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「宇宙人に襲われた」アマゾン先住民が訴え、金の違法採掘組織が少女誘拐か

「宇宙人に襲われた」アマゾン先住民が訴え、金の違法採掘組織が少女誘拐かの画像1
アマゾン熱帯雨林(「Wikipedia」より)

 アマゾンの先住民が「宇宙人から攻撃を受けた」と訴えている。体長2メートル以上で夜間に現れ、空中から住民を襲うという。15歳の少女が連れ去られそうになり、首にけがをした。治安当局が出動し捜査が続いているが、アマゾンで大規模な金の違法採掘を行う犯罪組織による犯行との見方を強めている。

 被害を訴えているのはペルー北部のアマゾンの熱帯雨林に住むイキツ族だ。アマゾン川上流の都市イキトスの西に広がるメイナス県アルトナナイ地区に居住するが、7月11日夜から「宇宙人」を目撃するようになった。

 住民によると「宇宙人」は銀色で地上1メートルぐらいの空中を移動する。頭が長く、目は黄色がかっており、丸い靴をはき、体長は2メートルを超えているという。住民は狩りに使う道具で反撃を試みたが、弾や矢が当たっても反応がなく、武器では撃退できないと説明している。米国の漫画「スパイダーマン」に登場する怪物「グリーンゴブリン」のようだと話す住民もいる。

 7月29日には、ここに住むイキツ族の15歳の少女が連れ去られそうになった。少女は抵抗し難を逃れたが、首を切られるなどして病院に運ばれた。イキツ族は女性や子供を守るために徹夜の警戒を続けている。治安当局に通報し捜査が行われているが、現場はイキトスからアマゾン川の支流を船で10時間ほどかかる地域で、十分な警備態勢がとれない。このためイキツ族は「子供も大人も、夜も眠れない」という。

 捜査当局は住民が撮影した写真や証言などから、アマゾンの熱帯雨林で大規模な金の違法採掘をしている犯罪組織が、ジェット・パックのような最先端機器を着用して飛行し、近代的な生活とは無縁な先住民を脅しているものとみている。

 中南米での地下資源の違法採掘は1980年代から本格的に始まり、現在ではブラジル、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビアなど主にアマゾンの熱帯雨林帯で行われている。日本では報じられる機会が少ないので、違法採掘は何人かが集まってコソコソやっているようなイメージがあるが、そんな甘いものではない。麻薬などを密売する大規模な犯罪組織が主導し、密林を切り開いて町を作ってしまうという大胆かつ大がかりな犯行なのである。アマゾンの熱帯雨林だけでも2300カ所以上の違法鉱山が存在しているといわれ、特に金は違法採掘の「花形」となっている。

 金は電子機器に欠かせない資源であるほか宝飾品、金融商品として需要が高い。最近ではコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などによる経済の混乱から、安全資産として金を保有する傾向が国家レベルも含めて強まっており、金の価格は高止まりしている。

 アマゾンの熱帯雨林帯は手つかずのため、金が多く眠っている。犯罪組織にとって違法採掘は今や麻薬の密売よりも安全に、より多額の利益を得られる手段として認識されている。

 熱帯雨林を広範囲で伐採し、周辺を掘り起こすため熱帯雨林が破壊される。金の違法採掘がアマゾンの森林破壊の最大の要因になっている。採掘には水銀など多量の有害物質が使用される。このため採掘後は周辺の汚染が深刻化し、動植物に深刻な影響を及ぼす。

 現場の惨状は宇宙からでも確認できる。国際宇宙ステーションから撮影した写真はペルー東部の熱帯雨林帯が太陽光に反射して不気味に輝く様子をとらえている。

 違法採掘の現場では、現金収入の機会が少ない先住民や貧困層の労働者が劣悪な労働環境で働かせられている。長時間労働や児童就労は当たり前で、水銀を含んだ鉱石を防護マスクなしで扱っている。違法に形成された鉱山は危険で土砂崩れが頻発する。緊急事態が発生しても、当然ながらレスキュー隊が駆け付けることはほとんどない。違法採掘のためにできた町では、犯罪組織のメンバーや労働者を相手にする売春宿が営まれる。成人女性だけでなく少女による売春も横行する。

 昨年8月にペルーのリマ映画祭で初上映され、今年6月に商業ベースでの公開にこぎつけた「La pampa」(英語名:The Invisible Girl)という映画は、ペルーのアマゾンにある違法採掘現場の売春宿から逃げてきた15歳の少女を描いている。実話に基づいた社会派の犯罪スリラー映画だ。社会の目にさらされにくい違法採掘の実態が、徐々に明らかになろうとしている。

 「宇宙人」に連れ去られそうになったイキツ族の少女も15歳。犯罪組織が誘拐して売春を強要しようとした可能性もある。違法採掘された金でも、精製されれば違法採掘によるものかどうかは分からなくなる。金は現物であるからこその資産。金を欲する先進国の市民は違法採掘の実態に対し、責任ある行動を示せるのであろうか。

言問通(フリージャーナリスト)

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆

ことといとおる

最終更新:2023/08/15 19:00
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