年金制度が破綻するのは間違いないから、75歳まで年金をもらえないようにしてしまえということである。

 あくどいというより犯罪的である。

 即刻、こんな政権は崩壊させなくてはいけない。いつ終わるか分からない新型コロナウイルスで、経済はガタガタになり、自殺者は増え続け、高齢者は死ぬまで働かされる。

 こんな国にあんたは住みたいかね? 私は嫌だね。

 さて、文春がものすごい文春砲をさく裂させた。

 現代とポストが、スクープも事件も止めてしまったから、こうした情報が、文春一手販売になってしまったからとはいえ、元財務省職員・赤木俊夫の遺書のスクープも、相澤冬樹元NHK記者のものではあるが、彼をずっと支援してきたのは文春である。

 そして今回の黒川の賭け麻雀スクープは、文春の独自ネタである。これは、安倍官邸へ衝撃を与えただけではなく、朝日新聞と産経新聞という大手メディアの記者たちの、取材対象者との距離感がデタラメだということも白日の下に晒した。

 今の政権の悪辣さと、それを助長しているメディアの大罪を、まさに絶妙のタイミングで公表した文春の功績は、長く称えられるであろう。

 今回のスクープで、文春は完売したそうだから、二重、三重の意味で、目出度いことである。

 もう、現代やポストはいらない。文春だけあれば、新聞さえもいらない。どうだろう、文春は、大きなスクープのある時は、1冊1000円でも売れると思う。一度試してみたら?

 さて、早速そのスクープを紹介しよう。

 安倍首相が何としても通すと意地を張り、ツイッターをはじめとする多くの世論の反発も無視して、強行採決寸前までもっていった「検察庁法改正案」を断念したのは5月18日であった。

 小心な安倍は、弱みを見せることが大嫌いな男だ。その安倍がなぜ土壇場で、世論に屈したかのように翻意したのか。その理由が、今日発売の文春を読んでわかった。

 “安倍政権の守護神”といわれ、安倍が法を捻じ曲げてでも検事総長に据えたかった黒川弘務東京高検検事長(63)が、コロナ自粛の最中の5月1日に、産経新聞と朝日新聞の記者たちと「賭け麻雀」をしていたと報じたのである。

 その件について、文春が黒川を直撃したのが5月17日(日曜日)だった。無言を貫いた黒川から官邸に報告が上がったのは、その直後だったはずだ。安倍と黒川と親しいといわれる菅が話し合い、改正案を今国会で無理矢理成立させれば安倍内閣は持たない、そう判断したのであろう。

 一連のコロナ報道ではやや精彩を欠く文春だが、さすが文春砲は威力満点である。

 黒川は以前から超がつくほどの麻雀とカジノ好きで知られていた。文春によれば、「今度の金曜日に、いつもの面子で黒川氏が賭け麻雀をする」という情報が4月下旬に、「産経新聞関係者」からもたらされたという。その人間はこうもいったそうだ。

「産経の社会部に、元検察担当で黒川氏と近く、現在は裁判担当のAという記者がいます。彼が一人で暮らすマンションが集合場所です」

 隅田川のほとりにあるマンションの5階がA名義の部屋。そこに夜7時半、黒いスーツにノーネクタイ、マスク姿の黒川が、「あたりを軽く警戒しながら、慣れた足どりでエントランスへ入り、オートロックを通って上階へと昇っていく」(文春)

 それから約6時間半後の午前2時ごろ、玄関に黒川と2人の男が現れた。待機していたハイヤーに黒川と1人の男が乗り込む。文春が追跡する。目黒区内の黒川の自宅前で黒川が降り、もう一人はハイヤーで走り去った。

 いったん自宅へ入った黒川は、ゴミ袋を抱えて出てきて、また家に入っていった。時刻は午前2時20分になろうとしていた。

 文春は、7~8年前に黒川をよく乗せていた元ハイヤー運転手にも話を聞いている。彼によると、記者と一緒に乗り込み、記者があの手この手でネタを取ろうとするが、黒川はのらりくらりとして、なかなか肝心なことはしゃべらなかったそうだが、「この間韓国に行って女を買ったんだけど」という話はしていたという。

 黒川を送ると記者が、「ある程度負けてあげないといけないんだ」とぼやき、「今日は10万円もやられた」ともいっていたそうだ。

 賭け麻雀に接待ハイヤー。この男は検察官がつけるバッジ「秋霜烈日」の意味が理解できなかったのであろう。

 東大法学部を出て83年に検事任官。東京地検特捜部に配属され、その後、法務省に異動し、官房長、事務次官になり、第二次安倍政権から約6年間、安倍官邸から重用される。

 だがその間、小渕優子経産相の政治資金規正法違反事件では元秘書だけの立件で終わり。甘利明経済再生担当相の口利き疑惑では、現金授受を本人も認めたにもかかわらず、関係者全員を不起訴。さらに18年に森友事件が起きるが、関係者全員を不起訴にするなど、ソフトな物腰とは裏腹に、権力側の走狗として働き続けてきたのである。

 それが権力者に「ういやつ」だと気に入られ、安倍たちは“違法”に定年延長してまで、黒川を検事総長に据え、自分たちを守らせようと企んだのだ。

 悪事が露見することを恐れるあまり、黒川という人間の本性を見抜くことができなかったのである。

 5月21日、黒川は法務省の聞き取り調査に対して、賭けマージャンをしたことを認め、辞任すると表明した。当然だが、黒川の辞任だけで終わらせてはいけない。朝日新聞DIGITAL(5月21日 10時45分)は、

