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「旧統一教会とはどんな団体なのか?」“30年ぶり2度目”の週刊誌記事とその責務

山上容疑者母の半生に思う“信仰の価値”

 今週の第1位は、山上容疑者の母親の歴史を追った文春と新潮に捧げたい。生々流転。いいとこのお嬢ちゃんが、なぜ、統一教会などに騙されてしまったのか。その謎を解く幾分かの助けになる内容である。

 山上徹也容疑者(41)の母親A子(69)は、1952年9月、島根県庁で働く父と専業主婦の母の間に生まれた。3人きょうだいの長女として育った。

 だが彼女が中学2年の頃、当時、小学校5年だった弟が交通事故に遭って亡くなってしまったという。これが、A子にとって最初に経験した家族の死だった。

 中学を卒業後、彼女は進学校として名高い県立奈良高校へ進学。

 この頃、A子の父は定年を待たずして県庁を辞め、資本金200万円で建設会社を創業する。

「当初は東大阪に拠点を構え、ゼネコンの下請けとしてトンネル工事をメインにしていた」(建設関係者)

 時あたかも高度経済成長の真っ盛りで公共事業も盛んだったから、父親は会社の業績をぐんぐん伸ばしていった。

 そんな父が奈良市内の新興住宅地に一軒家を建てたのはA子が高校3年の頃だったという。広い庭にはゴルフの練習用の器具が置いてあり、シャム猫が鳴いている。絵に描いたような社長令嬢の暮らしぶりだったようだ。

翌年、A子は大阪市立大学の生活科学部に入学し、栄養科学を学ぶ研究室に在籍した。

「A子さんは土壌細菌の研究を熱心にしていて、ときには研究室に泊まり込むことも。一度のめり込むと周りが見えなくなるところがあり、それでいて性格はのんびり屋さん。管理栄養士の二次試験があった日に『夜になって日付を見たら今日だったのよ。だから受けられなかったわ~』と呑気に言っていたのを覚えています」(大学の同級生)

 卒業後は、神戸の小学校で栄養士として勤務していたが、大学卒業から3年後の春、25歳で父の会社に入社している。

 その頃、京大工学部出身の男性とお見合いをしたと知人は話している。

 彼の家は、母親は保険の外交員をやっていて、母子家庭で極貧だったそうだ。彼は大阪の名門府立・天王寺高校に進学するが、貧困を抜け出すための手段は勉強しかなかったようだ。

 京大時代は、後にテルアビブ空港乱射事件を起こして死亡する安田安之と麻雀仲間だったという。

 山上の伯父は彼の実兄にあたる。

 彼は京大の遺伝学教室に籍を置き、その後、東京に本社がある建設コンサルタント会社に就職し、大阪支店で働いていたが、結婚を機にA子の父親の会社に入社する。トンネル工事の現場監督として全国を飛び回ることになった。

 だが、伯父は、学究肌の彼には現場仕事が向いてなかったんやろうなという。もともと酒が強い彼は、次第に酒に溺れるようになっていった。

 同じ時期に、長男の小児がんが判明し、A子の母親も81年に亡くなってしまった。

 そうした身内の不幸が重なってA子は、その頃から統一教会とは別の宗教にはまり始めたという

 A子は家庭の外に救いを求めたようだった。

「宗教の集会があるからなのか、子どもらをほったらかして出かけてしまうこともよくあってね。幼い二人の子供がよく泣いとったわ」(近隣住民)

 そして結婚から5年後の84年末、夫は飛び降り自殺をしてしまった。そうしたことがあって、いつしかA子は別のより苛烈な宗教に惹かれて行ってしまうのである。

「統一教会に出会って、ビデオを見たら、涙が止まらなくなったのよ!」

 そしてこうつぶやいた。

「夫は病気ではなく自殺だったから。余計に傷ついたの。辛くて、辛くて…。でもその分、救われ方も大きかったの」

 そう同級生に語っていたという。

 伯父が嘆息してこういう。

「九一年に統一教会に入ったA子は、B(夫=筆者注)の生命保険を原資にして、入会とほぼ同時に二千万円、そのすぐ後に三千万円、そして三年後に1千万円を献金してしまっているんです」

