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信州大Gが新型プラスチック合成成功と発表 脱炭素&ごみ問題解決に期待

文=鷲尾香一(わしお・こういち)

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 信州大学の研究チームは12月7日、頭痛薬の主成分であるアスピリンを原料にリサイクルが容易なプラスチックを合成することに成功したと発表した。脱炭素やプラスチックごみ問題の解決に向け、実用化が期待できる技術だ。
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/news/docs/20221207_kousaka_press.pdf

 炭素-炭素二重結合の反応を利用して合成されるビニル系プラスチックは、無数の炭素原子が連結した主骨格を持っている。ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、発泡スチロールはビニル系プラスチッ クの代表格で、安価に大量生産できるため、プラスチック総生産量の7 割を占めている。

 これらビニル系プラスチックは炭素-炭素結合の切断方法が限られ、安定で分解しにくいため、環境分解できないことや原料物質を再生する上で課題になっていた。

 研究チームは19年に、炭素-炭素結合の切断を容易にする新しい分子構造を提案し、ビニル系プラスチックの高効率なケミカルリサイクルに初めて成功した。しかし、分解に数日間の加熱を要するなど実用化に向けた課題が残っていた。

 今回、ビニル系プラスチックが分解するメカニズムを調べ、強アルカリ性条件ではビニル系プラスチックが5分以内に完全分解することを突き止めた。

 また、ビニル系プラスチックと同一の原料からポリエステルを合成することにも成功した。ポリエステルは主骨格に酸素を含むプラスチックで、ビニル系プラスチックとは異なった性質を示す。例えば、ビニル系プラスチックは132度で、ポリエステルは60度で軟化する。得られたポリエステルを強アルカリ条件で処理するとすぐに分解して原料物質(酢酸、サリチル酸)を再生した。

 現在のプラスチックのリサイクルは、プラスチックを溶融して再成形・再加工して製品化するマテリアルリサイクルが主流となっている。だが、マテリアルリサイクルでは酸化・光分解による分子の変性や汚染による品質低下に対応することができない。このため、恒久的な資源再生は不可能だとされている。

 そこで、プラスチックを分子レベルで分解して化学的に再合成するケミカルリサイクルが期待されている。ケミカルリサイクルでは品質低下を招くことなく、恒久的に資源を循環させることができる。しかし、プラスチックの多くはリサイクルを前提に開発されたわけではないため、分解技術の開発が課題になっていた。

 今回の研究成果は,単一原料から多様なプラスチックのケミカルリサイクルを実現する画期的な発見で、「複数種のプラスチックを共通する原料から製造し、共通する原料に分解、再生する技術による効率的な資源循環システムは、脱化石資源やプラスチックごみの削減を実現する上で理想的なモデル」としている。

 さらに、プラスチックを合成する際の反応温度を調整するとビニル系プラスチックとポリエステルの構造が折衷したプラスチックが製造できることも見出した。これらのプラスチックは強アルカリ処理により分解し、原料物質である酢酸とサリチル酸を再生する。つまり、アスピリンから化学構造や性質が異なる多様な循環型プラスチックを誘導できることが明らかにった。

 アスピリン(アセチルサリチル酸)で、1897年にドイツ・バイエル社が開発した世界初の合成医薬品。現在でも消炎鎮痛剤・頭痛薬として広く使用されている。

 今回の研究成果は22年12月6日付のPolymer Chemistry誌(英国王立化学協会)13巻 47号に論文として掲載された。

 プラスチックごみは海洋汚染など様々な問題を引き起こしており、その解決が急務だ。今回の技術が実用化されることにより、プラスチックごみ問題が解決に向け進展することを期待したい。

 

 

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」ほかで執筆中。

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Twitter:@tohrusuzuki

最終更新:2023/01/10 07:00
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