「退任が決まっても『政治と検察』をめぐる問題は一件落着とは言えない。黒川氏の定年延長の法的根拠の疑問は残ったまま。今国会での成立を見送った検察庁法改正案への懸念も消えず、政府が説明責任を尽くさなければならない状況は変わらない」

 と報じているが、私は、黒川と賭け麻雀をやった産経新聞と朝日新聞の記者たちも、説明責任を果たさなくてはならないはずだと考える。

 産経のA記者とは別の男は、司法担当が長く、今年初めまで司法クラブのキャップを務めていて、2009年には産経新聞司法クラブ名義で『検察vs.小沢一郎』という本を出している。

 今一人の朝日新聞の人間は、元検察担当記者で、特別報道部のデスクを務め、現在は経営企画室にいるという。

 文春の取材に産経の元司法クラブキャップは、会社を通せば、私たちも報道機関だから聞かれたことにはちゃんと答えるといいながら、広報部は「お答えしません」と、報道機関とは思えない応対。

 朝日新聞は、21日朝刊の第二社会面で、「本社社員も参加 おわびします」と書いている。だが、金銭を賭けていたかどうか調査し、適切に処理するとはいうが、「勤務時間外の社員の個人的行動ではありますが」と逃げの姿勢が見え見えである。

 読売新聞の渡辺恒雄主筆が自慢そうにいうように、相手の懐深く入らなければ大きなネタは取れないというのは、私にも少しは理解できる。だが、取材対象となれ合い、国民が自粛を強いられている中、国民の大多数が「おかしい」と批判している法案に深く関わる人間と賭け麻雀するのは、時間外であろうと、報道に携わる人間に許されるはずはない。

 黒川と長年の付き合いがあろうとも、正義が安倍や黒川にないことが誰にも明らかな今、黒川との縁をぶった切ってでも、国民の知る権利にこたえる義務も責任も、彼らにはあったはずだ。

 取材者というのは、取材相手にのめりこみすぎてはいけない。それが鉄則だ。その人間と本当に親しくなりたかったら、仕事を辞めて、つきあえばいい。

 文春の記事を読んで、黒川という男が権力とギャンブル好きの凡庸な男だということはよく分かった。だがそれよりも項垂れたのは、新聞社という組織と、そこにいる人間たちが、ジャーナリズムが果たさなければいけない役割を忘れ去り、国民の知る権利など顧みることなどないという無残な現実であった。

 文春の発売翌日の5月22日、黒川弘務が東京高検検事長を辞した。当然懲戒だと思っていたが、訓告で退職金は払われるそうだ。

 テレビで何度も流される黒川の顔を見るたびに、なぜ、こんな風采の上がらない男が、検察のトップにまで上がっていけたのだろうと、思わざるを得ない。

 朝日新聞は今朝(5月22日)の社説で、この問題に触れ、自社の社員が参加していたことを詫び、「社員の行いも黒川氏同様、社会の理解を得られるものでは到底なく、小欄としても同じ社内で仕事をする一員として、こうべを垂れ、戒めとしたい」としている。

 朝日に産経新聞広報部のコメントが載っている。「相手や金銭の多寡にかかわらず賭けマージャンは許されることではないと考えます」としているが、この中の「今後も取材源秘匿の原則は守りつつ」という文言が気に入らない。

 朝日も昨日のお詫びの中で、「勤務時間外の社員の個人的行動ではありますが」と、「逃げ」をうっていたが、新聞記者(元社員も含める)という職業は、ここまでは取材、ここからは個人の自由な時間だから、何をしてもいいということにはならないはずだ。

 ましてや、黒川という渦中の人間とコロナ自粛の中で「賭け麻雀」をやるのだから、個人的行動だから「お咎めなし」でいいはずはない。ジャーナリストとしての自殺行為で、懲戒免職に相当すると、私は思う。

 私にも覚えがあるが、メディアは、都合が悪くなると「取材源の秘匿」で逃げることがよくある。だが、ジャーナリズムとしての矜持があるのなら、黒川検事長と自粛を無視して賭け麻雀していた自社の記者を解雇するぐらいのことをすべきではないか。

 彼らが、黒川について「ヨイショ」ばかりではなく、批判的な原稿を書いたことがあるのか。朝日と産経は、それも調べ上げて、公表するべきである。

 この問題は、黒川にばかり焦点が当てられ、記者と元記者の取材者としての「歪み」が見逃されているのは、私としては納得いかない。(文中敬称略)

【巻末付録】

 今週は現代がお休み。

 ポスト。「ハイレグが日本一似合うグラドル総選挙」「YUME油愛可奈 夢のようなハダカ」「日本一の豊乳美女アナ 塩地美澄」。あまり見るべきものなし。

 それよりも、サンデー毎日の巻末グラビア、「生き方も健康法もシンプル・イズ・ベスト」に出ている由美かおるがいい。元祖・美魔女といわれるだけのことはある。

 顔も往時と変わらないし、美脚も健在。奇跡といってもいいだろう。一度見たほうがいい。

 

 

元木昌彦(編集者)

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

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最終更新:2020/05/26 18:00
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