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プーチン政権批判のロシア高官が機中で突然死…不自然な緊急着陸のミステリー

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ロシアのプーチン大統領(Getty Images)

 G7(主要7カ国)の首脳たちがサミットのために広島に向かっていた頃、キューバの首都ハバナでは、ロシアとキューバの経済協力について話し合う2国間協議が行われていた。ロシアの派遣団は官民合わせて200人を超えるだろうという大規模な協議となったが、その帰路、協議に出席した1人のロシア高官が機中で急死した。この高官は生前、ロシアによるウクライナ侵攻を批判していたといわれ、謎の死として西側メディアの注目を集めている。

 死亡したのはロシア科学アカデミーを管轄するロシア科学・高等教育省のピョートル・クチェレンコ次官(46)。5月17日からハバナで開かれたロシアとキューバの経済フォーラムに、ドミトリー・チェルニシェンコ副首相らと出席した。協議を終えて19日午後8時36分、モスクワに帰るためロシアの情報機関の連邦保安庁が運航する政府専用機RSD392便でハバナを出発した。

 同機は途中、モロッコのカサブランカに立ち寄り、再びモスクワを目指したが、クチェレンコ次官が突然、体調を崩し重体となった。このため同機は、ジョージアとの国境に近いロシア南部の都市ミネラリヌイエ・ボードゥイの空港に緊急着陸した。医師が駆け付け、機内で蘇生治療を行ったが、クチェレンコ次官は死亡した。クチェレンコ次官の家族には、死因は心臓疾患だと伝えられたというが、公に対しての明確な説明はない。

 死亡が伝わった後、クチェレンコ次官がジャーナリストとの個人的な会話の中で、ロシアによるウクライナ侵攻を非難していたことが明らかになった。

 クチェレンコ次官と旧知の仲だったという独立系のロシア人ジャーナリスト、ローマン・スーパー氏(38)は、ロシアのウクライナ侵攻以降、身の危険を感じてロシアから出国しているが、出国の直前にクチェレンコ次官と、次官の執務室で面会したという。その際、クチェレンコ次官は「私がロシアを離れることは不可能だ。彼らは私のパスポートを没収している。このファシストによる侵攻後、そのロシアの次官に会うことを喜ぶ世界など、どこにもない」と話していたという。また、スーパー氏が暮らし向きについて尋ねると「抗うつ薬と精神安定剤を同時に服用している」と答えていたという。

 スーパー氏はモスクワ大学でジャーナリズムを専攻した後、ロシア国内でジャーナリストとして、またドキュメンタリー映画の監督として活動した。ロシア国内のほか西側の映画祭でも受賞経験がある。クチェレンコ次官とのやり取りは自身のメッセージアプリで明らかにしたが、会った具体的な日時については記していない。

 スーパー氏の話が真実だとすれば、クチェレンコ次官はプーチン政権にかなり批判的だったということになり、その死はミステリー性を持つ。さらにミステリー性を増幅させるのは政府専用機の飛行経路だ。

 航空機の追跡データによると、カサブランカからモスクワに向かって飛んだRSD392便は、緊急着陸したミネラリヌイエ・ボードゥイ付近の上空を一度通過し、北に約520キロ飛んでいた。そこからUターンするようにミネラリヌイエ・ボードゥイに向かった。

 緊急着陸を決めて進路を変えたのは、100万人都市であるボルゴグラードから南に120キロほどの上空だ。人口7万人ほどのミネラリヌイエ・ボードゥイと比べて、どちらの医療体制が充実しているかは一目瞭然だが、RSD392便はボルゴグラードではなく、遠くて、小さな都市を選んだ。

 ミネラリヌイエ・ボードゥイに緊急着陸したのは現地時間の20日午後10時40分。その頃ボルゴグラード周辺は曇りで、天候が荒れているということはなかった。

 死亡したクチェレンコ次官の妻は、ロシアで有名な目の不自由なシンガー・ソングライター、ディアナ・グルツカヤさん(44)だ。2人の間には15歳の長男がいる。グルツカヤさんは、ロシアが親ロシア系住民を守る目的で軍を送り込み、その後、一方的に独立を承認したジョージアのアブハジア出身。ソ連崩壊に伴う地域紛争に巻き込まれ、家族と共に難民キャンプ暮らしを余儀なくされ、その後、ロシアに移住した。

 歌手として成功し、ロシアの数々の音楽賞を獲得。2014年のソチ冬季五輪では、五輪大使として大会のPRに一役買った。そのソチ五輪の直後、ロシアはウクライナ領クリミア半島の併合を決めている。

 プーチン大統領のお気に入りのタレントであり、グルツカヤさんもたびたび、プーチン大統領を支持する発言をしている。プーチン政権の障害者政策の「広告塔」的な存在だとの指摘もある。

 緊急着陸し、クチェレンコ次官の死亡が確認されたミネラリヌイエ・ボードゥイはアブハジアの近くでもある。「謎の死」は政治的な広がりを見せるのか。

言問通(フリージャーナリスト)

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆

ことといとおる

最終更新:2023/05/27 09:00
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