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『スイング・ステート』くせ者司会者ジョン・スチュワートがアメリカ選挙システムを強烈風刺!

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『スイング・ステート』

 2020年、共和党のドナルド・トランプと民主党のジョー・バイデンが争ったアメリカ大統領選挙は、新型コロナウイルスの影響もあり、郵便投票を取り入れて大混乱を招いたことで、かつてない長期間に渡る選挙戦となった。

 日本でもその様子は連日報道され、日本人がここまで感心を示した大統領選も珍しい。アメリカの政治に感心のない人でも、票取りゲームのようなアメリカ選挙の仕組みと見て、まるでエンターテイメントのように楽しんでいた人も少なくないだろう。

 アメリカの選挙システムは、それぞれの州に人口に応じた「選挙人」が設定されており、その州で勝った政党に、その選挙人の数が加算されていくというもの。そのため、2016年の大統領選でも、国全体の得票数はヒラリー・クリントンが6420万票に対して、トランプは6220万票と票だけならトランプの方が200万票も少ないが、選挙人としてはトランプが74票もリードしている。

 つまり選挙人の多い州で勝てるかどうかが、選挙を大きく左右する。

 そんなアメリカ選挙システムの根本的な問題点を風刺した映画『スイング・ステート』が2021年9月17日から公開された。

□ストーリー
民主党ヒラリー陣営の選挙参謀ゲイリー・ジマー(スティーヴ・カレル)は、農村部の票を取り戻す秘策として、YouTubeで話題の人物を田舎の町長選挙に立候補させる。すると共和党は、対立候補にゲイリーの宿敵トランプの選挙参謀フェイス・ブルースターを送りこんできた。その日から、町長選をめぐってゲイリーVSフェイスのバトルが勃発。やがて民主党と共和党の巨額を投じたプロモーション、妨害行為、町民買収など事態は泥沼化していく……。

赤いアメリカと青いアメリカ

 アメリカは多民族国家。同じマイノリティがコミュニティのように集まっていることもあり、州によって宗教意識が強かったり弱かったり、富裕層が多かったり少なかったり、LGBTや人種問題についても多様な意見が交わりあったり反発したりと、一概に「アメリカ」とひとつの国にまとめることは、決してできない国だ。

 どちらの政党の支持者が多い州かを色分けした「赤い州、青い州」という表現もある。これは赤い州=保守派の共和党が強い州、青い州=リベラル派の民主党が強い州といったように、州を赤と青で色分けしているのだ。

 例えばシカゴのあるイリノイ州では、奴隷制度撤廃後、多くのアフリカ系アメリカ人が移り住んだこともあって、今ではヒスパニックなども含めると、非白人の人口の方が上回っていて、リベラル派を推す者が圧倒的に多い。

 一方、キリスト教徒の多いインディアナ州では、人工中絶や同性愛に対して極端に厳しい状況。映画『ザ・プロム』(2020)の中でも、「ここはアメリカだ」というセリフに対して、「いいえ、ここはインディアナ州」と答えるシーンがあった。

 このように州によって、宗教や人種、マイノリティなどに対しての考え方も全く異なってくる。

 しかし、選挙によって揺れる州がある。それが「スイング・ステート(激戦州)」だ。

 16年の選挙では、スイング・ステートと思われていなかった「ラストベルト(さびれた工業地帯)」に属するミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシン州が注目を集めた。今まで民主党支持を掲げていたが、この年の大統領選挙では、共和党が勝利しており、人々は国に「変革」を求めていることが浮き彫りになった。

 本作中では、17年のジョージア州下院選をモチーフとしながらも、スイング・ステートとラストベルトに位置するウィスコンシン州を舞台とすることで、より国民の意志や公約の重要性よりも、アメリカの選挙システムが重要視される現実のあり方を風刺として、たっぷりで描いてみせた。

ブラピ率いるPLAN Bの攻めた映画製作

 制作は今までにも『それでも夜は明ける』(2013)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2016)『バイス』(2018)など、アメリカの偉い人たちが嫌がるような題材を積極的に扱ってきていることでも知られる、ブラッド・ピット率いる「PLAN B」。だが、より特徴的なのは、16年にわたりコメディ・セントラルの風刺ニュース番組の司会を担当した、ジョン・スチュワートが監督・脚本・製作を務めていることだ。

 ジョンは『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)『アジャストメント』(2011)など多数の映画に本人役で出演することも多いほど、国民的に知られている、くせ者司会者兼コメディアンだ。

 14年には、イラン系カナダ人のバハリ氏が、2009年に大統領選挙を取材するために渡航したイランで罪状もなく逮捕され、118日間にわたり身柄を拘束された体験を元に映画化した『ローズウォーター』で長編初監督デビューを果たしたが、残念ながら日本では未公開。今作が初めて日本で公開される長編監督作品となる。

 アメリカのコメディは日本と違って、バラエティやお笑い番組でも日常的に政治をネタにしている。『サタデー・ナイト・ライブ』や『マッドTV!』に関わっていたジョーダン・ピールやアイク・バリンホルツ、ウィル・フェレルなども映画製作に関わる際には、政治ネタが入ることも多く、「笑い」と「政治」は常に隣り合わせ。その中でも極端に笑いに向かう作品もあれば、政治色が強い作品もあるが、今作は「絶妙!」という表現が相応しい。

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