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トリビュートEP『BIG-O DA ULTIMATE』リリース

「OSUMIは怒るだろうな」 ヒップホップ史に名を刻む〈SHAKKAZOMBIE〉の “OSUMI”追悼座談会

「OSUMIは怒るだろうな」 ヒップホップ史に名を刻む〈SHAKKAZOMBIE〉の OSUMI追悼座談会の画像1
写真/前原 猛

 オオスミタケシ氏が逝去という突然の訃報に胸を衝かれた1月下旬。昨今は「ミスター・ジェントルマン」のデザイナーとして広く活躍する彼だったが、やはりオオスミタケシと言えば、日本のヒップホップ史に名を刻むグループ〈SHAKKAZOMBIE〉のラッパー“OSUMI”であり、 “Big-O”である。たくましい体躯とは裏腹に、独自の感性で紡がれる詩的で繊細なリリック、排他的とも映った90年代の日本語ラップのシーンにおいて、SHAKKAZOMBIEが打ち出した楽曲の構成力や他ジャンルへの歩み寄りなどは、後のアーティストやクリエイターに大きな影響を与えた。

 今回はそんな音楽家としてのOSUMI氏の側面をフィーチャーすべく、7月7日リリースされたトリビュートEP『BIG-O DA ULTIMATE』の制作に深く関わった面々に集結してもらい、同氏を追悼する座談会を敢行。メンバーは、SHAKKAZOMBIEの相棒であり、現在は自身のブランド〈KAKOI〉をプロデュースするHIDE-BOWIE a.k.a. IGNITION MAN、長年SHAKKAZOMBIEのライブDJを担い、トリビュート盤のアドバイザーも務めたDJ HAZIME、そして収録曲「BIG BLUE(MURO’s KG REMIX)」に参加したNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのメンバーで、互いにソロとしても活躍するSUIKENとDABO。気心の知れた4人が制作を振り返りつつ、時に笑いながら当時の思い出を語り合う。きっとOSUMI氏も雲の上で笑ってくれているに違いない。

――まず、今回のトリビュート盤を制作することになった背景から教えてください。

HIDE-BOWIE a.k.a. IGNITION MAN(以下、I) 僕もOSUMIもヒップホップ以外のジャンルの友達との交流があって、toeのやまちゃん(※山嵜廣和氏。同グループのギタリスト兼ボーカリスト)から、OSUMIが亡くなったことの正式リリースが出た翌日に「僕の中のオーちゃん(OSUMI)はアーティストでありラッパーだから、彼が作った音源を残したい。何かできませんか?」って連絡があったんです。やまちゃんは建築デザイナーもやっていて、〈SWAGGER〉(※99年にIGNITION MANとOSUMIの両氏が立ち上げたファッションブランド)のお店のデザインもお願いしていたことや、OSUMIとは家族ぐるみの付き合いもあったので、「よし、やってみるか」と思ったのが最初のきっかけかな。そこからカッティング・エッジ(※SHAKKAZOMBIEが所属していたエイベックス傘下のレーベル)時代からのマネージャーのハッシー、古くからの付き合いでもあるHAZIMEやYANATAKEに連絡をして、「何かできないかな」と。

――訃報を知った際、みなさんはどのような心境でしたか?

DJ HAZIME(以下、H) 俺はSNSで知ったんだよ。例えが正確じゃないかもしれないけど、マイケル・ジャクソンが亡くなった感覚に近い。亡くなった実感が沸かず、正直今でもない。3月末のお別れ会にも行ったけど、まだ実感がない状態。

SUIKEN(以下、S) 俺はNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのグループLINEで知った。ちょうどソロの制作で動いてた時期で、OSUMIくんには「Checkmate Pt.2-Double Check」のPVにEL DORADO/KODPのメンバーとして出てほしかったんだよね。前作「TOKYO MONOGATARI」が出たときに「今度ご飯行こうよ」って話してて、ホントいつでも行けると思ってたくらいだったから。

DABO(以下、D) 俺も同じグループLINEで知ったね。HAZIMEと一緒でまったくリアリティがない。今でも不思議な感じ。

――OSUMIさんが亡くなったことで、こうして再びみなさんが集まるきっかけを作ってくれたとも言えると思うのですが、その作品を『BIG-O DA ULTIMATE』を命名した経緯というのは?

