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現代のお笑い番組への批評を含んだ『志村けんとドリフの大爆笑物語』

志村けんさんの半生を追った前半のドラマパート

 このドラマは大きく前半後半に分かれていて、前半は志村さんの半生を追ったストーリーになっており、後半は実際に『ドリフ大爆笑』(フジテレビ系)で放映されていたコントを、役者が模写するといったもの。もちろん後半もドラマの一部分としてコントをしているのだが、僕はドリフターズのコントの素晴らしさを監督的に伝えたかったのではないかと思う。

 後半のコント部分はまた後で記すとしてまずは前半のドラマ部分からストーリーの冒頭、志村さんが入る前の荒井注さんがまだ所属していたときの「ズンドコ節」からスタートする。ドリフターズは元々お笑いが出来るバンド。この曲のスキャットの部分”ズンズンズンズンズンズンドッコ♪”の後ろで流れているリズムのカッコよさはハンパではない。このシーンで出来ればやってほしかったのは、当時の映像も混ぜていかりやさんから遠藤さんへ移り変わるなどの変化が見たかったところだ。

 そしてこの物語の主役・志村けんが登場するわけだが、ファンなら誰もが知っている、弟子入りする為にいかりやさんのアパートを訪ねるシーン。このエピソードが映像になっただけで顔がにやけてしまった。余談だが、当時で言うタレント名鑑のようなものには、タレントの住所が載っていたというのは驚きである。

 そして志村けんはいかりやを訪ねてから一週間後に奇跡的にドリフターズのボーヤ(付き人)になり苦労しながらも成長し、荒井の脱退を機に付き人から正式メンバーになり、みんなが知る活躍をしていく。

 ざっくりとした流れはこのような流れなのだが、全体的に思ったことはもっと切なさや悲しさがあっても良かったのではないだろうか。というのも志村さんが本来辛かったであろう部分や、悩んでいた部分などが意外と繊細に描写されておらず、暗くなりそうなシーンでわざと加藤さんとのおふざけシーンなど入れ込んだりしている気がした。

 “志村けんの物語”に暗いシーンはいらないという意図だったのかもしれないが、コント人間で笑いの事をずっと考え、なんでもお笑いに変える人間だったことなんて十分承知なのだ。だからこそ、このドラマには志村けんの切なさ、志村けんの悩む姿を期待したのだ。付き人時代は明るくても良い。それは志村さん自身が「付き人時代、ご飯が食べられないなどの辛さはあったけど楽しんでいた」とコメントしていたからだ。

 しかし正式メンバーになってから東村山音頭でお客さんに受け入れられるまでの1年近くは本当に辛く、毎日のように悩んでいたと各番組で言っているのだから、そこはもっと切なく、もっと苦しく、悩みぬいた末に立ち上がっていく志村けんが見たかった。

 キャスティングの良さもノスタルジーな時代背景も含めて感動する準備が出来ていたので、そこが少し残念に思えた。

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