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R-1ヤラセ疑惑が増幅した裏事情…「470点」の絶妙さと田津原理音のカードネタ

R-1ヤラセ疑惑が増幅した裏事情…「470点」の絶妙さと田津原理音のカードネタの画像1
田津原理音Twitter(@pen_my)より

 例年に比べて話題が豊富だった「R-1グランプリ2023」。昨年のM-1グランプリ王者、ウエストランドさんによる「R-1グランプリには夢が無い」発言を皮切りに、コットンのきょんさんが見せたファーストステージのネタへ対する物議や、同じくきょんさんのファイナルステージのネタに対して、「音声を多く使い過ぎて、一人芸と言えるのか」問題、そして極めつけはチャンピオンは元々決まっていたのではないかという「ヤラセ疑惑」だ。

 今回は元芸人目線でR-1グランプリ2023における『ヤラセ疑惑』を分析していく。そもそも今大会がなぜ『ヤラセ』と言われてしまったのか。それはトップバッターである「Yes!アキト」さんの採点が発表されるシーンでとある問題が起きてしまったのが原因だった。「Yes!アキト」さんに対する審査員たち各々の点数が披露され、本来なら合計点「456点」でスタジオの巨大モニターの1位の欄に表示されるはずだった。

 しかし、一瞬だけ7番目に出番を控える田津原理音さんの名前と「470点」という得点がモニターに映し出されてしまったのだ。この時点では当然まだ田津原さんはネタを披露しておらず点数など表示されるはずが無い。視聴者は一瞬戸惑ったが、何かの手違いだと思い、さほど気にもとめなかった。しかし問題だったのは、田津原さんがファーストステージで披露したネタに対して、先ほど映し出された「470点」という点数が実際に付けられてしまったのだ。これを受けて、この「470点」という点数は元々決まっていたのではないかという声がSNS上で上がってしまい、『ヤラセ疑惑』が浮上したという訳だ。

 この件に対し、「R-1グランプリ」の公式Twitterが下記のような謝罪文をツイートした。

 「3/4(土)19時放送「R-1グランプリ2023」の審査得点発表の際、リハーサル時に入力した仮のデータが制作側の不手際により誤表示されました。全出場者の得点は審査員の厳正な審査によるものです。経緯は番組公式HPで報告いたします。視聴者、関係者の皆様にご迷惑をお掛けし謹んでお詫び申し上げます」

 この後公式HPの方でも長文で謝罪をしていたが、どうやら原因不明のシステムエラーのせいでリハーサル時に使用していた仮のデータが残っており、その得点データをシステムが拾ってしまい、1秒以内の数フレーム、「田津原理音」さんの名前と「470点」という得点が表示されてしまったとのこと。リハーサルの際に仮で入力した得点の合計が「470点」であり、それが田津原さんの実際の合計得点と合致してしまったのは完全なる偶然らしい。

 ちなみにシステムエラーはこの部分だけではなく、3人目にネタを披露した「ラパルフェ都留」さんの得点発表の際にも、審査員の合計得点とモニターに映し出された合計得点が違っており、これに関しては一部の審査員の得点が確定する前に確定処理を行ってしまったことが原因だと言っている。

 ちなみに公式Twitterのリプライ欄には今回の件は「ヤラセ」ではなく、システムエラーだと信じR-1グランプリを擁護する声が多く集まった。さらに複数の芸人もこの件にすぐさま反応し、審査員を務めた陣内智則さんはTwitterにて「R-1の審査にヤラセ疑惑!?あんな身を削りながら審査したのに!?そんなわけねーじゃん。でも話題になることはええことやね」とツイート、そして過去に司会をしていた元雨上がり決死隊の宮迫博之さんも「分かります。リハーサルで仮にこんな感じになりますで点数を出すんですが、その画像がたまたま残ってただけ、ただの偶然です」とコメントした。

 そして陣内さんと同じく審査員を務めたマヂカルラブリーの野田クリスタルさんは、自身のラジオにおいて「いろいろ言いたいことはあるんですけど……今回に関しては、ヤラセを疑う人は何も悪くないと思う」と発言。「470点」という得点がリハーサルと本番で合致してしまったことはもっと炎上しても良かったと吐露した。

 しかし「『R-1』にあの5人の審査員をヤラセさせる力はない。モノを持っていない」とヤラセでは無いと断言した。

 このように番組や芸人サイドは今回の「ヤラセ疑惑」に対して完全否定しており、視聴者の方もそれを信じているようだが、果たして本当にシステムエラーでリハーサルの得点が発表されてしまったのだろうか。

