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あの『ムショぼけ』がマンガになって帰ってくる…コロナ禍の尼崎からスタートした物語が新章へ

『ムショぼけ』が抱える熱量

 そんな猛暑にこなした仕事の中で、まずは先陣を切って世に放たれるのが、マンガ『ムショぼけ』となる。この作品の原作も書き下ろしで、ドラマや小説とは一味違った味わいになっている。

 繰り返させていただくが、小説2冊に加えて、マンガ原作1本、合計3本の書き下ろし。加えて、もう1本のマンガも原作者としてのチェック等の仕事がある。

 おかげさまで、この夏は4キロ近く痩せた。そして気づいたことがあった。ダイエットしたければ、小説を書け……まあ、確実に身体は悪くするであろうがな。

 もちろん、それぞれの作品には異なる思い入れがある。

 だが、この先、どれだけ書いても、あの感動だけは超えられないだろうな、というのが『ムショぼけ』だった。

 この作品は、小説は発表と同時にドラマ化が決定し、2021年秋に放送された。私の地元である兵庫県尼崎と刑務所を舞台にしたドラマで、撮影時には尼崎にスタッフ、キャストが集結したのだ。

 当時は、コロナが猛威を振るう中で、がむしゃらになんでもやった。自ら、現場での監修でも俳優の送迎でもロケハンでも、とにかくなんでもやった。良かれ悪かれの問題ではなく、あれは私の中での全力だったのだ。

 朝日放送のプロデューサーがオールアップした翌日、「沖田さんに言われて迷っていましたが、本当にやって良かったです!」と泣きそうな声で電話があった。振り返れば、同局が同時期に撮影していたドラマは、現場でクラスターが発生して中止になっていた。そして『ムショぼけ』も衣装合わせ当日に、リスタートの予定がないままに一度は撮影の延期が決まったのだ。

 それを受けて、出演予定だった木下ほうかが台本を捨てたとツイートなんてしたものだから、それがYahoo!ニュースになって、我々をピリつかせたりと、さまざまなことがあった。

 それでもである。同作をプロデュースしてくれた藤井道人監督と二人三脚でさまざまな問題をクリアにしながら、情熱をぶつけきった。それに応えてくれたのが、朝日放送の山崎プロデューサーと南プロデューサーだった。そのほか、多くの人たちの想いが『ムショぼけ』には宿っている。

 『ムショぼけ』に想いを寄せてくれたのは、何も作り手側だけではない。第1話の放送開始前には、地元、尼崎の友人知人からたくさんのLINEが届けられた。みんながこの作品を自慢してくれていた。みんなが喜んでくれていた。

 それだけの熱量をもった『ムショぼけ』だからこそ、そこで終わるつもりはさらさらなかった。今年の春、出版社からマンガの原作の依頼があった際、あらたに書き下ろすので『ムショぼけ』をやらせてほしいと、こちらからお願いしたのだった。

 そして、いよいよマンガ『ムショぼけ』がスタートすることを発表できるとなった今、気がつくと、ドラマ『ムショぼけ』の撮影の際、尼崎で何度となく底力を発揮してくれた制作会社プロデューサーのジョニーと、バンコクに向かっていた。次の映像作品に関連した視察のためである。

 そう、この原稿は機内で書いているのだ。日常の仕事もあるし、ここしか時間がなかったのだ。早く売れて楽にさせてほしいというのが本音なら、苦労するとわかっていながら、新たな作品作りの依頼が来たときに生じる胸の高鳴りもまた本音と言えるだろう。

 そんな中で生まれたマンガ『ムショぼけ』を読んでいただけると、これ幸いであります。

(文=沖田臥竜/作家)

マンガ『ムショぼけ 懲役たちのレクイエム』
10月24日より、秋田書店「ヤンチャンweb」にて配信開始

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/09/20 16:30
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