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『マリグナント 狂暴な悪夢』が「ホラー映画史上もっとも面白い」と断言できる理由

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C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

 世の中にはたくさんの映画があるが、その中でも純粋に「面白い」と思えるエンターテインメントこそがいちばん難しいと、個人的には思う。高尚なメッセージを掲げたり、現実で生きる勇気がもらえるテーマがあったり、ゆったりと浸りたくなる文芸的な映画などももちろん良いが、映画は元々は「見せ物」である娯楽。作り手がそこに全力をささげた映画を、観たくはないだろうか。

 ここで紹介する、2021年11月12日より公開されているホラー映画『マリグナント 狂暴な悪夢』は、面白さという意味では群を抜いている。人によって多少の好みの差はあるだろうし、筆者個人の主観ではあるが(後述する理由により)「ホラー映画史上もっとも面白い」と断言してしまえるほどの内容だったのだ。直接的な残酷描写のために(ただし性描写は皆無)R18+という高いレーティングがされている上、言うまでもなくホラーなので心の底から恐ろしいシーンもあるのだが、そこを乗り越えられる方には是が非にでも観てほしいと願う。

 また、本作は観る前に「ネタバレを踏まないで」ほしい。実は、本作の魅力として突出している要素を具体的に記すと、それがネタバレになってしまうのだ。だからこそうっかり話してしまいやすいし、SNSなどで目にしてしまいやすいとも言えるので、なるべく早く観たほうがいいだろう。もちろん、ここではネタバレ厳禁部分には触れないで作品の特徴を記していこう。予備知識がない、先入観を持たない状態で観たい方は、先に劇場へと駆けつけることをおすすめする。

ありとあらゆるジャンルの面白さ欲張りセット

 本作のあらすじは「目の前で恐ろしい殺人が繰り広げられる様を夢の中で見た女性が、妹や警察の協力を得ながらも真相の解明に挑む」とシンプル。夢で見たことが現実でも……というのは『エルム街の悪夢』(1984)とも共通しているし、協力して襲いくる脅威に立ち向かう過程はホラー映画ではスタンダードだ。

 だが、本作はそのスタンダードな展開そのものがまず面白い。「夢で見た殺人がなぜ現実で起こるのか?」「犯人の目的は?」などのさまざまな謎が提示されており、劇中ではそれを様々な事象や証言から、時には予期するはずもなかった事態から知り、暴いていくことになる。端的に言って「謎解きミステリー」としての魅力もあるのだ。

 しかも、意外というべきかクスッと笑えるコミカルな描写も多い。主人公の妹は天真爛漫かつ姉思いな性格だが、ちょっと抜けているところもあって親しみやすい。しかも警察側のキャラもなんともクセが強くて、ちょっと気だるい印象でありながらも親切で愛おしい。下世話な言い方だが「キャラ萌え」も重視した内容であり、特に「姉妹萌え」が好きな方にはより「ささる」内容と言えるのではないか。

 もちろん、全体の中で一本の大きな芯としてあるのはホラー。短絡的な「ワッ」と大きな声や音だけで驚かせる演出は控えめで、工夫を凝らしたカメラワークや、扉の開閉などのちょっとした画面の中で変化で「何がいる」と思わせるテクニックを駆使し、時には予想できるはずもない展開で驚きを与えてくれる。襲い来る恐怖の対象は序盤こそ未知なる存在で翻弄されるばかりだが、その正体に迫るほどにまた新たな恐怖の理由も生まれてくる。スタンダードなホラーの要素を備えながらも、「新次元の恐怖」と言う触れ込みも伊達ではない。

 さらに、本作には他にも「とあるジャンル」がある。これこそネタバレ厳禁なのだが、実は本作のオープニングで「こういう映画ですよ」と親切にも示していたりもする。ここで観客は「ああ!そっち方向の映画だったのか!」と思い、実際にそっち方向の展開も予想するだろうが、その予想の斜め上を突き抜けるものも観られるのである。その突き抜けた瞬間に、思ったのだ。「この世の全てのホラー映画の中でいちばん面白い!」と。

 まとめると、本作はミステリーであり、コメディであり、もちろん中心になるのはホラーでありつつ、さらなる「何か」のジャンルがサプライズで忍ばされている、ありとあらゆるジャンルの面白さ欲張りセットなのである。ジェームズ・ワン監督は本作について、ジャンルを混ぜるという意味での「ジャンル・ブレンダー」、正しくはジャンルを超越するという意味の「ジャンル・ベンダー」であるとも語っており、そのような「飛躍」のある面白さと楽しさを堪能してほしい。

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