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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.631

“セックス史観”で日本社会を見つめた大島渚監督 『戦場のメリークリスマス』『愛のコリーダ』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

国家が揺れ動く中で、むきだしとなる人間の本能

定(松田英子)が起こした事件は、「二・二六事件」と同じくらい日本中を震撼させる。

 大島監督が終戦を迎えたのは、13歳のとき。思春期の大島少年は、天皇や御国のために命を捧げよと叫んでいた大人たちが、敗戦と同時に態度を一転させたことに怒りを覚えた。大島少年はやがて映画監督となり、『絞死刑』(68)で死刑制度と在日朝鮮人問題、『少年』(69)で戦後の貧困&児童問題、『儀式』(71)で個人を抑圧する家族制度、『夏の妹』(72)で本土復帰を果たした沖縄との間に残る軋轢……と日本社会の問題点や矛盾点をモチーフにした映画を撮り続ける。国家、社会への怒りが、大島監督のアイデンティティーだった。

 大島監督の代表作『戦メリ』も『愛のコリーダ』も、どちらも性的衝動という人間が持つ根源的な本能に基づき、転換期にあった日本社会を鮮やかに切り取った作品だ。『愛のコリーダ』は「二・二六事件」が起きた昭和11年(1936年)。『戦メリ』はミッドウェー海戦で日本が大敗した昭和17年(1942年)。国家が大きく揺れ動く時代の中で、むきだしとなる人間の本能。大島監督ならではの“セックス史観”によって、むきだしになった日本人像と日本社会が描かれている。

 初公開時にはセンセーショナルさばかりが取り上げられたが、大島監督が描こうとしていたものを今なら読み取ることができるかもしれない。そして、日本社会にはまだ多くのタブーが残されている。

『戦場のメリークリスマス 4K修復版』
原作/ローレンス・ヴァン・デル・ポスト 監督・脚本/大島渚
出演/デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし、ジャック・トンプソン、ジョニー大倉、内田裕也
配給/アンプラグド 4月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(c)大島渚プロダクション
https://oshima2021.com

 

『愛のコリーダ 修復版』
監督・脚本/大島渚 製作/若松孝二
出演/松田英子、藤竜也、中島葵、松井康子、殿山泰司
配給/アンプラグド R18 4月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(c)大島渚プロダクション

長野辰次(ながの・たつじ)

長野辰次(ながの・たつじ)

フリーライター。著書に『バックステージヒーローズ』『パンドラ映画館 美女と楽園』など。共著に『世界のカルト監督列伝』『仰天カルト・ムービー100 PART2』ほか。

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最終更新:2021/05/25 19:07
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