 94年までのたった4年で合計6千万円もの大金をつぎ込んでいたというのである。

 山上はツイッターにこう綴る。

「オレが14歳の時(94年)、家族が破綻を迎えた。(略) 70を超えてバブル崩壊に苦しむ祖父は母に怒り狂った。いや絶望したと言う方が正しい。包丁を持ち出したの(は)その時だ」(2020年1月26日)

 父親が実の娘を刺し殺そうという地獄絵図が繰り広げられたのだ。

 それから2年後に父親が亡くなり、彼女は建設会社の代表取締に就任するが、会社の事務所と自宅を売り払い、それで得た4千万円も献金してしまったのである。

 現在はマンションの管理人をやり月収8万円ほどを得ているというが、献金は続けていて、今年の6月頃には韓国へ1泊2日で行っていたという。

 私は、信仰心がないからまったく理解できないが、何かを信じ込むというのは、統一教会のようなところではなくても、恐ろしいというか大変なものだなと思う。

 子どもなどよりも信仰している教祖のためにカネをつぎ込み、子どもたちがどうなろうと知ったことではない。もはや母親という資格はないが、彼女は、一生このまま“洗脳”が解けない方がいいのかもしれない。

 もし、正気に戻って自分が仕出かしたことの大きさを知ったら、これから生きていくことはできないだろう。

 こうした不幸をなくすにはどうしたらいいのだろう。統一教会だけがなくなればいいという話ではない。どうせまた同じような新興宗教が出てきて、こうした悲劇を繰り返すのであろう。

 信仰とは何のためにあるのだろう。自分だけではなく、自分の周囲の人間たちも幸せにしなくては、信仰する価値はないのではないか。しかし、そんな宗教がどこにある?

 現在も続いている「宗教対立」で戦争が起こり、多くの人が亡くなっている。私には、日本的な八百万の神という考え方が好きだ。道端の石ころでも信仰の対象になる。

 いい加減だが、人間というのは困ったときの神信心でいいのではないか。どうせいつかは死ぬ命。何かにすがらず、だが困ったときには「神様仏様」、それが人間なのだ。

 余命いくばくかの私がたどり着いた「安心立命」の境地とはこんなものだ。立川談志は「人生なりゆき」といったが、それに通じるものかもしれない。

 今回の事件は、凶悪なテロにばかり焦点が当てられているが、信仰とは何か、現代人に必要な信仰心とは何かについて、もっと深く論じられるべきではないか。私はそんなことを考えている。(文中敬称略)

※「週刊誌スクープ大賞」過去の記事
2022年7月19日

2022年7月12日

【巻末付録】

 まずは現代から。

「山本陽子 太陽のように眩しく、月のように妖しく」

 袋とじ「七瀬アリス 180度VR絶景ヌード」

 袋とじ「中川翔子 祭りだ! しょこたん」「宇野実彩子(AAA) 尖ったイイ女」

 袋とじ「橋本ありな 縛られて、奪われる」。この子はいいね! SNSのフォロワーが100万人突破というのは分かるな。

 お次はポスト。

 袋とじ「暑中シオパイ申し上げます 塩地美澄」。こちらは成熟したいい女だ。

「なをん。AI LOVE DOLL」「森咲智美 506万人を昂らせる女」

 袋とじ「新海咲 シン・全裸バタフライ」「森千里 シン・全裸社交ダンス」

 両誌ともに工夫を凝らし、魅力的な女性を揃えている。いい勝負だが、タッチの差で、橋本ありなのいる現代に軍配!

 

元木昌彦(編集者)

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

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もときまさひこ

最終更新:2022/07/26 19:00
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