世界は映画を見ていれば大体わかる#2

片言で「ワタシハ トランプ」と語る詐欺発生!「クヒオ大佐」ほかハラハラ詐欺師の心理を知る映画たち

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写真/GettyImagesより

「トランプ前大統領の名を騙り詐欺」というニュースが飛び込んできたので何事かと思った。

 国際保護の保険をキャンセルする手続きに、60万円が必要といって無職男性から現金をだまし取った容疑で逮捕された男。片言の日本語で、「私はドナルド・トランプ」だと言い張ったという。

 そんな話に騙されるわけないだろと思いきや、引っかかった人がいるんですねえ。

 詐欺というテーマは映画の題材としてよく取り上げられる。

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モネ・ゲーム』(U-Nextより)

 まず『モネ・ゲーム』は、キュレーターの主人公が横柄で人使いの荒いボスに一泡吹かせようとモネの贋作に大金を払わせようとする。「悪知恵は働くものの大胆さには欠ける」と周囲に評価されている主人公はやることなすこと裏目に出てしまう。自分には相手を手玉に取る能力があると思い込んでいるがそうではないわけだ。ドジっぱなしの彼が最後に大逆転するクライマックスは痛快の一言。ドナルド・トランプがらみのオチがあって思わぬ偶然にニヤリ。

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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(U-Nextより)

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は実在の詐欺師の自伝を元にした作品だ。

 レオナルド・ディカプリオが演じる主人公フランクは17歳の時、両親の離婚にショックを受け実家を飛び出す。誕生日プレゼントに父親からもらった小切手で生活をし、やがて偽造小切手を作り出す。稚拙な手段の小切手詐欺はすぐに通用しなくなる。するとフランクはホテルで華やかな生活をするパイロットに憧れ「パイロットになる」ことを決意。といっても訓練を受けたりするわけではなく、パイロットに「なりすます」のだ。

 制服を手に入れ学生新聞の取材と称して元パイロットから聞き出した情報を元に偽パイロットに成り果せた彼は銀行で給料小切手を換金。働いていないのに給料をゲットという夢のような身分を手に入れるフランク。航空会社の制服を着ている、というだけで誰も彼を疑わないのだ!人は見た目が9割とはこのことか。

“「正直者は何も恐れず」僕は何も恐れません”
と父親に充てた手紙に書いたように恐れるものがないフランクの詐欺はエスカレートする。デッドヘッドという業務中の移動のために飛行機に乗れる制度を利用して他社の飛行機に何食わぬ顔して乗り込む。パイロットどころか社員ですらないのに。

 その後は医者の免許もないのに緊急病棟に専用オフィスを構えたり、血を見るのが怖いので今度は法律関係に鞍替えだと検察官助手になったりする。10代の未成年のやることにしては大胆不敵などというレベルではない。騙す方も大概だけど、騙される方も騙される方というか。結局彼はFBIに逮捕されるのだが、その後は偽装小切手を見抜くプロとしてそのFBIで活躍しているという。調子よすぎる人生にもほどがある!

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クヒオ大佐』(U-Nextより)

 「アメリカ空軍パイロットでカメハメハ大王の末裔で、エリザベス女王の遠い親族」を騙って結婚詐欺を働いていたという男性詐欺師をモデルにした『クヒオ大佐』はトランプ前大統領の名前を騙るよりも大胆で、フランクよりも長く活躍(?)した。

 詐欺を働いたのは70~90年代なのだから。カメハメハやエリザベス女王の親戚だと言って信じる人がいるのことが驚き(だからこそ映画にまでなる)。この映画は他の2作品と違って騙される側の心理が描かれている。ある女性はクヒオ大佐の経歴や素性に胡散臭いものを感じていながらせっせと彼に金を貢いでいたというのだ。

 彼女たちにとって日常は退屈すぎて、あまりに華麗すぎる経歴の男に嘘と思いながらも身を任せてしまう。

 世の中にはカメハメハ大王の末裔や片言の日本語を話すトランプ元大統領を信じる人間がいるぐらいだから、嘘をつくときは大胆に、騙されそうな人を選べということか。

 双方の心理が理解できる以上の作品は、U-NEXTで絶賛配信中。トンデモ詐欺の被害者にならぬように映画で勉強しておこう。

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2023/02/24 11:51
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