I それはハッシーのアイデア。彼女はマネージャーで裏方でもあるから、内側の人間しかわからない存在ではあるんだけど、当時のSHAKKAZOMBIEを担当していて、彼女以上にSHAKKAZOMBIEを愛してくれている人間はいないからね。実は作品を作り上げる上で「ゴールをどこに設定するか?」って考えたときに、「ハッシーが喜ぶかどうか?」という考えはスタートからここに行き着くまで何もブレていないんですよ。彼女が「よし」と言ってくれる作品は間違いのない作品になるわけだから。

S (この記事を読んでる人は)「誰?」って思うかもしんないけど、彼女の尽力あってこそのトリビュート盤だからね。

I 「どんな作品にするか」っていう方向性を決める、「どの曲を選んで、どんなメンツでやるか」とか、約2カ月間の間に3回のマジゲンカをしたくらいです。

――そこにハヂメさんが入ることで、調和を保ったということですか?

H 俺はSHAKKAZOMBIEが関わってきた人たち、OSUMIくんの人間関係、選曲やフィーチャリング、リミックスをお願いするプロデューサーの大枠を提案した形だね。

I そのひな形をアレンジしながら進めていって、実現できなかったこともあるけど、ベースはHAZIMEに作ってもらいました。

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――作品には往年のSHAKKAZOMBIEとつながりのある面々から、次世代を担うラッパーまでが集結しましたが、この案というのは?

I それは僕がやりたいと思ったアーティスト。単に僕が好きなだけとか、SHAKKAZOMBIEやOSUMIと関わりのない人では思い入れも違うだろうから、敬意を持って臨んでもらえる人にお願いしました。例えばBIMに関しては、7~8年前だったかな、渋谷を歩いていたら「HIDE-BOWIEだ!」って声をかけられたことがあったんだよね。彼、童顔だからさ、「どうした僕? お父さんがSHAKKAZOMBIEのこと知ってるのかな?」って返したら、「僕が好きです! SHAKKAZOMBIEが好きです!」って言われたことがあって。それがずっと印象に残ってたんだけど、その子がラッパーとして活躍していると。そんなふうにSHAKKAZOMBIEやOSUMIを好きでいてくれるアーティストやプロデューサーに参加してもらった形ですね。

――SUIKENさんもDABOさんもオファーがあって二つ返事で快諾したと聞いています。

D ニトロのメンバーがSHAKKAZOMBIEと関わり始めた時期って、ほぼみんな同じなんだよね。まだ俺らがデビューしていないときに地方に連れていってもらったり、レコーディングスタジオに行けば焼肉のお弁当が食えたり……音楽業界の甘い汁を吸わせていただきました。というのもありつつ、「ラップでお金を稼げる。生活できる」というリアルを近くでわかりやすく見せてくれたのがSHAKKAZOMBIEだったんですよ。好きなことで成功している人たちの象徴。寿司と焼肉しか食ってるところしか見てなかったもん。なので、超砕けた言い方をすると、OSUMIくんは憧れの先輩で、やりたいことを形にしながら、しかも一歩先を行ってた人。SHAKKAZOMBIEはまぶしい存在だったわけですよ。なので今回参加した曲は、そんな気持ちを胸にリリックを書きました。

S 俺はたぶんニトロの中でも一番かわいがってもらったと思う。「龍宮」(※96年にSHAKKAZOMBIEがオープンした原宿の居酒屋)でバイトさせてもらったし、いろんなレコード会社の人も紹介してもらった。音楽はもちろん、メシにも連れてってもらって、HIDEくんとOSUMIくん、TSUTCHIEくんの3人には音楽のことだけじゃなく、遊び方もいろいろ教えてもらった。そんな感謝の気持ちがあって、俺たちが参加した曲が「BIG BLUE」だったから、出だしの「そういえば」に合わせた振り返る内容のリリックを書いたんだよね。当初のミーティングで「みんなで録るから16小節は長いかもしれないから12(小節)でいいよね」とか言ったの、俺。なのに、いざ書いたら12じゃまとまらない。結局当日まで言えず、スタジオで言って怒られないかなーとか思いつつ。

I で、なかなかまとまんない。でも、僕が20(小節)だったから減らして(SUIKENのバースを)16にしようって話になって。

S ヨシテルくん(MACKA-CHIN)は「え、俺12でまとめてきたんだけど! なんか俺だけ中途半端じゃない!?」ってなっちゃって。

I DABOも16で、トラ(GORE-TEX)は12+4。この数字が意味するのは聴いてもらったらわかります。今までにないトラが聴けるのは間違いないからね。

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