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世界は映画を見ていれば大体わかる#21

カルロス・ゴーンの逃亡シーンが映画よりもスリリング! 『カルロス・ゴーン 最後のフライト』がU-NEXTで配信

保釈から逃亡、全てを失っても彼が得た幸せとは?

 二度目の保釈を勝ち取るゴーンには厳しい制限が課せられる。ゴーンには再婚したキャロル夫人がいるのだが、夫人と会ってはいけない、電話もメールのやり取りもしてはならない、会ってよいのは弁護士だけ。パソコンもスマホも所有してはいけない。ガラケーひとつを渡され弁護士としか話せず、通話履歴はすべて検察に提出させられる。

 容疑を否認しているゴーンの裁判は長期にわたることが予想され、有罪となった場合は最大15年の懲役。逮捕と、その後何日も保釈が認められず、聴取に弁護士の同席も認められない。さらに起訴されたら99%有罪と言われる日本の司法の現実を目の当たりにしたゴーンが逃亡を決意するのも無理はない。

 逃亡シーンが最高のクライマックスになるのだが、それはぜひ本編を見て確認してほしい。下手な映画よりスリリングだから。特に空港の職員がしょうもないジョークを言うあたり傑作だし、ズバリ手荷物検査がいいかげんすぎる。

 無事逃亡を成功させたゴーンは自分のルーツでもあるレバノンで暮らしている。仕事に奔走し、フランスにも日本にも帰属する人脈をつくらなかったゴーンは双方の国から冷たい仕打ちを受けた。「フランス人ではないから」「日本人ではないから」という理由で。人種差別とナショナリズム、それがこの事件の「黒幕」ではないか。

 ゴーンは司法の追求を逃れ、自由を手に入れたがすべての窓に鉄格子が入れられ、監視カメラに囲まれた自宅で暮らしている。これじゃあ日本で入れられてた東京拘置所と同じだよ!外出時には必ず屈強なガードマンがついてるし。

 一生逃亡犯扱いになったゴーンだが、刑務所の独房では得られないものがひとつある。それは愛する妻との生活だ。それはゴーンが逃亡犯になってまでも得たかった、たったひとつのものなのだろう。

……で終わったら綺麗な話なんだけど、最後にはゴーンの「相棒」として罪に問われているグレッグ・ケリー元代表取締役の姿が映される。彼は共犯者として逃亡することもできず、裁判に臨んでいる。

「つまり――私は巻き添えを食った」

 9月29日の論告求刑で検察は懲役2年を求刑した。ちょっとゴーンさん、彼の逃亡も手伝ってあげたら?“やっちゃえNISSAN”のスピリットで

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2021/10/06 19:00
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