 たしかに何かしらのエラーが起こったのは間違いないが、470点という点数の合致があまりにも奇跡的過ぎて、元芸人として見ても怪しさ満点だ。しかしこの「470点」というキリの良い数字が何とも言えない。確かにリハーサル時に仮で点数を入力することはあり、スタッフさんがキリの良い数字を入力することは多々ある。これがもし「469点」など中途半端な得点だったら疑う余地もなく「ヤラセ」だと思えるのだが「470点」はヤラセではない可能性が十分に考えられる数字なのだ。なのでこの点数だけでは何とも言えない。

 ヤラセではないという根拠のひとつに「審査員5人」がやらせをやる必要性が無いという部分。たしかに何のメリットもないし、やる理由もないように思えるが、やらないとは言えない。お笑い芸人は基本的に助け合いの文化であり、よっぽどのことでない限りスタッフの言うことを聞くという性質がある。なのでR-1グランプリに恩があったり、田津原さんと同じ事務所で、事務所に貢献したいなどの理由があり、自分用に提示された点数に納得がいくのであれば、そこまで抵抗なくヤラセに従う気がしてしまう。

 ちなみにこの大会のルールを踏まえると、審査員全員にヤラセをお願いしなくても、5名中3名が番組側の操作を承諾すれば、誰かを優勝させるなどたやすい事だ。そう考えると今回審査員たちの点数にバラつきがあったことも納得できる。

 そもそも皆さんが悪としている「ヤラセ」とは何か? 元々はメディア業界の業界用語で「メディアが作った虚偽の報道をすること。事実らしく見せながら実際には演出されたものであること」という意味で使われている言葉なのだ。つまり「ヤラセ」イコール「事実に見せかけた演出」ということであり、視聴者を楽しませるという前提で行うのであれば、多少行き過ぎても問題ないように思える。

 もちろん真実を報道するニュースなどのメディアにおいてはヤラセは悪という考えがあってしかるべきだが、漫才やコントなどの嘘の世界を披露してお客さんを楽しませるお笑いにおいて、今さら多少の嘘や演出があったところで何だというのだ。極端なことを言うと、お客さんが笑い、そして満足すれば嘘だろうが本当だろうがどちらでも良いのではないだろうか。

 もし今回の審査がヤラセだとして、一体なんの問題があるというのだろう。本当にヤラセだとしても、R-1グランプリ、はたまたテレビ業界自体がスターになる可能性を感じた「田津原理音」さんという芸人に白羽の矢を立て、大会を通じて一気にメジャー芸人に押し上げて、今後のお笑い界の発展を願ったというだけで、誰にも迷惑をかけていない。

 もちろん王者に選ばれなかった他の芸人は不服だろうが「運も実力のうち」という言葉があるように、今回王者に選ばれた田津原さんには他の芸人より運があったということで、実力の差が出たので仕方がない。

 とまあここまでヤラセ前提で話をしてきたが、これは全て僕の独断と偏見を踏まえた憶測でしかないので、ヤラセなのか真実なのかはわからない。つまりヤラセ疑惑は疑惑の範疇でしかないのだ。

 ただ一つ言えることは、真実であれ、嘘であれ、こんな疑惑が出てしまい優勝にケチが付いた田津原さんが本当に可哀相である。10年間努力してきてようやく実ったと思った矢先、疑われてしまうなんて、悲しすぎる。田津原さんは本当に面白かった。ちゃんと笑えるネタだった。しかし田津原さんが披露したオリジナルのカードゲームを開封するというネタは決して万人受けするネタではなく、ある一定の層にだけ刺さる仕様になっている。そのせいで余計にヤラセ疑惑を増幅させてしまった。

 今までのお笑い芸人はテレビでの活躍を目指すのが基本であり、その為にある程度万人受けするように努力してきた。しかし今はサブスクの時代。視聴者が取捨選択する現代において、田津原さんのようにある一定の層に刺さるのがサブスク時代を生き抜く芸人の正しい姿なのかもしれない。

 どんどん規制が厳しくなるお笑い界。果たして、いつ「面白ければなんでもあり」という素敵な時代が来るのだろうか。もちろん人道を踏み外した面白さは論外だが……。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/03/17 09:00
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